FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTGREEN STAGE7/29 FRI

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Photo by 安江正実 Text by 石角友香

Posted on 2022.7.29 18:46

開催5日前のオファーに応えた、だけじゃない3人のすごさ

野外フェスとシャボン玉。これは「clammbon文化」だと私は勝手に思っているが、そうしたほのぼのとしたムードと、ハードコアなまでに演奏を突き詰めるスタンスが共存したバンドを他に知らない。さて。今回の出演は本人たちにとっても簡単にオファーを受けられるものじゃなかったはずだ。そして、別にYOASOBIが出演できなくなったことを特段意識する必要もないのだ。だが、彼らは残念ながら初めてのフジロックを逸した若いアーティストをねぎらい、いつか出演するときがきたら、というメッセージすら残したのだ。

夕方のグリーンにはシャボン玉が飛んでいる。ああ、やっぱり待ってる人、その中でも「分かってる人」が、すでに今年のフジロックに足を運んでいるのだなと思う。そこへミト(Ba)はピンクの羽織もの、原田郁子(Vo/Key)は同じ素材に見えるパンツと、グリーンの縁取りのロングTシャツ、伊藤大助(Dr)は原田と同じグリーンのTシャツ。少しずつ何かが同じ。これは見事な衣装だ。定刻の少し前から時報が流され、17:00が知らされると“タイムライン”でライブはスタートした。すかさず原田が「紹介します、BRAHMAN、TOSHI-LOW!」と呼び込んで、二人の声が呼応する。自分の知らない誰かの日常に想像を及ばせる、もしくは可視化できる時代を拗じらず表現した曲だと思う。TOSHI-LOWが「YOASOBI見に来たら、意外と老けてたっていうね」と笑わせ、「若いアーティストも大事だけど、俺はclammbonがいるフジロックの日常が好きです」と、“タイムライン”にもかけて、話した。

近年の楽曲だけで構成するのか?と予想していたら“サラウンド”で皆を笑顔にし、“Lush Life!”ではラップ調のトーキングボーカルで沸かせる。改めてMCでは「clammbonです!5日前……5日前?」と原田がミトに確認。「はい、5日前に呼び出しくらいました!」と笑わせる。再び原田が「この場所がどれだけ特別なのか、今日はなんて言っていいかわかんない気持ちはそれぞれ持って集まってると思うので。精一杯やります」と再度、意思を伝える。ミトは「次の曲は本来、ここに立つべきアーティストにリスペクトを込めて」と、なんとYOASOBIの“優しい彗星”をワンコーラスだけカバーしたのだ。「フルコーラスは彼らがここに戻ってきた時にとっときましょう」というミトのメッセージは温かくも重みがある、そう感じた。

みんなで歌えないのは寂しいけれど、体を揺らしているだけでclammbonのライブにいまいると感じる“波よせて”、エクストリームかつポップな、キャリアを積んだ彼らの代表曲“yet”。ミトが個人の仕事で多く消化してきたアニメのめくるめく構成。曲が強くなければ生き残れないとかつて発言していた彼が、clammbonとて別扱いしないことを痛感した曲だ。伊藤のテクニックの凄まじさも相まって、ステージ上の興奮が高まっていく。代表曲が続き、“バイタルサイン”が演奏されたのだが、迫真の演奏を超えてミトはベースを肉体化したようにベースとともに暴れ、アンプに叩きつけ、ノイズを出す。clammbonはクレイジーなトリオでもある。いや、クレイジーなコンポーザーに牽引されて、未到の地に進むトリオだ。

「フジロック世界一だー!」と叫ぶミト。触発されたのか、“シカゴ”のビートに乗りダンスする原田。clammbonともなれば5日前のオファーだろうが、いいライブはできるだろう。でも、3人は今日、ここで出せるものは全て出しきった。ラストの“KANADE Dance”は3人が音で交わす会話にオーディエンスも巻き込まれた大きなグルーヴが生まれていた。この人たちが単なる代打のライブをするわけはないのだけど、また一つ大きな証明を残して行った。

[写真:全10枚]

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7/29 FRIGREEN STAGE