MOREFUN - AREA REPORT 7/28 SUN
はじめてのフジロック「23歳+25歳」
リンタローのフジロック体験記
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2024年のフジロックが終わった。そして僕にとって最初で最後の「はじめてのフジロック」も終わった。
ここで「あぁ、楽しかった」と終わらせてもいいのだけれど、改めて「なぜ今まで参加してこなかったのか」を考えてみると、「フジロックに行くべき理由」よりも「フジロックに行かなくてもいい理由」を考える方が簡単だったからだと思う。
テント生活は楽ではないし、飲食代も決して安くは済まない。これだけインターネットが普及している現代において、それらは周知の事実だった。ましてや、出演者たちのパフォーマンスでさえもスマホで観ることができるネット全盛期。わざわざ会場に足を運ばずとも、フジロックについて多少なりとも知っている“つもり”になれることが、「別に今度でいいか」と僕に思わせ、初参加を遅らせていた。
今年以外のフジロックを知らない
話は逸れるが、今年のフジロックは円安の影響もあってか、海外アーティストへの出演交渉が一筋縄で行かなかったという噂も耳にしていた。しかし一方では、海外からのお客さんが非常に多く、彼らにとっては安価で堪能できる素晴らしいフェスなんだろうな、と金欠の僕は羨ましく見ていた。
でも、日本のお客さんにとってはどうだったのだろう。僕が越後湯沢駅で帰りのバスを待つために時間を潰していると、交通整備のおっちゃんが「今年はチケットが余っているらしい。去年はもっと混んでいた」と教えてくれた。今年以上の混み具合を想像した僕はゾッとする反面、参加者の減少という事実に少し寂しくなった。
もしかすると、今年は自分にとって最高のフジロックだったが、長年に渡り参加している方の中には「昔の方が良かった」と感じている人もいるのだろうか。
初参加の僕には、フジロックというイベントが発展しているのか、はたまた後退しているのかわからない。ただその一方で、フジロックの今後の盛り上がりや、開催され続けるかどうかへの不安を感じたのは事実だ。
25年後のフジロックと僕ら
話を戻したい。僕は今までフジロックへの参加を見送ってきた。それでも、とうとう参加したのは、やっぱりこの身体でフジロックの「今」を体感したいと思ったからだ。
テント生活やフジロック飯も、結局のところは参加してみないとわからないことの方が多かった。過酷だと思っていたテント生活も、今となってはあの苦労が恋しいし、節約するつもりだったフジロックでの飲食も、いざ会場に行けば暴飲暴食が始まっていた。ネットの情報を元に行ったフジロック・シュミュレーションは、ほとんどが外れるという結果に終わった。
インターネットで手軽にフジロックの情報を知ることができるようになり、フジロックはより身近なイベントになった。でも、それに安心して、いつまでも遠くから眺めているだけでは、いつの間にかフジロックというイベントはどんどん姿形を変えてしまう。
ステージ上では開催25周年という節目にちなんで「25年前から参加している人はいますかー!?」と、問いかけが行われたりもしていたが、そこで手を挙げてくれた人々が次のフジロックにも参加する保証はどこにもない。僕自身も、次の25年後に自分が同じことを聞かれている姿を想像するけど、23歳の僕には先のことすぎてイメージが湧かなかった。
フジロックを取り囲む経済や自然環境、そして関わる人々は刻一刻と変わっていて、フジロック自体も変わっていくのだと思う。恐らく昔と今を比べても、現にさまざまなことが変わっているのだろう。そして僕が経験したフジロックも、来年にはまったく別のモノになっている可能性もゼロじゃないし、そもそも僕自身だって来年の自分のことすらわからない。
だからこそ、今年のフジロックを堪能できて本当にラッキーだった。今までのフジロックも、そしてこれからのフジロックも僕にはわからない。でも、一度しか経験できない2024年のフジロックを、僕は知っている。
未来のことで一つ言えることがあるとすれば、次の25年後も苗場でフジロックが開催されるのならば、僕は必ずその場にいたい。そして、2024年に行った「はじめてのフジロック」のことを思い出したい。
さいごに、交通整備のおっちゃんは「もうそろそろ引退だなぁ」と言っていた。フジロックにおける次の25年間を創っていくのは、僕らの世代なのかもしれないと、そのとき考える。
今回のフジロックは一人での参加だった。でも、25年後のフジロックでは、「フジロック仲間」もできていたりするのかなぁ。自分とフジロックのこれからが楽しみだ。
書き手:浅野凜太郎
2024年に大学を卒業し、そのままフリーライターとして活動開始。ライターとしてもフジロッカーとしても一年目の自分だからこそ、感じるもの・書けるものがあると思っています。一番の楽しみはノエル・ギャラガーです!洋楽の世界に足を踏み入れるきっかけとなった兄貴とシンガロングしたいです!