FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTRED MARQUEE7/29 FRI

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Photo by リン(YLC Photograpghy) Text by 若林修平

Posted on 2022.8.2 17:44

女王、苗場に初降臨!

ついにエーウイッチがフジロックのステージに登場する。今年3月14日、日本武道館公演を見事に成功させた注目の彼女のステージを目に焼き付けるため、レッド・マーキーにはパンパンのお客さんが集まっていた。しかも入場規制までかかっていたとのこと。伝説が生まれる予感がプンプンする。

真っ白に発光する背景スクリーン。“Queendom”のイントロが流れる中、登場したエーウイッチ。逆光でシルエットしか見えないが、仁王立ちするその姿から感じる存在感は凄まじい。強烈なラップを畳み掛け、スクリーンの発光色が変わった瞬間、彼女の全容が露わになった。白とグレーのボディースーツを身に纏った彼女の佇まいは、2018年のフジロックに出演したケンドリック・ラマーとタブって見えた。「女王が苗場に降臨!」それは歴史的瞬間なのだと、その場にいたオーディエンスは皆感じていただろう。

不穏なピアノイントロから始まる“Shock Shock”では、重厚なトラックの中で発せられる「まさか女が来るとは」というリリックが強烈。続く“NWO”の中、今回のバンドメンバーが登場。これまで何度も一緒に共演しているSOIL & “PIMP” SESSIONSの丈青(Pi.)、秋田ゴールドマン(B.)、みどりん(Dr.)、そして社長(Manipulator.)だ。エーウイッチが1人ずつメンバーを紹介し、そのまま次の曲“Open It Up”へ。そこでエーウィッチのマシンガンラップとみどりんのドラミングによる凄まじい掛け合いが繰り広げられる。青森のねぶた資料館で見たねぶたにインスパイアされたという“NEBUTA”では、ヴァースに突入するタイミングでYENTOWNの盟友であるラッパーのkZmが登場。客席に乗り出さんばかりのパワーを振り撒いていった。

これまで数々の女性アーティストのライブを観てきたが、この日のエーウイッチはそれらのどれとも被らないもので、唯一無二のオーラを発していた。それはオーディエンスの盛り上がり方からして一目瞭然だ。そんなオーラは“口に出して”でも発揮されていた。途中のアカペラパートではレッド・マーキーのオーディエンスに向けて強烈で挑発的なラップをぶちかます。続くMCで「みんな誰を観に来たの?みんな私のこと好きなんだよね?どれにしようかな?」と投げかけ、その流れのまま“どれにしようかな”に突入。ここでも存分に女王っぷりを発揮していく。“紙飛行機”では、音源でサンプリングとして使われてる“色彩のブルース”を見事に歌い上げオーディエンスを痺れさせたが、さらなる痺れる事態がこのあと待っていた。EGO-WRAPPIN’の中納良恵がサプライズ登場し、オリジナル“色彩のブルース”を歌ったのだが、SOILのメンバーをバックにした“色彩のブルース”は相性抜群でエーウイッチのラップとはまた異なる存在感を発揮していた。曲が終わって、中納は退場。すると大先輩の登場に思わず「緊張しすぎて歌詞飛んじゃいました」とこぼしたエーウイッチ。そんな彼女が今の素直な心境を言葉にした。「こんなこと夢にも思わなかった。想像できなかった。もう何もかもやめようと思った時期もありました。でもやめなかった。それで気づいたことがあります。やめなければいつでもリベンジできます。」その流れから“Revenge”へ。「本当の意味のリベンジとは?」について語ったこの曲で、誰かを憎むのではなく自分を解放することで切り開いていくことだと歌った。

女王のライブはハイライトを迎える。愛娘が当時小学4年生のころに体験した普天間米軍ヘリ墜落事故。それにインスパイアされた曲“TSUBASA”。この曲を愛娘のYomi Jahをステージに迎え、歌ったのだ。「たくましく翼を広げて飛べるように」そんな思いが込められたこの曲、2人の言葉で歌われたこの曲を聴けたこの時間は本当に貴重なものだった。そしてライブはクライマックスへと突入していく。強烈なトラップビートが響きわたった”WHORU?”。ラッパーJP THE WAVYを迎えたラップのアレンジが特徴的な“GILA GILA”。kZmと同じくYENTOWNの盟友であるKEIJUを迎えた地元沖縄を自賛する“Link Up”、そしてYENTOWNに所属するキッカケとなったChaki Zuluによるプロデュースの“Remember”。最後は愛する人との別れと新しい恋について描いた“Bad Bad”で60分の濃密なステージは幕を閉じた。

今回はレッド・マーキーでのライブだったが、彼女のパフォーマンスを観て思ったのは「もっと大きなステージでやったら、もっと映えるんじゃないだろうか?」という未来への青写真だ。その時に改めて言おう「女王、降臨」と。

[写真:全10枚]

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7/29 FRIRED MARQUEE