FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN8/20 FRI

LITTLE CREATURES

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Photo by 平川啓子 Text by 石角友香

Posted on 2021.8.20 21:15

人間性がそのまま出るセクシーなミニマリズム

LITTLE CREATURES、なんと昨年、デビュー30周年を迎えたそうで、コロナの影響か、記念アルバム、その名も『30』は今年のリリースになってしまったが、その音楽のフレッシュさ、いまでこそポストジャンル的とか言うけれど、オーガニックなトリオから、ニューウェーヴ、ハウス、一時はメンバー全員パソコンに向かうようなライブも行ってきた人たちである。今年のキーマンになっている90年代生まれのアーティストたちの先駆け的存在と言えるだろう。そのバンドがなんと「イカ天」出身なんですよ。つくづくあの番組はLITTLE CREATURESやBLANKEY JET CITYを発見(本人たちのパンク精神もあるけれど)してくれて感謝しかない。

ヘヴンのステージにシンプルに3人だけ。ぬるっと登場した青柳拓次(Vo/Gt)、鈴木正人(Ba/Key)、栗原務(Dr/Per)は、この最小編成で緩急の効いた色気のあるグルーヴを作り出していくわけですよ。あらゆる音楽に手を出してきた上でのシンプルさって、自ずと人間性がフォーカスされるものだから。新作『30』の中でもファンに人気の“あさやけ”にはじまり、2曲目の“声なき者”はパンクから派生してダブやハウスも聴くようになった音楽遍歴を持つリスナーには腑に落ちまくる楽曲なんじゃないだろうか。さらに失礼ながら、青柳さんって、こんなにボーカルがセクシーだったっけ?という嬉しい驚きも。

長身の鈴木さんがキャラクター通りの淡々とした口調で「あんまりイエー!とかいうタイプのバンドじゃないから、こういう距離をとりながらのライブもいいのかもしれない」と、フィールドを和ませる。彼らの音楽の対極にありそうなハードで同期ももりもり入ったバンド好きも、意外とその場を離れず3人の演奏に静かに揺れている。理想を言えば普段どおりのフジロックなら、初見の人ももっと踊れるムードだったかもしれないけれど、ここで初めてLITTLE CREATURESという日本の至宝に出会えたのも何かの縁だ。

全体的に鈴木さんのベースのローが効いていることで、ギミックのない3人のアンサンブルに迫力が加味される。ウィットの効いた歌詞の“かんちがい”ではトランシーになりがちなループを青柳さんのしっかりしたメロディが、ポップ性を担保する場面も。つくづく3人の出す音を知り尽くした上で、いま再びそのアンサンブルを楽しめている、ということなのだろう。

終盤にはアルバム『30』から“速報音楽”という、メッセージ的にも新時代を音楽で表わせ、と歌う、タイトルどおりの現役感をしっかり描き、意外なほどストレートなその歌詞に驚くほどなのだが、彼らぐらい世界の音楽地図を身を以て体験してきたベテランが歌うと、むしろ力強い。ラストはおのおのおの楽器の個性が存分に発揮されたアウトロのインスト部分に自分内グルーヴが巻き起こった“House Of Piano”で終演。少ない音、その音色、その抜き差し。でもいわゆるチルい音楽でもない。日常とともにあり、知的好奇心に火をつけてくれる音楽。必ず、また苗場の地でお会いしたい。

[写真:全10枚]

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8/20 FRIFIELD OF HEAVEN