LIVE REPORTWHITE STAGE8/20 FRI
METAFIVE(砂原良徳×LEO今井)
一期一会、今夜限りのまたとないステージ
フジロック2021初日も早くも19時をまわった。とっぷり日が暮れたここはホワイト・ステージ。5lackとKID FRESINOというヒップホップアクトの2組に続いて、満を持して登場するのはMETAFIVEだ。諸事情により高橋幸宏、小山田圭吾、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコが出演せず、メンバーはまりんこと砂原良徳(以下まりん)とLEO今井(以下レオ)のみ。相対性理論のギタリストの永井聖一と、GREAT3のドラマーにして、高橋幸宏とLEO今井とも縁が深い白根賢一をサポートメンバーに迎えての特別編成でのライヴだ。この状況の中での、またとない編成でのMETAがどんな色を描くのか楽しみでならない。
オーディエンスもこのコロナ禍の影響で半減しているとは言え、待ちわびた人たちがステージ前方に集合している。本来であれば、新譜『METAATEM』もリリースされ、本格的な再始動の場となるはずであったステージだ。本当に色々なことが起きる。そこで止まることなく、METAFIVEの世界を表現を共有するべくここに立ってくれた二人には感謝しかない。
ステージが暗転すると割れんばかりの拍手が巻き起こる。続くタメの静寂のひととき…はじまる…。吹き荒ぶ吹雪のような音の中央に強引に導入されるぶっといビート。バックの画面に「META」の文字が縦横無人に踊りはじめると、レオとまりんが暗闇の中、寡黙に登場した。新譜に収録されていた”Full Metallisch”という楽曲だ。ダークで鋭利な刃物の冷たさを感じさせる音質と照明。ナイン・インチ・ネイルズの首謀者、トレント・レズナーも腰を抜かす世界観だ。レオが声を張り上げたドンピシャのタイミングでインしてくる永井と白根を含んだバンドアンサンブルの見事さには身震いものだ。のっけからめちゃくちゃかっこいい。
続くは、新譜に先立ちリリースされた”The Paramedics”だ。レオ印満載の曲。METAの楽曲らしくとても踊れる曲に仕上がっているが、根底にヘヴィ・メタルやハードコアへの愛が感じられる。生は、ライヴはやはり絶品だ。レオはカウベルをこれでもかと叩きつけたり、シーケンサーを豪快にかき鳴らしたりと大はしゃぎだ。まりんが淡々と、エネルギー高めの音を出力して跳ねるグルーヴを彩っていく。
今夜のサポートメンバーの一人、永井のギターの巧みさにはやられてしまった。”Musical Chair”での流れるようなギターソロ、軽快に疾走する”Gravetrippin'”のラストでのアーミング奏法でのキメキメの締めくくりなど、楽曲の持つ質感にピッタリと寄り添い、的確な音を繰り出すギタリストだ。
今夜のステージの屋台骨たるビートを支えた白根もすごい。身体が自然とダンスしてしまう今夜のグルーヴ、レオがいつも以上のはしゃぎっぷりで魅せる歌は彼のドラムに依るところが大きい。朋友であるGreat3のリーダー、片寄明人がインタビューで「エモーショナルなのに演奏もしやすくて、歌いやすいっていうのが白根賢一のドラム」と絶賛したが、まさしくその通りだ。複雑怪奇なリズムに突飛な音が飛び交う”Don’t Move”。永井と白根の確かなミュージシャンシップに裏打ちされた音像の上を飛び跳ねる、まりんとレオの自由極まりないパフォーマンス。本当にまたとないライヴをたった今、目撃している。
ラストは、小山田圭吾節が効いたアンニュイな”環境と心理”。「ありがとうございました!緊急事態中のメタファイブでした!」とレオが挨拶して、あっさりと完了。
人生、毎日が一期一会。これから世界で何が起き、その時自分は何を選択して何を成していくのか。今夜限りのまたとないライヴを観終えた後、そんなことが頭に浮かんだのだ。
[写真:全10枚]