FUJIROCK EXPRESS '19

LIVE REPORTGYPSY AVALON7/27 SAT

長澤知之

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Photo by おみそ Text by 阿部仁知

Posted on 2019.7.28 04:59

完璧な人なんていないのだから

雨が降り出した午後のジプシーアヴァロンでは、まばらに座る人々が次の演者の登場を待つ。もっと降るのかな、やんでほしいなと少し不安に思いながらも、彼が現れるのを持ち望んでいる。フジロック初出演のシンガーソングライター、長澤知之の登場だ。

まず最新作から表題曲の“ソウルセラー”と“金木犀”を披露。サポートキーボードの山本健太がさりげなく彩りを添えるシンプルで力強い弾き語りに、耳をすませる人々は座りながらもうんうんと頷いている。続く“ボトラー”ではスペーシーなSEと高速で爪弾くアコギに乗せて、長澤と山本は掛け合うように歌う。なんとも息のあったコンビネーションだ。

そして、“マンドラゴラの花”。アコギは繊細と大胆の間を縦横無尽に行き来し、キーボードにはエレクトリックな響きが混ざり合う。まるで2人とは思えない展開力だ。
“夢先案内人”では、加速するリズムにタクシーの運転手さんをモチーフとしたストーリーが重なっていく。

そんな彼の詩情が込められた“蜘蛛の糸”。「しっかり立ててしまう浅瀬ん中、泳げないことにムカついてる」という歌詞に、僕は涙が止まらなくなってしまった。痛々しいほどに率直な彼の言葉には、それぞれの日常と重なるフックが節々に潜んでいて、こんな風に不意に打ち抜かれて、思わずハッとしてしまうのだ。僕と同じ部分にグッときたのかはわからないが、ほろほろと感極まる人もちらちら見受けられる。

計ったかのように“べテルギウス”で「泣かないで」というフレーズが出てきて、なんだか見透かされたような気持ちになったが、思い思いに感情を投影しながら、ここに集う人々は情感溢れる彼の歌声に聴き入っている。なんて素敵な時間だろうか。

そして、ぐちゃぐちゃなストロークで声を枯らしながら歌う“パーフェクトワールド”。完全なんて訪れないと歌うこの曲は、不器用ながらも全身全霊で歌う彼だからこその説得力がある。“左巻きのゼンマイ”では求めたわけでもなく手拍子が沸き起こり、集った人々とともに愛を歌う長澤知之。雨に降られ続けた時間だったが、確かな元気を受け取り、僕らは立ち上がった。

[写真:全6枚]

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