FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/27 SAT

キセル

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Photo by MITCH IKEDA Text by 三浦孝文

Posted on 2019.7.28 00:37

雨の中で心地よく跳ねる音

フジロック2日目。曇天だが湿度が高く蒸し暑い。フィールド・オブ・ヘブン、蓮沼執太フィルから2番手のバトンを受け取るのは、辻村豪文(Vo/Guitar)と辻村友晴(Vo/Bass)の兄弟ユニット、キセルだ。デビューして2年目の頃から出演しているヘブンということもあってか、開演時刻ぎりぎりまでバンドとともに入念にリハをやる二人の顔に気負いの色はなく、とてもリラックスしているのが見て取れる。

柔らかな拍手で迎えられる中、兄弟二人が登場して、リズムマシーンのビートをバックに豪文が暖かみをもって浮遊する“くちなしの丘”のギターフレーズを奏でると、その瞬間に風がすうっと吹き抜けた。二人が奏でるベースとギター、兄弟ならではの絶妙なハーモニーで会場を感動で包んでいく。体力勝負のフジロックにおける、束の間の癒しタイムに会場で身体を揺らす聴衆がうっとりとした顔を浮かべていた。

今年で結成して20周年を迎えた彼ら。豪文からの感謝の挨拶に呼応して、ヘブン一帯がお祝いムードに満ちた温かい空気であふれ返るかのようだった。続く“夜の名前”で、ドラムの北山ゆう子、フルートの加藤雄一郎、そしてグッドラックヘイワのキーボーディスト、野村卓史とが加わる。バンド編成になったことで、グッと音圧が増し、フルートが軽快に流れる“夜の名前”でステージ前方のオーディエンスをホップさせる。腹にドシドシと突っ込んでくる友晴のベースが何とも心地よい。雨がパラパラと降ってきて、ゆったりとしたテンポの“ナツヤスミ”に、雨が身体にの上を心地良く跳ねる。キーボードが醸し出す残響音と、うだるようなフルートの音色。永遠に続くかのような「ナツヤスミ」コールに、キセルと共有する今、この瞬間こそが最高の夏休みだと感じてしまう。

雨足が強まってくるのを見て、「風邪などひかないように養生してください」とオーディエンスを気遣う豪文。キセルの音楽が「大切な何かを思い出させてくれる」と言われていることが腑に落ちた気がした。彼らの表現は、何も無理強いしない。「そのまんまでいいよ」とこの場に集まった我々を抱きしめてくれるかのようなライヴだった。

[写真:全10枚]

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7/27 SATFIELD OF HEAVEN