FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTRED MARQUEE8/20 FRI

Yogee New Waves

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Photo by 古川喜隆 Text by 梶原綾乃

Posted on 2021.8.21 18:54

いい風、運んできてくれました

例年よりも約1ヶ月遅れのフジロック、初日。気持ちいい風が吹いてきたと思ったら、もう秋風っぽくて、もう少し夏でいさせてくれよと思ってしまう。そんな気持ちのまま、Yogee New Wavesを観るべくレッドマーキーへ向かった。

2014年のルーキーアゴーゴーを経て、2017年はメインステージへ出演した彼ら、久しぶりの登場である。同世代であるnever young beachやSuchmosらもどんどんと活動の場を広げていくなか、彼らもまた、彼らのやり方で、慎重に着実に歩みを進めてきたなと振り返る。先月、4枚目のアルバム『WINDORGAN』のリリースが発表され、それに伴うツアーも行われるということで、まだ出会えていない多くの新作たちを耳にするのがとても楽しみである。

舞台下手のベースアンプ上には、彼らのロゴをかたどったネオンが、テーマカラーであるブルーに輝く。「よろしく〜! We are Yogee New Waves!」と角舘健悟(Vo,Gt)の掛け声から始まる1曲目は“Summer of Love”。角舘の淡い淡い歌声がこだますると、上野恒星(Ba)のベースが脈打ち、楽曲に命が吹き込まれていく。ジュブナイル的な歌詞や、過ぎゆく季節を感じられるようなサウンドの機微も相まって、非常にドラマチックな幕開けだった。

続いて“SISSOU”は、先述した『WINDORGAN』からの先行リリース曲。竹村郁哉(Gt)の軽やかなギターに乗っかった<さらば ADIOS GOODBYE 再見 またね>というフレーズが印象的。角舘はときに柔らかく、ときに冷笑的にと、メリハリよく歌いこなしていった。
その後、“CAN YOU FEEL IT”と続き、“Climax Night”へ。会場の照明がブルーに染まると、一足早い夜がやってきたようだ。粕谷哲司(Dr)の的確なビートと、上野のゆったりとしたベースラインが、前へ前へと歩み出し、我々の背中を押してくれる気がした。

「いろいろな思いがあるフジロックだけど、今日はここでやれてよかったです」と言うと、「ソウル、ファンク、アンビエント……(数々の音楽ジャンルを挙げ)、刹那的に捉えないで、末長く楽しんで欲しい」と告げる。今日どのアーティストとも違う意思の表明。そのスケールの大きさには驚いたが、彼ららしい真っ直ぐな音楽への愛が伝わってきた。

ここからは、松井泉(Perc)と高野勲(Key)を迎えた6人編成で進行した。“to the moon”は松井のボンゴでダンサブルなアレンジが強まっているし、“Bluemin’ Days”の<部屋のすみで 少しだけピアノを弾き>というフレーズには、高野のピアノがきらびやかに添えられていて感動した。

終盤にかけては、よりムーディな空気がゆったりと会場を包み込む。“Ride On Wave”では、それぞれのパートがアンサンブルを重ね、バンドがひとつになっていく様子やそのグルーヴ感が壮観。そして“Like Sixteen Candles”は、現在のYogee New Wavesの実力を証明するかのような仕上がりだった。しっとりと始まったかと思えば、ずっしり重めなギターアレンジが効いている。角舘のヴォーカルはゆったりになったり、駆け足で畳みかけたりと、曲全体を自由に行き来しているようなアプローチだ。随所に遊び心も含みつつ、壮大な人生のバラードとして聴こえてきた。

「どうもありがとう、バイバイ」と最後は新曲“Toromi days”でしっとりしっかり、甘くチルアウトな雰囲気を残して彼らは去っていった。彼らは何倍にも大きくなって帰ってきたなと感じるし、とてもいい風も運んできてくれたと思う。名残惜しい今夏に刻むひと夏の思い出のような、特別な音をこれからも鳴らし続けていってほしい。

[写真:全5枚]

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8/20 FRIRED MARQUEE