FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTWHITE STAGE8/21 SAT

カネコアヤノ

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Photo by 古川喜隆 Text by あたそ

Posted on 2021.8.21 16:37

力強く伸びていくカネコの声に打ちのめされた!しばらくは余韻に浸っていたい

会場のBGMが止み、正午ぴったりのWHITE STAGEにメンバーとともにカネコアヤノが颯爽とステージの中央に歩いていく。

まずは、“抱擁”。晴れた苗場の空気に相応しく、ゆったりと演奏が始まる。優しくロマンチックなメロディーにカネコの力強い歌声が、まっすぐどこまでも伸びていく。ああ、この声を聴くために、ここまで来た価値はあったよな。彼女の歌声は、実際に目の前で聴き、その姿に圧倒されることに大きな意味があるのだと思う。小さな体のどこにそんな大きなパワーを持ち合わせているのだろう。カネコの声が、会場の遠くにまで伸び、観客それぞれの胸に飛び込んでくるようだった。

フジロックでの彼女の姿といえば、18年の木道亭でのライブの様子が懐かしく思い出される。木々に囲まれたステージの中でかき鳴らされるアコースティックギターの音、芯のある歌声。小さなステージには大勢の人が集まり、この日のちょっとした話題になったのも記憶に新しい。それから、大晦日に行われたKEEP ON FUJIROCKIN‘Ⅱも忘れてはならない。配信ライブのみになってしまったのは残念ではあったが、コメント欄を見ていると、彼女のパンキッシュないで立ちに魅了された人が多くいたように思う。
カネコアヤノの魅力ってなんだろう?そんなものたくさんあるのだが、やっぱりライブでの勇ましい姿なんじゃないかと思う。

カネコが身体をのけ反らせながら発せられる美しい裏声を聴くことのできた“花ひらくまで”、なんでもない瞬間を繊細に歌う“ごあいさつ”、爽やかなメロディーが印象に残る“セゾン”と、こちらを圧倒するには十分だった。カネコの曲といえば、誰しもが経験するような有り余る日常が中心にあるのだと思う。そこに林弘敏(Gt)、本村拓磨(Ba、ゆうらん船)、Bob(Dr、HAPPY)の3人が加わりバンドサウンドになることによって、その小さな世界が広がりを見せる。当たり前だった日常に、少し異なった視点が加わる。かわいいとか女の子がとか、それだけじゃなくて、目の前の演奏に飲み込まれそうになるほどかっこいいのだ。

ゆっくりと始められた“祝日”でカネコのシャウトに気持ちがぐっと惹き込まれ、“爛漫”ではギターを身体全身かき鳴らすカネコの姿が印象に残っている。観客も身体を揺らすとか、手をあげるとか、何かアクションをする暇もなく、ただただ目の前のステージで繰り広げられる光景を固唾を呑んで眺める。全身を使い、音楽ひとつで勝負するカネコの姿を、瞬きとか余計な動きで見過ごしてしまうのがもったいない。

最後には、“アーケード”が演奏される。本村とBobの骨のある大きなサウンドに負けぬよう大声で歌われる「すべてのことに 理由がほしい」という歌詞に、いつもながらやられてしまう。林のギターソロも心地いく響く。手の取れるくらいすぐ近くの日常を歌うカネコ。その当たり前を、己の魂の削り取るように、全身で体現するその姿は圧巻であった。
「ありがとうございました!!!」と深いお辞儀を2度繰り返し、ステージを早々と去っていくカネコ。MCは一切なく、音楽一本のみで挑んだ姿が潔く、どこまでもかっこいい。やっぱり、カネコアヤノは勇ましくってかっこいいのだ。彼女の力強い歌声と柔らかなメロディーに包まれ、終了後もしばらく余韻に浸っていたいお昼のWHITE STAGEとなった。

[写真:全4枚]

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8/21 SATWHITE STAGE