LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN8/20 FRI
Tempalay
10年後も存在してほしい場所だから。
なかなか奥地、ヘヴンまでお客さんが来ないなんて話していた昼帯とは打って変わって、コアファンなのか、Tempalay、坂本慎太郎というサイケデリック先輩後輩の流れを見ようというオーディエンスなのか、初日トリ前のヘヴンは活況だ。
ステージは暗く、ミラーボールの反射がまるで生き物のように森に反射する光景がすでに彼ららしい。“シンゴ”で聴ける女性のメカっぽい声で、「アイ・アム・リョート」などと、サポートの高木祥太(From BREIMEN/Ba)を含む4人の名前がコールされ、全員、白い衣装で位置につくと、最新作『ゴーストアルバム』ではないが、幽霊のお祭りのような、カルト集団のような不思議な佇まい。コールの声そのままに1曲目は“シンゴ“。小原綾斗(Vo/Gt)のメインボーカルに加えて、これまで以上にAAAMYYY(Synth/Cho)のコーラスや、時にともに歌う声の存在感が強い。
そして、ステージに向かって右サイド、John Natsuki(Dr)に隠れて見えにくい高木を回り込んで、確認してみるとピンクのエクステンション?染めているのか?まるでサンダー・キャットばりの派手さで、メンバー以上に目立っている。姿のみならず、彼の蠢くベースラインは今やTempalayのライブにおけるシグネーチャー・サウンドに定着した印象だ。初見のオーディエンスも“のめりこめ、震えろ。”はポピュラーなのだろう、好リアクションを得ていて、随所で「中毒性ある」「なんかくせになる」という声が。
4曲終わったところでNatsukiの「こんにちは!Tempalayです!」というMC。が、すぐにサンプリングであることに気づくヘヴンのお客さん。そこからは新旧織り交ぜつつ、明確にいまのTempalayの音像に昇華できていることに快楽中枢を刺激される“未知との遭遇〜グリーンマン”や、これまた摩訶不思議なメロでありつつ、R&B的なキャッチーさもあるおなじみの“どうしよう”で、一部ビビッドな反応が。いわゆる邦ロック少年といった雰囲気のリスナーにも届いている印象なのだ。最新と言えば、8月11日に配信リリースしたばかりの新曲“あびばのんのん”も好反応。サウナブームというより、サウナドラマ『サ道2021』の影響が強いのかもしれない。『ゴーストアルバム』のタイミングとももう違う、琴の音をサンプリングしたサビの美しさや、間奏のイマジネーション豊かな展開。高木のよく動くベースが大活躍する部分でもあり、上モノがだんだん選びぬいた音になっている分、綾斗の歌もよく通るという好循環。この曲をライブで聴けたことはここに来たからこその収穫に思えた。
終盤、綾斗が「正直、ここにいる人のためにやっています。来年も再来年も、10年後もやっていてほしいし、出たいです。中傷してもらっても構いません」と、彼にとってのこの場所の意味を話した。決して勢いで言ったようには思えなかった。
社会を糾弾するような曲ではないけれど、ディストピアを想像させる“大東京万博”など、時代と対峙しているこのバンドの素敵なところはそうした不穏な空気を飽くまでも音の響きやアレンジで伝えるところだろう。ラストはその名も“ラストダンス”。コロナ禍より全然前に書かれた曲だが、いま聴くと〈会って話したい〉という歌詞が、この曲独自の物語から独り歩きして、妙に響いた。見上げると映像ではなく本物の満月が顔を出していた。
[写真:全10枚]