FUJIROCK EXPRESS '21

LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN8/21 SAT

ROVO

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Photo by 古川喜隆 Text by 石角友香

Posted on 2021.8.21 23:29

彼らが示した新しいライブのクオリティ

フジロックの常連でもあり、昨年から単独の野外公演「ハイライフ八ヶ岳」を多摩あきがわのキャンプ場で開催するなど、いち早くパンデミック時代のライブのあり方を模索し、同時に築き上げてきたROVO。自由に踊り自由に振る舞うライブをアップデートせざるを得なかった彼らの動向は多くのミュージシャンにとって、新しいライブのあり方やマナー(勝井祐二は「新しいクオリティ」と呼ぶ)を具体的に参照し、リスペクトも集めてきた。

知見やライブ現場での皮膚感覚を積み重ねてきた2021年夏現在のROVOがフジロックに帰ってくる。主にコアなバンドのファンやフジロックで楽しむROVOのダイナミズムを知っているオーディエンスが多いように感じた。ただし、開演当初はグリーンのKing Gnu、ホワイトではNUMBER GIRLという、身体がいくつあっても足りない振り分けである。馴染みのオーディエンスを前にライブは勝井の「自分たちで新しいルールを作るフジロックだと思っています」と最近では恒例になったメッセージから、1曲目は“SPICA”。 益子樹(Syn)のシンセに芳垣安洋(Dr/Per)、岡部洋一(Dr/Per)のツインドラムが鋭く切り込み、原田仁(Ba)のローが地面を揺らすと、チルっていたオーディエンスにスイッチが入る。ステージの照明は暗く、わずかにプロジェクション・マッピングが演出に使われているぐらいのヘブンの暗闇で人々が蠢き、そしてどろどろの地面が匂う。五感すべてが開放されるとはこういうことなのだ。

静かに始まり物語を変遷しつつ、肉体も変身していくようなROVOの楽曲をヘブンで体感する贅沢はここに集まる人は知っているのだろう。ただただ、マスク越しにしか苗場の空気を吸い込めないのはつくづく残念だ。細胞に新鮮な空気と音を供給したいのだ。これはむしろノンアルだからこそ感じたことかもしれない。

“AXETO”、“SUKHNA”と生き物めいた展開を見せる曲が続き(どの曲もそうだが)、山本精一(G)の多彩なフレーズが楽しめる“ARCA”へ。優しい単音から、メタルのクランチなニュアンスに近い音もジャムバンド的なソロもある。ギター・ソロかと思えば勝井のエレクトリック・バイオリンが重層的に空間を広げる。セルフネームの新作『ROVO』収録の“SAI”は牧歌的な側面もあり、バンドの新しい方向性を示した楽曲。そう。この曲でマスクが恨めしくなったのだった。

1時間半という、ワンマンライブに匹敵するセットリストの最後は初期の代表曲“CISCO!”だった。遠巻きに眺めていたけれど、ツインドラムの熱量が上がる様はやはりしっかり見たい。前方にはおのおの自分の踊り方でROVOの宇宙を楽しんでいる人ばかり。ソーシャル・ディスタンスも踊るにはちょうどいい塩梅なのである。気がつけば随分、人が流れてきていた。初めてROVOに出会った人がいますように。

一時、勝井さんはMCをしないバンドがしゃべるようになった理由がライブの注意喚起だなんて不思議だと話していらしたが、それも徐々に浸透。一歩先に切り拓いてきた道はこの日のヘブンにももちろん通じていた。

[写真:全10枚]

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8/21 SATFIELD OF HEAVEN