FUJIROCK EXPRESS '22

LIVE REPORTRED MARQUEE7/29 FRI

No Buses

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Photo by 安江正実 Text by 石角友香

Posted on 2022.7.29 13:47

そのアンサンブルが存在理由。BIMも登場した苗場スペシャル

入念なサウンドチェックに近藤大彗(Vo/Gt)が出演時間が迫っているせいか「もう終わりだし」とメンバーを促すも、納得できるまで確認しているメンバー。いつものNo Busesのライブ前の光景に安堵する。当たり前だが、走り出したらほとんどノーMCで、バンドアンサンブルの妙意のみで表現するバンドだからだ。

コバルトブルーの照明の中、登場した5人は“Girl”でスタート。前方のオーディエンスは首でリズムを取り、おのおのNo Busesの世界に入り込んでいく。いきなり近藤が髪をかきむしり、跳躍する。予想不可能な彼以外のフロントはあくまで冷静にトリプルギターであることの必然をおのおのの音色とリフで表現していく。序盤は間髪入れずに“Alpena”まで一気に演奏したのだが、加速するスピード感じゃなく、緩慢なフレージングなんてありえないといったストイックな疾走感。間奏でのギターのユニゾンも端正だ。灼熱の太陽に熱され気温の上がるレッドマーキーは吹き出す汗を拭いながらも、気持ちはどこまでもクールだ。

近藤が「新しい曲、やります」と告げた“In Peace”はコードも厚めの堂々たるミディアムチューン。ポストパンクやガレージの印象が強めなNo BusesにしてはOasisなんかのUKテイストが強め。いや、ブリットポップというよりぶっちゃけ“Wonderwall”を想起させるスケール感。何より近藤が強めにメロディを歌う表現が新鮮だった。しかもシャウトまで!これは9月リリースの3rdアルバムの内容がますます楽しみになってくる。マイナーチューンを続け、さらにポエトリーラップ調の歌い出しはわざと音を歪ませていて、淡々と吐き出されているようなボーカルにも幅ができる。マスロックばりの規則的なアルペジオとドラムパッドの相性も抜群で、いちいち全ての音がツボに入る。もはや暑さでちょっと休みたい気持ちと、そのツボに入る快感の両方の誘惑のあいだで気持ちが揺れる感じだ。
8曲演奏したところで、たどたどしい近藤のMCが挟まれ、「こんにちは。今日から夏休みの人とか……そうじゃない人もいるかと思うんですけど……ちゃんと水とか飲んでください」と、知らない人には挙動不審気味、知っている人にはいつもの近藤節が展開。このタイミングでニューアルバムやツアーの告知をしっかりするようスタッフに念を押されていたようだが、ここでも「いや、いいです。あ、9月にアルバム出るんで。今日、物足りなかった人はツアーに遊びに来てください」と、最終的には告知できているというところにもクスクス笑いが起こっていた。

その後は再び少しアンサンブルに厚みを感じる新曲“Rubbish:)”、赤に近いピンクに染まるステージにBIMを呼び込んでの”Non Fiction“。バンドスタイルで聴くとBIMのラップやメロディを歌う声はUKのパブロック・ボーカルにも似合いそうなコシと渋みがある。BIMとの共演を知っているオーディエンスも、ここで初めて知ったであろう人も彼の登場だけでなく、ヒップホップ以外の表現にちょっとした驚きがあったんじゃないだろうか。「あったかいお客さんでほっこりしました。MCになった途端、YouTubeのビュー数上がってました」と、褒めてはいないエール(!?)を送るのもBIMと近藤の仲ならでは。

さらに新曲“I’m With You”などをはさみ、ラストはギター・アンサンブルの旨味を凝縮、さらには5人の計算され尽くした抜き差しがジャンルを飛び越えて、クラシックのスコア並みの精緻さを感じる“Imagine Siblings”まで、フェスのセットリストとしては破格の全14曲を完走。負け惜しみかもしれないが、No Busesをシラフで堪能できたことで、フジロック初日、我、覚醒す!こんなバンド、世界でも珍しい、そんな域に来た。

[写真:全7枚]

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