FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTWHITE STAGE8/21 SAT

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Photo by 古川喜隆 Text by 石角友香

Posted on 2021.8.21 17:49

急に冷え込んだ空気とシンクロした世界観

つい先程まで太陽を避けていたというのに、15時半ごろからいきなり雲行きが怪しくなり、グリーンからホワイトへの道は突然のどしゃ降りを避ける人たちが木々の下に隠れている。それでも「ええい、ままよ!」とホワイトのenvyに向かうと、奇跡なのかなんなのか開演時間の頃にはほぼ雨がやんだ。見上げると雲がすごいスピードで動いていた。

フジロックには10年ぶりの出演となったenvy。前回はMOGWAI終わりでレッドマーキーに走った人もいたかもしれない。豪雨をものともしないオーディエンスを迎えたのは心にしみる言葉。それらが背景に映し出される。勘違いも甚だしいのだが、妙にすっきりした気持ちで清冽な言葉を噛みしめる。そこに黒づくめの男たちがまず5人。Manabu Nakagawa(Ba)、Nobukata Kawai(Gu)、y0shi(Gu)、Yoshimitsu Taki(Gu)、Hiroki Watanabe(Dr)が楽器を持ち、そこにTestuya Fukagawa(Vo/Key)が走り込んできて、手を合わせお辞儀する。“Footsteps in the Distance”がスターターだ。トリプルギターのオーケストレーションはまるで生きるための凱歌のように響き渡る。すさまじい音量のシューゲイズサウンドなのだがどこまでも澄んでいる。ショーの半ばで気づいたが、透明な轟音はノンアルでも飛べる。まして雨で冷えた身体は動かしていないといつまでも湿っぽい。

それにしても総勢6人の男たちが解き放たれた獣のように演奏する様は、どこか神輿のない祭りのようでもある。いや、神輿は自らが鳴らしている音そのものなのかもしれない。海外ツアー経験も多いenvyだが、こうしたプリミティヴな反応を引き起こす重奏は言葉を超えている。そのうえでFukagawaの瑞々しいリリシズムを理解できると、なおenvyの世界を知ることができるのだ。実際、彼の言葉がこの暴れまくる重奏の羅針盤になっているように見えた。特にFukagawaがフロアタムを叩いて、メンバーもステージの中央に集まってくる場面などはまさに祭りだ。トリプルギターにベース、ドラム、時々シンセも加わるというのに、印象は原初の祭り。

後半には昨年リリースの新作『The Fallen Crimson』収録の“Rhythm”をコラボレーションしたアチコを迎えてのパフォーマンスも。歌というより、彼女も身体の中から出る音という印象の強く澄んだ声を披露。女性ボーカルとポストロックやシューゲイズサウンドの相性の良さはこれまでもtoeなどで数多く体験してきたが、この二組の組み合わせも言葉の意味を凌駕するエネルギーにただただ浸されていた。心地よい。

ステージ上は汗だくの熱演なのだが、出る音は荒涼とした寒い土地の風のよう。ラストの“Farewell to Words”が、雨でグッと冷えたホワイトステージの空気とリンクして、真夏に稀有な経験をすることができた。何度も書いてしまうが、男6人が暴れまわるステージも出音が最高であることが視覚のインパクトとともに、彼らが何をそこに出現させようとしているのかが明確に伝わることになったのだと思う。集中力の高い、名演だった。

[写真:全3枚]

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8/21 SATWHITE STAGE