LIVE REPORTGYPSY AVALON7/26 FRI
チャラン・ポ・ランタン
野に放たれた無尽蔵の圧とエネルギー
フジロック2019の初日も早いもので、夕方6時半を回り辺りが暗くなってきた。雨足が強まってきたが、みんなしっかりと雨具に身を包み、文句ひとつ言わず、ただ雨に身を委ねてはしゃいでいる。これくらいの雨などものともしない。フジロックが培ってきた<フェスティバル>という文化。「自然と音楽の共生」というテーマを来場するみんなが共有していることをあらためて目の当たりにした。
さて、ここはジプシーアヴァロン。これからここに登場するのは、もも(唄)と小春(アコーディオン)によるオルタナティヴ・シャンソン姉妹ユニットのチャラン・ポ・ランタンだ。今月17日に結成10周年を迎えたばかりの彼女たち。少し早めに会場に到着したのだが、すでにステージ前一体はファンがしっかりと陣取っている。ステージを待つオーディエンスの中には子供の姿もちらほらと。小春がアコーディオンを手に、バンドメンバーと音合わせをしている。リハにもかかわらず、ビートに合わせて本番さながらにノリノリのオーディエンスが散見される。「音合わせ完了!後20分くらいあるけど、どこにもいかないんですか?すみませんが、そのままキープで!」と小春が挨拶し、ステージの奥に消えていった。
開演時間になると、ステージ横で姉妹とバンドが円陣を組んで、気合入れの掛け声を上げている。シン・ゴジラのサントラ“宇宙大戦争/「宇宙大戦争」/ヤシオリ作戦”が高らかに鳴り響きと、最新作『ドロン・ド・ロンド』の豪華絢爛な衣装に身を包んだ、ももと小春が登場し、探検隊のような出で立ちのカンカンバルカン楽団の面々を、バイオリンの舞子(磯部舞子)、サックスのオカピ、ドラムスのふーちんの順でステージに呼び込んでいく。ももが、ハイテンションにアジテートすると、それに呼応して沸点を振り切ったかのような演奏を繰り広げる4人の楽隊。のっけからやんや、やんやの喝采が沸き、その熱に誘われるかのようにステージの周りにどんどん人が集まってきた。
グリーグの『ペール・ギュント』の「山の魔王の宮殿にて」の不穏なフレーズが跳ねまくる“メビウスの行き止まり”や、大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングテーマだった人気曲“進め、たまに逃げても”を繰り出し、尽きることのないアゲアゲのグルーヴと、フロントの4名がステージ上を縦横無尽に動き回って飛び跳ねまくる、前のめりなパフォーマンスに、身体が動きだしてしまうのをまったく止めることができない。
予想していた以上に集まったオーディエンスにご満悦な二人。「何でこんなに人がいるの?3万人はいるよ!」と冗談を飛ばしつつも、感謝の気持ちがあふれ出ている小春。「3万人のあんたら、最高だよ!」と“最高”を届ける。唄のパートが終わった後、ももは縦笛を吹き鳴らし、バンド全員がこれでもかと楽器を弾き倒して「久々のフジロック、最高だったぜ!ありがとうフジロック!」と歓喜のステージを締めくくった。
ステージから終始放出された圧とエネルギーがものすごかった。今宵集まった音楽を心から愛するオーディエンスに囲まれて、野に放たれた感じだ。最後に二人が何度も「最高!」と叫んでいたことからも、終演後も拍手が鳴りやまなかったことからも、今夜のライヴは一期一会なまさしく「最高」のライヴだったと言えるだろう。この場に立ち会えたことに感謝だ。
[写真:全10枚]