FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTGREEN STAGE8/21 SAT

サンボマスター

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Photo by suguta Text by 阿部仁知

Posted on 2021.8.22 10:27

心のなかで叫んだ愛と平和。グリーンステージもYouTubeで観てるみんなも全員優勝だ!

サンボマスターが4年振りのグリーンステージに登場!昨年夏の配信『KEEP ON FUJI ROCKIN’ 』の画面を飛び越してくるような熱情に当てられた時から、この日を心待ちにしていたフジロッカーも多かったに違いない。彼らはその大きな期待をさらに越えてくる熱いパフォーマンスを見せてくれた。

初っ端から「ミラクル起こすって心に決めろ!ルール守ってかかってこい!」と叫ぶ“ミラクルをキミとおこしたいんです”では、「優勝しにきたんだ!サンボマスターは観にきたおめえら全員に金メダルかけにきたんだ!」と僕らを力の限り鼓舞していく。そう、ミラクルってのはたまたま起こるものじゃなくて自分の手で起こすものなんだ。

そして「このコロナ禍でもおめえらクソだったことなんて一回もないんだよ!そのことを忘れないで!」と“忘れないで 忘れないで”を叩き込む山口隆(唄とギター)の語りは、歌ごとそのまま僕らの心にダイレクトに響いていく。そんな彼の「唄」を全身に浴びながら僕は中央の少し小高いあたりで観ていたが、モニターどころか肉眼で遠くに見える姿を眺めていても、至近距離で語りかけるような言葉にグリーンステージは鷲掴みだ!

最高潮のまま「踊りまくっていただきましょうか!」と“青春狂騒曲”になだれ込んでいく。骨太なビートで下支えする近藤洋一(ベースとコーラス)と木内泰史(ドラムスとコーラス)、そして恍惚のギターソロを炸裂する山口のスリーピースが醸し出す、これしかないってバンドサウンド。グリーンステージを見渡しても身体で喜びを表現する前方の人々から、後方で椅子に座りながら手を振る人まで、周りに気を遣いながらもみんなが今しかないこの青春を謳歌している。

「全員優勝!全員優勝!」と叫ぶ山口。トラックのビートに乗せてラップを刻んでいく“その景色を”に、「差別と暴力と分断にラブアンドピースで対抗するんだ!」と想いを乗せる“世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”と、どんどん熱くなっていくグリーンステージ。もちろんここに集った僕らは声を出してはいけない。でも誰もが心の中で「愛と平和」を叫んでいたことは、ここにいたみんなが感じたはずだ。

人々の手が波のように揺れる“孤独とランデブー”。なんて美しい光景だろうか。ひとりひとりの魂はそれぞれ独立していても、僕らはこんな風に喜びを分かち合えるんだ。「YouTubeで観てる君も!」と、本当はここに集いたかった日本中のフジロッカーに向けて投げかける山口。サンボマスターの気持ちが画面越しのみんなにも伝わってることは、ここに居る僕らにもありありとわかる圧巻の熱量だ。

10年前の東日本大震災や昨今のコロナ禍で傷つき亡くなった人々に想いを馳せる山口。初日の猪苗代湖ズでもステージに立った彼は、故郷の方言でぽつぽつと語る。その表情には割り切れるわけのない悲しみが宿るが、それでも今ここにいる人に生きててくれてありがとうと伝える“ラブソング”。エレキギターのしんみりとした弾き語りからベース、ドラムと厚みを増していき、声を枯らしながら叫ぶ山口の歌声が苗場の森にこだましている。

“輝きだして走っていく”で突然の大雨に降られるグリーンステージ。まったく読めない山の天気はこれぞフジロックというところだが、ちょうど山口が歌っていた「負けないで キミの心 輝いていて」は、さらなる試練の中今日と明日を過ごしていくフジロッカーへのエールのように感じたものだ。そして、“できっこないを やらなくちゃ”で山口が力の限り歌う勇気と覚悟に呼応するように、突き上げる一人一人の拳。青臭いだろうか。現実はそう甘くないだろうか。それはそうかもしれない。でも周りを気遣いながらも自らの意思で立ち上がるフジロッカーたちが創り上げる光景に僕が感涙してしまったことは、誇張でもエクスキューズでもない紛れもない本心だ。

最後の“花束”では近藤が苗場食堂やSUMMER SONIC、ROCK IN JAPAN FESTIVALの会場へと移動する「LIVE配信」を織り交ぜながら、数々のフェスに想いを馳せ、唄の花束を捧げるサンボマスター(LIVEじゃないだろなんて言うのは野暮ってもんだ)。キャンプサイトのテントの中からはMAN WITH A MISSIONのKamikaze Boyが顔を出し力強い応援が加わる中、ステージに戻って3人が掲げたのは京都大作戦、ARABAKI ROCK FEST.、RISING SUN ROCK FESTIVALのタオル。この時SUPERSONICのTシャツを着ていた僕は来月の無事を祈ったものだが、今年失われてしまったフェスの数々に集うはずだったミュージシャンや音楽関係者、そしてフェスを愛する人々への力強いメッセージがグリーンステージを通して全国に流れていた。

最後の最後まで誰一人置き去りにしない魂のロックンロールで一人一人の心を勇気で満たしたサンボマスター。グリーンステージを後にする僕も、より一層気をつけながらフジロックをたくましく過ごしていこうと決意を新たにしたものだ。僕らなら絶対にできる。そう強く信じながら。

[写真:全10枚]

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8/21 SATGREEN STAGE