LIVE REPORTRED MARQUEE8/20 FRI
KOTORI (selected by ROOKIE A GO-GO ’19)
“We are the Future”!KOTORIが見せてくれる未来を、音楽の力を信じたくなるステージ
眩しいほどのスポットライトが下方からドラムセットを照らす。KOTORIの4人がゆっくりとステージの中央に向かう様子を見ていると、まだ演奏すら始まってもいないのに、なんだか泣きそうになってしまう。
遂に2021年のフジロックがスタートした。ただただ心待ちにしていた例年とは異なり、不安や迷い、葛藤などを抱えながらもたくさんの人が、KOTORIの勇姿を見るためにRED MAQUEEに集まっている。たったそれだけのことなのに、すでに興奮している自分はそこにはいた。
佐藤知己(Ba)の確実なベースのリズムと細川千弘(Dr.)のゆったりとしたリズムから始められた“We are the Future”は、5月下旬に発売されたアルバムの表題曲である。
たった2年の間に、環境が変わってしまったのは私達だけではなく彼らも同様だ。この曲は、そんな状況下のなか、自分たちには一体何ができるのか?何を守れるのか?それでも未来を、前を見ていくための決意の歌なのだと思う。
ステージから鳴らされる音で会場が徐々に温まり、声は出せないけれど、それに呼応するかのようにオーディエンスからもだんだんと腕が上がる。スポットライトで照らされるステージはまるで映画のワンシーンのようであったし、これから始まる40分間のKOTORIのライブが間違いのないものになることが約束されたような瞬間でもあった。
2019年にKOTORIがROOKIE A GO-GOのステージに立ってから、2年の月日が経過している。その間に彼らは武者修行かの如くライブを重ね、現在もツアー真っ只中である。
2曲目・3曲目と連続して演奏された“羽”と“Unity”は、彼らの成長の証明のようにも見て取れた。安定した演奏や堂々とステージに立つ姿、遠くまで伸びていく横山優也(Vo./Gt)の実直な声に、熱を持ったコーラス。今までの2年間で、音楽の力を信じながら何度もステージに立ち続けてきたからこそ、見られた景色ではないだろうか。
「このステージのためにつくった」という4曲目“Anywhere”は、上坂仁志(Gt./Cho)のどこか懐かしいメロディが印象に残る、ゆったりとした1曲。メンバーの背後に映る赤と黄色、眩く光る色とりどりの映像に、体内の芯に響く細川のドラミングに身体に身体を任せてうっとりとした心持ちでステージをずっと眺めてしまう。身体を包み込む大きな音に、英詞のなかにひっそりと歌われる「君が望むのなら どこへでもいけるよ」という優しい一節が耳に残り、やっぱりこの1秒1秒が奇跡のように感じられ、胸をぎゅっと掴まれた感覚になる。
青いスポットライトが美しく爽やかな“トーキョーナイトダイブ”、佐藤のトランペットの軽やかな音と場の空気や演奏をゆったり楽しむかのように演奏された“雨のあと”。確かに彼らはまだ「ルーキー」の枠組みかもしれないし、フジロックのステージに立つことを目標のひとつにしていたのかもしれない。でも、今このステージを見ていると、通過点であることがよくわかる。2年間の熱量が込められた、たった40分間は彼らには短すぎるし、ずっと演奏を聴いていたいと思わせられる。あの場に立ち会わせた方のなかには、心を打たれた方も多いのではないだろうか。
最後に演奏された“Yellow”は「ここまで連れてきてもらいました」「精一杯演奏するしかないんで」「僕らを選んでくれてどうもありがとう!」という直前のMCを体現するかのような溢れんばかりのエネルギッシュな演奏がたまらない。どっしりとした佐藤と細川のリズムに合わせて上坂がギターをかき鳴らし、中央では横山が身体を揺らしながらフジロックの空気そのものを楽しんでいるかのようだった。
KOTORIのステージを見ていると、音楽が好きで、フジロックが好きでよかったなと心から思える。ずっと音楽やライブが生活のすぐそばにあって、心の支えや生きがいのひとつでもあった。学校や仕事で嫌なことがあっても、音楽さえあれば、負の気持ちをどこかへ吹き飛ばしてくれる。その気持ちが心のどこかから湧き上がってくるのを、何度も何度も感じるのだ。
正々堂々と「We are the Future」と言えてしまう、KOTORIの演奏が見せてくれる希望の溢れる未来は一体どんな景色なのだろう。音楽の持つ力を更に信じたくなるステージだった。
[写真:全8枚]