LIVE REPORTPYRAMID GARDEN7/28 SUN
YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ×オオルタイチ)
苗場×屋久島、大自然のコラボレーション
前日から降り続いた雨もようやく上がり、しっとりした空気の漂うピラミッドガーデン。大きな麦わら帽子を被りながら現れたコムアイは、「朝起きてくれてありがとう」と集まった人々を労うように声をかける。YAKUSHIMA TREASUREの登場だ。
数々のコラボレーションをしてきた水曜日のカンパネラが次に選んだ相手はなんと屋久島。YAKUSHIMA TREASUREは、コムアイと電子音楽家のオオルタイチが屋久島の自然の中で、あの手この手で様々な音を採集し、それを元に楽曲に再構築するプロジェクトだ。前日のデイドリーミングでのERUSAERT AMIHSKAYと併せて、今回のフジロックが初めてのライブセットという彼ら。いったいどんなことが起こるんだろうというソワソワした空気の中、マニピュレーション担当のオオルタイチから屋久島の音が飛び出してくる。
風がせせらぎ、波は揺れ、水滴がリズムを刻む中、遠く彼方を見つめながら息を吐くように歌うコムアイ。彼女が見ているのは苗場の木々たちだ。オオルのコントロールするビートが加速するにつれ、まるで大地全体が躍動しているかのような感覚を肌に感じる。装飾も照明もないシンプルなステージセットだが、後ろに広がる広大な自然や、呼応するように照り出した太陽がそれといってもいいだろう。トンボを手に停め戯れるように揺れるお客さんがいたのが印象的だった。
テクノやエレクトロのような音楽を奏でるオオルタイチだが、その響きはどこまでもオーガニック。コムアイも自然の力が憑依したかのように全身で躍動を表現する。屋久島の言葉だろうか、民謡のような歌が特徴的な“屋久の日月節”では、どことなくゆったりとした異国情緒が漂う。と思えば大地の怒りをあらわしたような重いビートが身体を打ったり、生き物の鼓動のようなリズムにゆらゆら揺れたり、屋久島の自然はどこまでも雄大に僕らを包み込む。
後半になるにつれエレクトリックな感触を増してくるオオルタイチのサウンド。最後は水曜日のカンパネラに彼が提供した“愛しいものたちへ”。この空間を共有するすべてのものへの大らかな愛に溢れたコムアイの歌唱に、ピラミッドガーデン全体がしみじみと聞き入っていた。ここ苗場の地で始めてのライブセットを披露した意義は大きいだろう。新たな自然の力を取り込み邁進する彼ら。来月のLIQUIDROOMでのワンマンもまた違う景色が見られそうだ。
[写真:全10枚]