FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTGREEN STAGE7/31 SUN

PUNPEE

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Photo by 北村勇祐 Text by 石角友香

Posted on 2022.8.1 01:22

ジャパニーズ・ヒップホップの新たな分岐点

PUNPEEがグリーンステージに登場するのは、単に現在のヒップホップのみならず、ポップシーンでの人気が理由じゃなかった。彼のラッパー、トラックメーカーとしてのキャリアを一望するセットリストや豪華ゲスト参加が目立つが、この日、PUNPEEは自分のキャリアを使って、自分が背負ってきた、影響を受けてきたヒップホップを極上のエンターテイメントとして紹介してみせたのだ。一見、飄々とした彼のこのステージに込めた熱量にライブが終わった後も震撼している。

DJ原島宙芳とDJ ZAIに加え、この日はIllicit Tsuboiとドラマーのなかじまはじめも加えたバンドセット。小型のドローンがステージを捉え、見たことのないアングルとスピード感の映像が新鮮だ。“P.U.N.P.”に乗せて登場したのは、2017年のホワイトステージ同様、ペラッペラなレインコートを羽織ったPUNPEE。だけどなんか違う。そこに本物が登場し「誰だおまえは!」と本人。ここから彼の過去と現在がまず浮かび上がる。さらっと「夜を使い果たしていきましょうかね」と、“夜を使い果たして”を披露した辺りでは、つくづく現代の都市人のフォークソングでもあるなあ、と彼の発明に改めて感心したりしていた。

続いてBIMが登場し、「PUNPEEがグリーンステージ、ありえねえ!」と彼流の祝辞を送る。PUNPEEとは新曲”トローチ”が出たばかかりだが、今日はおなじみ“BUDDY feat.PUNPEE”を届ける。バンドセットの厚みのあるライブアレンジがグリーンのスケールで生きている。ここでふたりとも真っ昼間に食べたいものの話になり、蕎麦、いや夏ならBBQでしょ、という話の流れで“真っ昼間”と言えばZEEBRAの曲だけど、1997年からタイムマシンで来てくれないかなと、話してる端から本人登場!驚きに湧くモッシュピット。8月リリースのPUNPEEとBIMのコラボEP『焦年時代』収録の“Jammin’97 feat.ZEEBRA”をいち早く披露してくれた。

そこから“タイムマシーンにのって”があの名作アニメMVを背景に披露される。老人になったPUNPEE視点のMVであり、自分がいるのは若き日の両親がいるから、という物語について、曲が終わってから話していた。もうこうなってくると、彼を形成しているもの、ヒップホップという表現方法を選んだ背景が、重層的に組まれたセットリストと演出であることに震えるのだが、ライブそのものはどこまでも楽しい。

PUNPEEがフジロックに初めて参加したのは2008年、某ミュージシャンの運転手だったそうだ。警備会社の電話を受ける仕事をしながらビートを作っていた彼は、カサビアンなどをグリーンで見て「自分はノミみたいな存在だな」と思ったとも話していた。そこからは謎の物体が年季モノのサンプラーであり、Illicit Tsuboiからの借り物であると説明。MPCプレーヤーは簡単そうに見えて、一つ間違うとライブが止まってしまうぐらい恐ろしい、とSTUTSから訊いたPUNPEEは、それでも「ここでデカい音を鳴らしたら、こんな音があるんだ!って、届くかもしれないから叩いてみます」と、真剣な表情で“ECDのロンリー・ガール Feat.K DUB SHINE”(ECD)と“人間発電所”(BUDDHA BRAND)をプレイ。もしかしたらこのステージで最も緊張感のあるタームだったかもしれない。言葉にはしないけれど、先人へのリスペクトであることは自明だ。

続いてはステージ上の面々と音楽を作っている現在進行形を示唆する“フレンヅ”。原島やZAIのエピソードに触れる中で、実はPUNPEEのTシャツのプリントが2017年、ホワイトに出演時、原島がG-mailを送っていた画像なのだと暴露。対する原島は板橋区のロゴマーク入りTシャツで、なかなかいい勝負なんじゃないだろうか。幼馴染である彼に「今日ぐらいはふんぞりかえりましょうよ」と、“原島“ど真ん中”宙芳ラップ”が展開されたのだった。PUNPEEのライフヒストリーは続き、自分でも「話が家っぽいよね。親族呼ぶか」の一言で、なんと5lackが登場。彼自身のライブとは違い、PUNPEEの弟として共演した感の強い“Wonder Wall feat.5lack”だった。フジロックの大きなステージに登場している二人が、お互いに自分の手法でサバイブしてきた物語も、別に語りはしないが示唆された場面だったのだ。

終盤、再びPUNPEEにとってのフジロックのグリーンステージという場所を訪れた2008年は、ひとつの転機だったと話す。良くも悪しくも分岐点があれば失敗しても道を見つけられるという意味合いだったと思う。〈あの芸術家もあの戦争に行かなきゃ生きてたかも〉というラインのある“Hero”をここにセットしたのは必然的だし、クライマックスに感じられた。

ラストはグリーンに集まったオーディエンスに送る温かい1曲“Oldies”。渋いソウルのサンプリングのループが原点を照らす。大げさに言えば存在証明、1時間のショーと捉えるなら楽しめるヒストリー。いずれにしてもPUNPEEがフジロックのグリーンステージに馳せる思いの強さは証明された。

[写真:全9枚]

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7/31 SUNGREEN STAGE