MOREFUNAREA REPORT8/21 SAT
私が見たフジロック(Day 2)from スタッフI
迷うアーティスト、迷わないアーティスト
フジロック2日目が終わった。いつものフジロックなら「こんな楽しい時間があと1日で終わるのか……」と寂しい気持ちに襲われて時間を止めたくなる。だけど、今年はそんな気持ちになれない。とりあえず2日目が終わってホッとしている感じである。
素晴らしいライヴもたくさんあった。感動して涙も流した。旨い飯も食った。明日も楽しみなアーティストはいる。まだ自分の気持ちに整理をつけることができない。
この日観たのは、KEMURI、ムジカ・ピッコリーノ、AJICO、サニーデイ・サービス、The Birthday(後半)、ROVO、THE SPELLBOUND(後半)だった。
KEMURIのふみおの涙にもらい泣きし、ムジカ・ピッコリーノでは藤原さくらの可愛さに悶絶し、AJICOではUAの存在感に圧倒され、サニーデイ・サービスは前日のくるりを思わせるような異様なテンションに惹き込まれ、ROVOはいつものように最高だった。途中、激しい雨が降り一旦宿に戻ったりもして、観たいバンドを断念したけど、観たライヴはどれも素晴らしかった。
しかし、昨日から考えていることはDYGLのことである。過去の盛り上がる曲を封印し、新曲でのセットリストにした。他のアーティストがひとつの答えをだして(例えば、RADWIMPSの野田やROVOの勝井のように「今回は成功させて次回に繋げよう」とか)、それを上手く消化してメッセージにするのではなく、自分の迷いをそのまま言葉にした。悩んでる、迷ってるというアーティストはいるけど、ほとんどの場合、ステージに立つ頃にはすでに答えがでている。KEMURIのふみおは「前日のリハーサルで、メンバーにフジロックに出ることへの賛否を訊いたら半々だった……でも、"P.M.A"をやった後でみんなに訊いたら『やってよかった』って」。"P.M.A"の直後の MCなので、そんなメンバー全員に訊いて回ってたっけ? と思うけど、つまりはその MCの時点で答えがでているのである。もちろんどっちがよいとか悪いという話ではない。
KEMURIもサニーデイも古くからのファンが喜ぶようなセットリストにした。AJICOもTHE SPELLBOUNDもメンバーが過去に在籍していたバンドの曲をやってファンを喜ばせた。そこで際立つのがDYGLなのだ。もちろん、キャリアからすれば、今挙げたバンドよりも短いし、まだ駆け出しともいえる。その中でも定番曲があり、盛り上がることが半ば約束されている曲を封印したのは、まだ成長途上のバンド故の試行錯誤なのか、コロナ禍に対する最も誠実な回答なのか。その答えがでるのはまだ先なのかもしれない。先であって欲しい。
ROVOがガラガラだった問題
ROVOのフィールド・オブ・ヘヴン(以下ヘヴン)がガラガラだった。グリーンステージで大物洋楽アーティストがやっていても、かなり埋まるようにフジロックのROVOは鉄板なはずなのに、なぜ今回はガラガラだったのだろうか。ステージ前は容易に最前までいけるし、後ろの通路あたりには人がいなかった。椅子を置いてもよいゾーンもソーシャルディスタンスを確保できるくらい。実感ではグリーンでレディオヘッドがやっているときのヘヴンのレイ・ディヴィスのようだった。
もちろん、集客と音楽の質は必ずしもイコールではないからガラガラだったのが悪いということではないし、ROVOを観ない人が悪いという話でもない。自分だって被りがなければTHE ALEXXや King Gnuやナンバーガールを観ていたのだ。このガラガラは今年のフジロックのことを象徴していることだと思うので、いろいろと考えてしまうのだ。
その理由のひとつは、普段ROVOを観る人がフジロックに来なかったということがある。いわゆる「ヘヴン(奥地)の住人」みたいな人がいなかったと感じるのだ。グリーンやホワイトのアーティストに目もくれずに、居心地のよいヘヴンで酒を飲みマッタリと過ごす人があまりいなかった。今回は酒が飲めないというのも大きかったかもしれない。そして、やはり人気のKing Gnuや復活して話題のナンバーガールが強力過ぎて邦楽ロックファンにアピールできなかったということもあろう。あとはハード面になるけど、ROVOが始まった時点でヘヴンより先のステージは終わっていたし、オレンジカフェの飲食店も22時には終わっていた。つまり、ヘヴンが終点になってしまい往来がなくなってしまったのだ。そして、ヘヴンにはさくらぐみのピザなど名物フェスごはんがあったけど、今年はヘヴンに飲食店がなかったことも大きいのではないか。ヘヴンに飯を食べにくるということがなくなってしまった。いろんな要因が重なってしまったけど、ライヴはいつものように最高だった。やっぱり「ROVOにとってヘヴンはホーム」を実感させるものだった。もちろんまたヘヴンに帰ってきてほしい。
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