FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTWHITE STAGE8/20 FRI

5lack

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Photo by 森リョータ Text by 阿部仁知

Posted on 2021.8.21 01:30

ゆとりのあるスペースとメロウなサウンドに思い思いに揺れるホワイトステージ

クラブサウンドに乗せて自由に揺れるソーシャルディスタンス、そして拍手と手振りだけでしっかり成り立つコールアンドレスポンス。2018年の深夜のレッドマーキー以来の出演となった5lackのパフォーマンスは、このご時世でもダンスフロアは輝きを失わないことを示してくれた。そしてそれを実現したのは集った僕らの音楽を愛する気持ちと、彼のステージへの矜持に他ならないだろう。

ラップトップPCとDJセットに、突起がたくさんついたマイクスタンドのみの無骨なステージセット。最初に現れたのはなんとPUNPEEではないか。実兄にしてこの後SUMMITのステージも控える彼のビートメイクと、吹き荒れるスモーク。その中から5lackが登場し、初っ端からボルテージは最高潮だ。

「調子どう?」と投げかけたのも束の間、矢継ぎ早に繰り出したのは“DNS”。身体にズシンとくるビートは久々に味わうホワイトステージの音響を感じさせるが、トラップ調のチルいトラックは脱力感があって、僕らの身体も軽やかに揺れる。そして、“近未来200X”では早速GAPPERが登場しはやくもPSGの面々が揃うものの、歌い終わった彼はあっさりとステージを後に。変に演出せず淡々とやるのも彼らの流儀なのだろう。

アコギのトラックが映える“Nove”に続いて、NTTドコモの「2020年東京オリンピック・キャンペーンCM “Style ’20”」提供曲の“東京”。5lackのラップにはこの数ヶ月東京で起こっていたことへの含みを感じたが、声を挙げずとも手を振り上げることで彼に応えるオーディエンスからは、ヒップホップへの愛と苗場への思いが感じられる。

“That’s me”では、音楽への矜持をリリックに乗せてホワイトステージに刻んでいく5lack。スクラッチも冴え渡るPUNPEEの言葉を借りるなら、まさに「それがチミって感じ」というところだろう。MCの「明日死ぬかもしれない、それが人生」という言葉は今の状況を思うとあまりにも重過ぎるが、平時だとしても何が起こるかわからないのが人生。続く“Feeling”29”にはラップで生きてきた彼の生き様がこもっていた。

声を出してはいけない僕らのために歓声をサンプリングしてきたというPUNPEE。試してみて「やっぱ(実際の声と比べて)しょぼいな」とはなっていたものの、この状況だから用意してきた遊び心が光る。昔からのヘッズに向けた“Hot Cake”では、思わず癖で「Singin’!」と言って吹き出したり後で訂正したりと、茶目っ気たっぷりな姿が印象的だ。

そしてリリックの「俺の良いとことお前の良いとこを足して2で割りゃ最高だと思うよ」になぞらえて(まさにこの2人の関係みたいだ)、キラーチューン“Wonder Wall”ではPUNPEEもフロントに!こんなの僕らも身振り手振りで応えたくなるじゃないか。MCでの掛け合いはなんだかたどたどしくて微笑ましくもなったが、やはり音楽のコンビネーションは抜群だ。

そして再びGAPPERの登場で、“Problem Shutdown”と“Fujiyama”をドロップ!MCでもやたら謙遜したりと実直な印象の5lackのフロウと比べて、GAPPERのたくましいラップもまた違うフィーリングを持ち込み、気持ちのいい風を感じながら揺られるホワイトステージ。終盤にはメロウに奏でる“Syler”に軽快なビートに心も弾む“Weeken”、そしてピアノソロの“緩む”では、「自分で自分のことを決めて後悔のないように」と語る5lack。これこそがヒップホップの、そしてフジロックに流れる精神なのだと僕は感じていた。

最後は“五つノ綴り”が醸し出す甘美な倦怠感に揺られながら、スモークとともに去っていった5lack。PUNPEEはいつの間にかステージを後にしていたが、彼が何気なく言っていた「適当に揺れていこう」は今年のフジロックを過ごす指針のように僕の心に残っている。

[写真:全10枚]

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8/20 FRIWHITE STAGE