FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTRED MARQUEE8/20 FRI

TENDOUJI

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Photo by 古川喜隆 Text by 梶原綾乃

Posted on 2021.8.20 13:31

物語が続きますように

初日レッドマーキーの2番手を飾るのはTENDOUJI。フジロックをひとつの目標に掲げてきた彼らは、2019年苗場食堂にて念願のフジロックデビューを果たした。それはとても大盛況で、「TENDOUJIフジロックおめでとう」なんて横断幕が用意されていたりと、観客と一体となって喜び合う幸せな世界がそこに広がっていた。そして、2021年。あのときの物語の続きが、またここで見れるのはとても嬉しい。

コロナ禍で彼らは、歩みを止めずに創作を続けていったタイプだ。今年は『MONSTER』というアルバムも出したし、あともう1枚『Smoke!!』もリリースが発表されている。アルバムから先行リリースされた新曲“CRAZY”は、ガレージっぽいテイストで攻めたなあと思いきや、THE BAWDIESのヴォーカル・ROYを迎えた曲だということ。そうきたか、と驚いた。とにかく今の彼らは、エネルギーに満ちている。

11時45分。リハーサルでの彼らもまた、ピクシーズ“Here Comes Your Man”や、ニルヴァーナ“Smells Like Teen Spirit”だったりを鮮明にプレイし、すでに観客の心を捕らえていた。そして、定刻にSEとともに走り回るように登場。オリエンタルリフから一気にサーフパンクへと変化する力強いナンバー“COCO”で本編の幕が明けた。

出だしからご機嫌なメンバーたち。モリタナオヒコ(Vo,Gt)は、観客を煽るように歌っていたし、アサノケンジ(Vo,Gt)は、ふと下を向いたようなときにも笑みがこぼれていたり。全力でフジロックを感じている。
続いて、「よろしく、フジロック!」の挨拶で“FIREBALL”へ。オオイナオユキ(Dr,Cho)がクラップを誘い始めたら、彼らの背景に大きなFIREBALLのロゴが登場(以後、曲ごとその演出がありとてもかっこいい)。ヨシダタカマサ(Ba,Cho)のノイズを秘めたベースが、オオイのドラムと混じり合い、ジリジリと苗場の暑さに溶けていく。リズム隊の力強さあってこそのナンバーだ。

続いて“Killing Heads”、“Kids in the Dark”と続き、会場のボルテージが一気に上がっていくのを感じる。「踊りたい人は踊っていって」「めちゃめちゃいい演奏をして帰りたいと思います」そんな控えめなMCから始まったモリタだったが、“STEADY”の冒頭では「言葉にならないです、最高」と言い、今の喜びを噛みしめるようにバッキングを始めたのが印象的だった。アサノもまた、口を開いた。コロナ禍での開催はいろいろな意見があるという話。この状況でルールを破ることはダサい、ダサいことはやめようという話。けれど最も印象的だったのは「音楽は制限されていない」という話だ。制限されていないからこそ、「めちゃめちゃ楽しめるようにプレイする」という彼らに、観客は全力で耳を任せていた。

さらにここで、スペシャルゲストとしてTHE BAWDIESのROYが登場した。スーツを身にまとったROYと、全体的にスポーティーなルックのTENDOUJI。それぞれの個性がほどよくぶつかり合っていてなんだか可笑しかったものの、もちろん息はピッタリだ。ROYはおなじみののシャウトや高音をばっちりとキメ、ときにモリタと顔を見合わせながら、“CRAZY”を炸裂させた。

ここからは、TENDOUJIおなじみの歌って踊れるような楽曲が立て続けに披露された。“PEACE BOMB”なんて、プリーズ!プリーズ!って歌いたいし、一緒にワン、ツー、スリーとカウントしたいところだ。歌える、踊れることを重要なポイントのひとつと考えているTENDOUJIにとっても辛いことだし、それは観客にとっても同じだ。観客はみな声を出せないぶん、その気持ちはマスクの中に閉じ込めて、一生懸命手振りで応え、踊っていた。
そして特筆すべきは“THE DAY”。思わず口ずさみたくなるメロディのよさに、改めてTENDOUJIのソングライティング力を直に感じる。ライヴだと、よりいっそうだ。何より、力強くこちらへ迫ってくるアサノの歌声と表情が、感極まっているようにも見えた。大好きなフジロック、いろいろな思いを経て帰ってきた彼らと自分を重ねると、こちらまで泣いてしまいそうだ。

モリタは最後に、緊張した様子で言葉を紡いだ。心配な気持ちで会場に来た人もいるかもしれない。けど、バスの中で見えてくるフジロックの会場を見て、安心した人や、やっぱりフジロックが最高だと思った人もいるかもしれない。これが続くように頑張っていきたい、と。そして、「また会いましょう、生きて」と言い、最後は元気に、爆発的な熱量で“GROUPEEEEE”を演奏し、締めた。

複雑な状況のなか、触れるのが難しい点も彼らなりの視点から語ってくれたのは、シンプルにうれしかったし、とても彼ららしかったと思う。フジロックもTENDOUJIも、その物語がどうか続きますように。そんな意志と祈りを感じる熱の入ったパフォーマンスだった。彼らを苗場で、さらに大きなステージでまた見れることを信じている。

[写真:全10枚]

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8/20 FRIRED MARQUEE