LIVE REPORTGREEN STAGE8/22 SUN
cero
Photo by fujirockers.org Text by 梶原綾乃
Posted on 2021.8.24 01:14
迷いと模索の中で
「お待たせしましたceroです、よろしくお願いいたします」。“My Lost City”のあの愉快なイントロが始まる。重量感あるドラミングから、歌声がすっと立ち上がって、ウインドチャイムがきらめき出し、cero初のグリーンステージが幕を開けた。
2018年夜のホワイトステージで観た、エネルギッシュで生命力に満ちた彼らのプレイは、今でもよく覚えている。『Obscure Ride』からの大きな流れの、あのドライヴ感を味わいにここに来た人も多いはずだ。けど今日のceroは、ちょっぴり空気が違った。『POLY LIFE MULTI SOUL』からまた一段と違った高みに到達している。陰か陽かといえば陰のほう。今のメンバーと築き上げてきたアンサンブル感を守りながら、あくまでも冷静に提示していくようなプレイだった。サウンドチェックがギリギリまで行われていたのもまた、その緊張感を示す証拠かもしれない。
カウベルの乾いた音が見え隠れする“Buzzle Bee Ride”では、シンプルなようで多構造なビートから、音のレイヤを重ねてエキゾチックな世界観を作り上げていった。ジャズ色の強いアレンジが際立つ“魚の骨 鳥の羽根”では、スキップするリズムとコーラスの波を、もがくような動きをしながら乗りこなす高城の姿が印象的だった。
そしてなによりも驚いたのは、“Contemporary Tokyo Cruise”から“Narcolepsy Driver”に移り、そのまま披露された朗読だった。この日、時間の都合でMCはカットしていったのだが、この朗読にすべてをかけていたのかもしれない。高城は街と書かれたノートを開き、言葉を紡ぎ始めた。それは8月22日の情景を描写したものだったが、どこか手探りの語りかけで、この世の中への答えが出せていない彼なりの気持ちの表明だったようにも思う。もしかしたら、本当に直前の直前まで、出演を迷っていたのかもしれない。あくまでも私の感想なのだが、ふとそう思った。
このぼやけた感情の行き先を探していたところ、終盤のMCで少しだけ気持ちを話してくれた。「色々いいたいことはあったけれど、これからも健やかに生きていきましょう」。そこからは、閉じていた心が開いていくようなナンバーが続いた。“さん!”と“Fdf”での、あふれんばかりの高城の笑顔は、何か答えを見つけ出したあとかのようだった。
もちろん、“Yellow Magus”とか、今日もやった“Summer Soul“など、フロウの気持ちよさを得られるエンタメ全振りなceroも大好き。けれども、あらゆる舵をとりながら、次に停泊する島を見極めているような、実験的なceroもまた、愛しいなと思った。この荒波を抜けたらまた、どんな彼らに会えるのだろうか。