“若林修平” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '24 | フジロック会場から最新レポートをお届け https://fujirockexpress.net/24 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Tue, 13 Aug 2024 04:03:22 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.6 あれもない、これもないフジロック https://fujirockexpress.net/24/p_7583.html Fri, 09 Aug 2024 07:18:03 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=7583 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と応えてくれる……。前夜祭のレッド・マーキーにやって来てくれたみなさんと、そんな挨拶を交わして集合写真を撮影し始めたのは、2007年ではなかったか。初めてやったときには、オーディエンスがどう応えてくれるか、全くわからなくて、はらはら、ドキドキだったんだが、ものの見事にほぼ全員から「ただいま!」と返ってきたときにはめちゃくちゃ嬉しかった。フジロックが、あるいは、苗場が、年に一度、帰省するふるさとのようになっているのを実感したのは、この頃からだったかもしれない。

あれからすでに17年、相も変わらずそんなことを続けている。なにはともあれ、みんなの幸せな顔を見るのが嬉しいからだ。苗場音頭での盆踊りが一段落して、花火が上がったあと、レッド・マーキーの入口のテープがカットされると、この1年間、フジロックを待ちわびていた人達が、文字通り、堰を切ったように雪崩れ込んでくる。そして、DJ MAMEZUKAの絶妙な選曲で回されるレコードからあふれ出る音の洪水をかぶる彼らの幸せな表情ったら……ありゃあしない。それに魅入られた関係者や噂を聞きつけた出演者までもが、ステージからその光景を記録しようとカメラを構えている。どうやら、運営本部でもその様子が映像で確認されているようなのだが、ちっぽけなモニターで見るのと、現場にいるのとでは大違い。実際にそれを目の当たりにしてほしいと呼び出したのが、昨年までグリーン・ステージを担当していた、主催者スマッシュの新社長、佐潟氏。それに応えてわざわざやって来てくれた彼が「確かに、そうだね。実際に見ると……」と、口にしてくれたのが嬉しかった。

加えて、今年はステージ袖に腰をかけて、最初のバンド、USを待ちわびていたのが、フジロックを生み出した日高大将。言うまでもなく、彼の写真をフィーチャーして2021年に制作した「Wanted(指名手配)」Tシャツには「彼が最前線に戻ってほしい」という願いが込められていた。かつてfujirockers.orgが作ったTシャツで、これが桁違いのセールスを記録したのはなぜか? 多くのフジロッカーがそんな思いを共有していたからに違いない。嬉しいことに、昨年はクリスタル・パレスやどん吉パークに彼が出没。体調がすぐれないと耳にしていたにもかかわらず、今年はレッド・マーキーからグリーン・ステージにも姿を見せている。しかも、彼が惚れ込んだというUSのライヴを楽しんでいる姿を目撃したのは少なくとも2回。ひょっとしたら、それ以上足を運んでいたのかもしれない。

コロナ禍以降、なかなか本来のフジロックが戻ってこないことに苛立っているフジロッカーが多いことは百も承知だ。それでも、ここにいるだけで幸せを感じていた。奥地のカフェ・ドゥ・パリもストーンド・サークルもない。ジム・ウェストを中心に集まってきたDJたちがお気に入りの音楽を楽しむブルー・ギャラクシーは復活したものの、あの周りにあったワールド・レストランは見る影もない。昔からのフジロックを知っている人間にとってみると、かなり寂しい景色にも映る。それでも、「なにやら幸せ」な自分がいるのだ。どこかで読んだ記事に「フジロックで飲むビールがめちゃ旨い」というのがあったんだが、実にその通り。なにを食っても、なにを飲んでも、ここにいることでその全てが格別なものになっているのに気付くのだ。

何度もやってきている常連にとって、フジロックは盆と正月が一緒になった、里帰りのようなもの。懐かしい友や仲間に再会できる場所でもある。年に一度、ここでしか再会しない友人だって珍しくもない。それでも、どこかで同じような世界を引きずりながら生きていることを互いに確認したり、旧交を温めることになる。しかも、初めて出会っても、どこかで繋がっているような感覚に陥ることも珍しくはない。そして、この1年を振り返りながら、あ〜でもない、こ〜でもないと会話が続いていくのだ。

この1年でフジロックに馴染みのある人たちもこの世を去っている。そんな仲間やアーティストのことが頭をかすめるのも仕方がないだろう。そんなひとりがチバユウスケ。今年、1998年の「地面が揺れた」伝説のフジロックから、スタッフが記録し続けた彼の写真をフジロッカーズ・ラウンジで展示したのは、そんな勇姿が我々に焼き付いていたからだろう。土曜日にクラフトワークが、昨年亡くなった坂本龍一への敬意を示すように「戦場のメリー・クリスマス」を奏でて、「Radioactivity」への導入部のように使ったのが話題になっているが、彼も苗場に姿を見せたアーティストのひとりだった。

Photo by MITCH IKEDA

フジロック・エキスプレスの更新作業に使う本部テントの準備と取材活動のために、精鋭スタッフと共に苗場入りした火曜日、新たな訃報が飛び込んでいた。作業を終えた夕方、UKロックの源流と言っていいだろう、ジョン・メイオールが亡くなったことを知る。ご存知の方も多いだろう。彼の次男が、フジロックの第1回目から最重要スタッフとして行動を共にしてきたスマッシュUKのジェイソンであり、幾度となくDJとして、あるいは、ザ・トロージャンズというバンドを率いて出演してきたギャズは長男。いわば、ふたりともフジロックを語るときに欠かすことができない人物となっている。彼らにどんな言葉をかければいいのか……、かなり戸惑っていた。実の父親が他界したのだ。彼らが現場を離れても誰も文句は言えないだろう。が、ジェイソンは黙々とフェスティヴァルの準備に奔走し、少し遅れてやって来たギャズには予定通りにツアー続行することを告げられる。

規模で言えば、比較の対象にはならないことは百も承知なのだが、フジロックを触発することになった英国のグラストンバリー・フェスティヴァルに繋がる不思議な縁がメイオール親子かもしれない。後者の主催者で会場となる農場の主、マイケル・イーヴィスが大きな影響を受けたのは1969年に開催されたバース・ブルース・フェスティヴァル。そこで演奏したジョン・メイオールとブルース・ブレイカーズを見て、「自分もフェスティヴァルをやりたい」と思うに至ったと。今ではその中心人物として全てを仕切っている末娘、エミリーが口にしている。しかも、そのライヴのステージ裏にいたのが、まだまだガキンチョだったギャズとジェイソン。ずいぶんと大人になった彼らがフジロックで最もフェスティヴァル的要素を凝縮したパレス・オヴ・ワンダーからブルー・ギャラクシーの顔のような存在となっている。

1970年に始まったグラストンバリーは今年で54年目となり、1997年に始まったフジロックは、ちょうどその半分の27年目。苗場での開催が始まった1999年から25年の節目となることが今年は話題になっているのだが、フジロックのルーツと言ってもいい、アトミック・カフェ・ミュージック・フェスティヴァルが産声を上げたのは1984年と、40年前にさかのぼる。というので、あの時、スタッフとして関わった身として、今年はジプシー・アヴァロンで続けられているアトミック・カフェのステージに立って、当時の話をしている。

あれから、とてつもない時間が過ぎ去ったように思う。その間に多くの友達や仲間に関係者がこの世を去り、フジロックが始まった頃にはまだ40代そこそこだった筆者も、すでに高齢者となっている。今年、グラストンバリーの主催者、マイケルが車いすに乗ってザ・パークと呼ばれるステージに姿を見せている一方で、フジロック生みの親、日高大将は杖を片手に前夜祭のレッド・マーキーやグリーン・ステージに立っている。かつてのようにジープで会場内を走って、動き回っていた彼らを見られないのは残念だが、世界の西と東で目撃したこの光景は彼らの想いがそのままフェスティヴァルとなっているんだろうと思わせていた。

なにやら表向きには順調に復活しているように見えるかもしれないフジロックだが、さて、どうなんだろう。確かに、主催者からは「来年はあります」と耳にしているし、今年も会場を離れるときに見たゲートには、その日程が発表されていた。しかし、その言葉の裏に「再来年はわからない」というニュアンスを感じていた。なにせ、異常とも思える円安のピークが開催期間中。ギャラの支払いはドル建てが原則なので、おそらく、海外からやって来た出演者に支払われる金額が想定よりも遙かに膨らんでいるはずだ。加えて、チケットのセールスも全盛期から比較したら、貧しかったと聞いている。チケットが値上げされているといっても、利益が出ているとは考えられない。

だからなんだろう、どこかで唐突にフジロックがなくなってしまうのではないかという危惧感は拭えない。なんの前触れもなく、消え去ってしまうような怖さも感じているのが正直なところ。でも、もちろん、そうなって欲しくない。なぜなら、想像できないのだ。年に一度帰る故郷がなくなることは。フジロックのおかげで知り合ったり、仲良くなった友人たちと再会できる機会が失われるのには耐えられないように思う。

初めてここに来た人達はどうだった? 同じように感じる? また、来年もやってきたいと思った? もし、そうでなかったら、フジロックの魅力が失せているってことなんだろう。もし、そうだったら、フジロックがこれでも他に類を見ない野外コンサートではなく、フェスティヴァルと呼ぶにふさわしい存在だということを証明してくれているようにも思う。でも、かつてのフジロックを取り戻したいという想いは変わらない。

今回、嬉しかったことのひとつは、会場で、かつてワールド・レストランと呼ばれる場所で中心となって動いてくれていたエチオピア人の仲間、ソロモンを見かけたこと。なんと7年ぶりに来た彼がなにを思ったか? ひょっとして、また、彼を核にワールド・レストランのような趣を復活させてくれないだろうかと期待してしまうのだ。そして、もうひとつ嬉しかったのが、何年ぶりだろう、戻ってきてくれたジーンズのリーバイス(Levi’s)。初期のフジロックでコンスタントにサポートしてくれていた彼らが戻ってきてくれた背景に、昔のスタッフが関わっていることに驚かされていた。

さて、そんな今年の会場内外での顛末を伝えてくれたのは以下のスタッフの数々。会場で一生懸命動いてくれた彼らに感謝して、そして、また、ここに集まってきたみなさんと再会できることを祈って、〆の文章を終えようと思う。ありがとうございました。

■日本語版
森リョータ、阿部光平、丸山亮平、あたそ、阿部仁知、イケダノブユキ、石角友香、梶原綾乃、三浦孝文、若林修平、Asakawa Maho、東いずみ、越川由夏、泉みや、Eriko Kondo、YAMAZAKI YUIKA、渡辺紗礼、こっこ、ヌー子、浅野凜太郎、井上勝也、エモトココロ、堅田ひとみ、粂井健太、古川喜隆、小林弘輔、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、HARA MASAMI(HAMA)、平川啓子、前田 俊太郎、松藤 万里子、ミッチ イケダ、宮田遼、安江正実、リン(YLC Photography)

■E-Team
Nina Cataldo、Jonathan Cooper、Park Baker、Sean Scanlan

■フジロッカーズラウンジ
mimi、obacchi、SEKI、yamato

■ウェブサイト制作&更新
平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一、坂上大介

■スペシャルサンクス
三ツ石哲也

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HEY-SMITH https://fujirockexpress.net/24/p_873.html Wed, 31 Jul 2024 07:11:22 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=873 今年12年ぶりにフジロックに出演したスカパンク・バンドHEY-SMITH(以下ヘイスミ)。昨年11月にリリースされた最新アルバム『Rest In Punk』は過去最高傑作と呼び声高く、今年9月にはUSインディーズレーベル「Bad Time RECORDS」からのリリースに伴ってUSツアー全18公演を敢行することが決まっている。

この最新アルバムを含め過去のアルバムからも満遍なく選ばれたセットリストのライブは、“Living In My Skin”からスタート。この曲は猪狩秀平(Gt/Vo)が初めて自分に対して書いた曲で、高らかに鳴り響くホーンの音色がファンのテンションを爆上げする。TVアニメ『東京リベンジャーズ』天竺編 のED主題歌にもなったアンセミックなメロディの“Say My Name”ではYUJI(Vo/Ba)が声高らかに歌い、“Fellowship Anthem”は新曲ながら既にライブ鉄板曲の風格を感じさせる。最高にテンション高まる流れの中、小雨が降っていてもしっかり暴れるオーディエンス!その表情は皆一様に楽しそうだ!

テンションが高いのはファンだけじゃない、もちろんバンドメンバーもだ。それは12年ぶりのフジロック出演に対する喜びもあるだろうが、本当のところは・・・その理由を猪狩がMCで語ってくれた。

猪狩「我々が所属してるレーベルの社長が、天神山時代からのフジロック皆勤賞なんですね。で、俺たちがどんなにデカいツアーとかアメリカツアーとかが決まってても、絶対フジロックに行っちゃうのよ(ファン笑い)。だから今日、12年ぶりに社長が(僕らの)ライブを観ております!(ファン大歓声)」

自ら所属するレーベルの社長もいじってしまうヘイスミがみんな大好きだ。そんな猪狩のMCから続いた“Summer Breeze”はそのキャッチーな歌ものソングに小雨で若干の蒸し暑さを感じるホワイトに爽やかで涼しげな風を吹かせ、「オイ!オイ!」のコールから始まった”We sing our song”ではヘッドバンキングとモッシュのループでホワイトのど真ん中に熱狂の渦を作り出した。

クライマックスに突入すると、メタルの重厚感とメロディックの爽快感を併せ持つ猪狩らしさ爆発のソングライティングが印象的なロック&パンクアンセム“Be The One”、ファンにいつもエネルギーをくれる初期アンセム“I’m In Dream”、そしてラストはもちろん“Come back my dog”だ。たくさんのファンの心を熱くさせるこの曲では、この日最大のサークルモッシュを生み出し、ホワイト・ステージに大きな熱を生み出し、50分間のステージを終えた。

<セットリスト>
01. Living In My Skin
02. Say My Name
03. Fellowship Anthem
04. Dandadan
05. Don’t Worry My Friend
06. Trumpet Session
07. Into The Soul
08. Endless Sorrow
09. Fog And Clouds
10. Radio
11. Inside Of Me
12. Summer Breeze
13. We sing our song
14. Be The One
15. I’m In Dream
16. Come back my dog

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キタニタツヤ https://fujirockexpress.net/24/p_890.html Mon, 29 Jul 2024 09:52:46 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=890 キタニタツヤという人間はとても興味深い。人間性、思想、背景、キャリア、視点・・・それらどれをとっても興味深い人間だと思う。言い換えれば特異でもあったりする。しかし、だからこそ、こんなにも共感や支持を得ているんだろう。彼の曲や言葉の意味を知ると、毎回得られる納得感がすごいのだ。そんな彼が一躍有名になったのは、2022年にリリースされた”スカー”(TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』OPテーマ)と、“青のすみか”(TVアニメ『呪術廻戦』懐玉・玉折 OPテーマ)の大ヒット。それらの実績を引っ提げ、昨年の紅白歌合戦に初出場、今年5月にはデビュー10周年記念として日本武道館での初ライブを成功させた。そんなキタニがフジロックのステージに初めて立つ。

ライブ前、リハで本人が出てきて曲を丸々1曲2曲やるアーティストをたまに見かけるがキタニもそのタイプだ。そこで演奏したのが代表曲の“ハイドアンドシーク”と“スカー”の2曲だった。リハとはいえファンにとっては嬉しい選曲に、ライブ本編への期待値はより高まる。スタート時間の16時になると、ハードビードなBGMにキタニタツヤとバンドメンバーが登場。ライブは、ヘヴィーなギターフレーズのイントロが印象的な“聖者の行進”からスタートした。いきなりハンズクラップがオーディエンスから湧き起こる。曲通してヘヴィーでダンサブルでダイナミックなアレンジがファンのロック魂に火をつける。アウトロからシームレスにTVアニメ『戦隊大失格』OP主題歌“次回予告”へと続いていく。アニメとのリンク度が高いこの曲だが、ライブではそのことを忘れさせるほど、ロックでテクノで最高にエキサイティングな曲に変貌を遂げ、ファンに新鮮な感覚を与えていた。続く“悪魔の踊り⽅”では、聴き手を強く扇動するような歌詞とロックサウンドで、そこにライブならではの強いビート感だったり、アシッド風なアレンジが効いていて、「オマエら踊れ!」と言わんばかりのあおりに、踊らずにはいられない。

短いMCを挟んで、ファンキーなベースイントロから始まったのは初期のライブ定番曲“Stoned Child”。イントロからループされるベースとサンプリング音から生まれるグルーヴに乗せられるように踊るオーディエンス。そこにキタニの髪を振り乱しながら叫び歌う姿も相まって、最高にダンサブルな曲になっていく。矢継ぎ早に“Moonthief”が始まると、マシンガンのように歌うキタニにヘヴィーなビートが乗って、よりダンサブルな雰囲気を作り上げる。

ライブ中盤に突入すると、キタニのソングライティングの幅の広さがより如実に表れてくる。四つ打ちダンストラックの“夜警”、ポップ/エモ/ヒップホップが融合したような初期の名曲“I DO NOT LOVE YOU.”、キタニのヴォーカルにアヴァンギャルドなアレンジが印象的な“PINK”、インダストリアルなサウンドにダウナーなポエトリーリーディングパートやラップパートのある“夜がこわれる”、そして自身の至らなさをエモーショナルなメロディに乗せて吐露した“⼤⼈になっても”と、バラエティに富んでいて聴いていて全く飽きない。であって、キタニタツヤの人間人生哲学と多面性という共通項はしっかり持っている。そこに彼の凄さがある。

そんなキタニ・ワールド全開のライブはまだまだ続く。“人間みたいね”では「ナイル・ロジャース風のファンキーなギターカッティング」と「アーバンな雰囲気のメロディ」という相反する要素の組み合わせからくる違和感すらも心地よく聴かせ、ファンキーなギターカッティングはそのままにテンポアップした“憧れのままに”では、先ほどのアーバンな雰囲気から一転シティポップ風なアップリフティングなトラックにオーディエンスは思いっきり踊らせた。

リハでの2曲も含め“ほぼ”ベストヒット的なライブは、怒涛のようなクライマックスを迎える。デビュー10周年記念ソングとしてリリースされた“ずうっといっしょ!”は彼の原点であるバンドサウンドを意識したストレートなロックソングで、ライブがもうじき終わってしまうという予感を抱きながら聴いているとどんどん没入していくのを感じる。畳み掛ける壮絶なアウトロで曲が終わると、キタニが「みなさんに会えてよかったです。また会いましょう」と感謝の言葉を告げると、ラストはキタニの押しも押されもせぬ代表曲となった“青のすみか”だ。キタニの押しも押されもせぬ代表曲となったこの曲は、彼がデビューしてから培ってきたモノが全て詰め込まれた集大成的な歌で、多くの人に響くべくして響いた曲だと思う。たとえそれが仮にアニメタイアップでなくてもだ。

冒頭に「キタニタツヤという人間はとても興味深い」と書いたが、それは彼の誠実な姿勢、リスナーにクリエイティブに真摯に向き合う正直な人間性がベースにあるからだ。“ずうっといっしょ!”の前のラストMCでキタニが口にしていたこと──

「自分はキタニタツヤとしてずっと活動していて、普段あまり音楽に触れたことのないような人で音楽にハマりそうな人たちに向けての『音楽の入り口』になりたくてアーティストになることを選びました。けど、ここ(フジロック)に来てる皆さんは、普段から音楽に触れている人たちだから、今日は自分がやりたいように楽しみながら演らせていただいてます。みなさんのおかげです。ありがとう」

── この言葉が全てを物語っていると思う。

キタニタツヤの躍進はまだまだ止まらない。近い将来、彼がグリーン・ステージに上がる、そんな光景が観たい。そう素直に思えるライブだった。

<セットリスト>
01. 聖者の行進
02. 次回予告
03. 悪魔の踊り方
04. Stoned Child
05. Moonthief
06. 夜警
07. I DO NOT LOVE YOU.
08. PINK
09. 夜がこわれる
10. 大人になっても
11. 人間みたいね
12. 憧れのままに(yama x キタニタツヤ cover)
13. ずうっといっしょ!
14. ⻘のすみか

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betcover!! https://fujirockexpress.net/24/p_893.html Sun, 28 Jul 2024 17:53:54 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=893 フジロック最終日。朝会場に向かっている道中、今日でフジロックが終わってしまう切なさと、これから観るライブに向けて不思議な高揚感を感じていた。向かっているステージはレッド・マーキー。これから目の当たりにアーティストは、昭和歌謡をベースに独自の世界観を作り出す、東京都調布市出身の柳瀬二郎(Vo/Gt)が立ち上げた、日高理樹(Gt)、吉田隼人(Ba)、高砂祐大(Dr)、白瀬元(Key)による5人組ロックバンドbetcover!!だ。

昭和の名曲、金井克子の“他人の関係”をBGMにして、サポートの松丸契(Sax)を含めたバンドメンバー、そして柳瀬が両手を上げながら登場した。プンプンに漂う柳瀬のバンマス感に、これから繰り広げられるbetcover!!のライブの様相予想図が頭の中に広がっていくようで興奮した。ちなみに服装は、全員がスーツスタイル。ジャック・ホワイトのソロ初期のライブでバンドメンバーも含め全員がスーツ姿だったことに影響され、このスタイルになったという。もしかして、ジャックの既存のブルースなロックの定義をぶち破るようなスタイルもまた、彼に影響を与えていたりするのだろうか・・・。

そんな想像はさておき、ライブは柳瀬のかき鳴らすアコギと日高による不穏なエレキギターのフレーズのイントロの“翔け夜の匂い草”からスタートした。日本人の琴線に触れる懐かしいメロディながらもアレンジはオルタナティブで、不穏さを演出する松丸のサックスの音色や、唐突に訪れる日高の激しいギターリフも相まって、日本人にしか感じ得ないであろう昔懐かしい日本の情景の匂いみたいなものが頭の中に広がる。続く“狐”、メロディは昭和歌謡的ながらもアレンジは思いっきりオルタナティブ・インディー・ロック風でエモーショナルな雰囲気を醸し出していた。

曲を重ねるごとに、原曲はその形をどんどん変えていくbetcover!!のライブは、さらにつかみどころのない、まるで漂う煙を掴みに行くような展開を見せていく。カオティックな演奏と平然と歌う柳瀬との間にあるコントラストがえげつない“壁”、「ばかやろー!」という叫びから始まる初期アークティック・モンキーズのように畳み掛ける柳瀬のヴォーカルが印象的な“バーチャルセックス”から、バンド紹介を挟んで“母船”、“不滅の国”と続いていく。

ライブも終盤に差し掛かると、いよいよ曲構成すらも歪みながら変化していく。狂気を感じる白瀬のキーボード伴奏をバックに2番のAメロ歌詞から始まった“炎天の日”の展開は、原曲のメロディを認識できるレベルギリギリのラインを攻める。そんな攻めるアレンジは、まさにライブならではで、ファンからは叫びにも似た大歓声が上がっていた。ラストは“超人”。「原曲通り」という定石を完全に無視したアレンジは、オルタナティブ・ロックでもありポスト・パンクでもありハードコア的でもあった。アウトロで佇む柳瀬を尻目に高砂の超ハードなドラムで終焉を迎えた。

betcover!!、約40分のステージは“翔け夜の匂い草”から“炎天の日”まで怒涛のように駆け抜けていったライブで、そこにはまるでbetcover!!の美学が詰まっているようだった。

<セットリスト>
01. 翔け夜の匂い草
02. 狐
03. 幽霊
04. 壁
05. バーチャルセックス
06. 母船
07. 不滅の国
08. 炎天の日
09. 超人

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NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS https://fujirockexpress.net/24/p_851.html Sun, 28 Jul 2024 16:00:29 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=851 昨年12月に行われたノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(以下NGHFB)のジャパンツアーは、東名阪4公演全てがソールドアウト。新たなフェーズに突入しつつあるノエル・ギャラガー(Vo/Gt)の現在はミュージシャンとしても、ソングライターとしても、(何度目かの)円熟期に入っている。そのキーとなっているのは、最新アルバム『Council Skies』のテーマ「原点回帰」だ。昨年の単独ライブは、直近の曲から始まりオアシス時代まで時を遡るようなセットリストになっていて、その流れはまさに“原点”に“回帰”していく物語のようだった。そして、この日のヘッドライン・ステージもまた「原点回帰」なライブだった。

21時10分、ジョン・ポール・ジョーンズ(レッド・ツェッペリン)の“4-Minute Warning”をBGMにメンバーたちが入場。メンバーは、ノエルをはじめ、元オアシスのゲム・アーチャー(Gt)とクリス・シャーロック(Dr)に、同じく元オアシスのセッション・ピアニストだったマイク・ロウ(Key/Pf)、そしてNGHFB初期からツアーに参加していた元ザ・ズートンズのラッセル・プリチャード(Ba/Cho)。さらには前回のツアーから参加しているジェシカ・グリーンフィールド(Key/Ma/Cho)に、サポートのキーボーディスト1名と、コーラス隊が3名の10人編成。加えて、曲によってはホーン隊3名も登場するので最多13人編成、これはおそらくNGHFB史上最多人数の編成だ。

そんな豪華絢爛なバンド編成によるライブは、『Council Skies』からドラムマシーンのビートとダークさが感じられる“Pretty Boy”でスタート。続く最新アルバムのタイトルトラックでもある “Council Skies”はノエルにとっては新機軸のサウンドデザインで、トロピカルなリズムにビートとサウンド、そしてそこに生まれる緩やかなグルーヴが心地良い。NGHFB以降のノエル節全開の“We’re Gonna Get There in the End”や“Open the Door, See What You Find”からは、どちらもブリットなグッドメロディで、どうしても体を揺らさずにはいられない。

と、ここまで『Council Skies』からの曲が続いたが、ここからは新旧そして緩急のある展開をみせる。疾走感が心地よいギターロックの“You Know We Can’t Go Back”に、しっとりとしたバラードソングの“We’re On Our Way Now”と続き、“In the Heat of the Moment”ではノエル流ダンス・ポップ・チューンにオーディエンスを踊らせた。NGHFBも原点回帰するならば”If I Had A Gun…”や “AKA… What a Life!”も外せない。”If I〜”ではシンガロングも起き、”What a Life!” ではしっかりオーディエンスを踊らせ、改めて初期曲の人気の高さを感じさせる。ノエルとマイクだけを残し、他のメンバーが退出すると、まるでオーディエンスの昂った気持ちを落ち着かせるように、改めてノエルの天才っぷりを思い知らされる超名曲“Dead in the Water”をアコースティックスタイルで広大なグリーン・ステージに鳴り響かせる。曲が終わると、自然発生的に大歓声と拍手が湧き上がった。

この日のノエルはいつも以上にMC少なめで、口に出しても「ハロー」や「センキュー・ベリー・マッチ」くらいだったのだが、ひとつだけ印象的なやり取りがあった。客席最前列にサングラスをかけ “リアム立ち” をしていたファンに対して、「お前は(リアムの)スパイか?」といつものプチ毒舌を放っていた。そのあまりにノエルらしい毒舌っぷりに、特に機嫌が悪いわけじゃなかったんだなと少しホッとした。こういう瞬間はノエルのライブならでは。

しばしの静寂を挟み、みんな待ってましたのオアシスタイムに突入する。いつものライブならオアシス曲は演っても3,4曲くらいなのだが、今回のツアーでは全く惜しまず、しかも畳み掛けるように披露した。まずはB面曲集から“Going Nowhere”と“Talk Tonight”。“Going Nowhere”は今回のツアーで多くの会場のセットリストに組み込まれているのだが、書来ているのが必ずしもファンだけではないフェスティバルにおいては、初めて聴いたファンも多かったかもしれない。そんなファンへのプレゼントか、13人編成の強みを活かした新アレンジによる “Whatever”から始まり、“Half The World Away”、“The Masterplan”、“Little By Little”とシンガロング連発の時間はファンにとって最高の時間だった。本編ラストはおそらく日本初披露となる、同郷マンチェスターのポスト・パンクバンド、ジョイ・ディヴィジョンの名曲“Love Will Tear Us Apart”で締めた。

まだまだ物足りていないオーディエンスから、アンコールを催促するハンズクラップ音がグリーンの空間を充満する。間も無くメンバーたちが再登場すると“Stand By Me”を披露。全力でシンガロングしきったという満足感が残る中、ノエルのアコギの音と共にアンビエントなイントロで始まったのが“Live Forever”。グリーン・ステージ全体に響き渡る美しいアレンジによるサウンド、包み込むようなノエルのヴォーカル、無数の羽が舞う背景映像、それらがすべて合わさって、グリーンをスペシャルな空間に仕立てあげた。

ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ、9年ぶりのフジロックでのライブは、過去2回の出演時よりも、穏やかで温かくて優しいライブだった。そのラストを飾るのは、ロック界を代表するアンセム“Don’t Look Back In Anger”だ。オアシスファンにとって、ファンの皆と共に大合唱することの幸せを教えてくれたのはこの曲で、その曲がいつしか「オアシス/ノエルの歌」でなく「みんなの歌」になったことの喜びは、ファンにとっての大事な宝物である。だからこそ、ここ苗場で僕らは全力で歌うんだ───と、そんなことを再認識できたこの日のライブは、僕らにとっての「原点回帰」だったような気がする。

<セットリスト>
01. Pretty Boy
02. Council Skies
03. We’re Gonna Get There In The End
04. Open the Door, See What You Find
05. You Know We Can’t Go Back
06. We’re On Our Way Now
07. In the Heat Of The Moment
08. If I Had A Gun…
09. AKA… What a Life!
10. Dead In The Water
11. Going Nowhere (Oasis cover)
12. Talk Tonight (Oasis cover)
13. Whatever (Oasis cover)
14. Half The World Away (Oasis cover)
15. The Masterplan (Oasis cover)
16. Little By Little (Oasis cover)
17. Love Will Tear Us Apart (Joy Division cover)
─ENCORE─
18. Stand by Me (Oasis cover)
19. Live Forever (Oasis cover)
20. Don’t Look Back in Anger (Oasis cover)

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FONTAINES D.C. https://fujirockexpress.net/24/p_889.html Sun, 28 Jul 2024 11:05:23 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=889 アイルランドのダブリン出身のポストパンク・バンド、フォンテインズ D.C.。フジロック’22の出演が無念のキャンセルとなった彼らが、遂に苗場のステージに立つ時がきた。昨年2月に東京渋谷にあるSpotify O-EASTでの初来日公演は期待を裏切らない内容で、高い熱量を持ってオーディエンスを満足させた。それも加味すると、今回のフジロック初ステージは期待が高まるばかりだ。

夕方のレッド・マーキーには早い時間から熱心なファンが集まっていて、すでに熱気が漂っているかのように暑い(熱い)。2019年リリースのデビューアルバム『Dogrel』からコンスタントにアルバムをリリースしてきた彼ら。1st『Dogrel』と2ndアルバム『A Hero’s Death』、そして3rdアルバム『Skinty Fia』までをプロデューサーのダン・キャリー(スクイッド、ブラック・ミディ、ウェット・レッグ等)と共に制作していたが、8月にリリースされる新作『Romance』では相棒をジェームス・フォード(アークティック・モンキーズ、ゴリラズ、デペッシュ・モード等)に変え、さらなる新境地を開こうとしている。そんな期待からくる熱が会場に充満していたんだろう。

新作からライブ初公開の“Romance”から始まったライブは、前述のような「進化」を遂げていく彼らのサウンドに満ち満ちていた。早くもライブの定番曲となった3rdからの“Jackie Down the Line”と“Big Shot”。彼らのサウンドの原点を感じさせる初期アンセム“A Hero’s Death”に“A Lucid Dream”と演奏される。そこから感じるのは、1stや2ndの反逆的なパンクの感性むき出しなバンドサウンドから、よりグランジ色の強いディストピアなエレクトロニカ&ヒップホップ風のリズムの変化、そしてドリーミーなスロウダイヴ風なサウンドへと進化だ。そこには、3rdまでのプロデューサー、ダン・キャリーと作った「似通った作品は二度と作らない」という取り決めがあり、それが今も生きているという証拠である。

新作発売前に新たな進化を小出しにしていく彼らが、今日のライブで締め括ったのは、アイルランドの文化や背景が色濃く表れたポストパンクの“I Love You”、新作からノスタルジックでメランコリックなメロディの“Favourite”、そして同じく新作からのバンドにとっての新機軸サウンドな“Starburster”で幕を閉じた。

今回のライブを観て、真っ先に想像したこと、それはグリーン・ステージ、もしくはホワイト・ステージのトリに彼らが上がっているその未来図だ。

<セットリスト>
Romance
Jackie Down the Line
Televised Mind
Roman Holiday
Big Shot
A Hero’s Death
Nabokov
A Lucid Dream
Big
Boys in the Better Land
I Love You
Favourite
Starburster

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GIRL IN RED https://fujirockexpress.net/24/p_863.html Sat, 27 Jul 2024 13:59:09 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=863 ノルウェー出身のシンガーソングライター、ガール・イン・レッドことマリー・ウルヴェン。彼女の初フジロックはホワイト・ステージのトリという重要なポジションだ。デビューしてまだ数年の新人がステージ・ヘッドラインを務めることは極めて稀だが、結論から先に言うと、彼女はオーディエンスのハートをガッツリ鷲掴みにして帰っていった。ラフでカジュアルな服装で登場したマリーと、黒子的な存在のバックバンドメンバー5人を従えて繰り広げられたライブは、カラフルでありながらもモノクロな部分もある「人間らしさ」を表現するようなステージだった。

アグレッシヴにハードロックやカントリーポップを行き来する“DOING IT AGAIN BABY”から始まったライブは、ノイジーなアレンジが効いたインディーロックな“bad idea!”と続き、初っ端からオーディエンスを上げまくる。ドリーミーなポップソング“Girls”ではシンガロングも湧き上がり、早々にホワイト・ステージの雰囲気は出来上がっていた。

そこまでライブのテンションを引き上げていたのは、もちろん楽曲やパフォーマンスの素晴らしさもあるが、一番はマリーの人柄の良さによるところが大きかったような気がする。彼女が持つユーモアやおちゃらけ、ほんの少しおバカな一面。それら彼女のあらゆる顔は「ええい、楽しんでやれ!」と言う圧倒的なポジティブと繋がっている。例えば、MCタイムにファンと取り留めのない雑談を交わしてみたり、曲の前にキーボードの準備を始めるが操作法を忘れておどけてみたりと、見ていてほっこりするような空気感があるのだ。一方で、ライブになると彼女の明るさにアグレッシヴさが加わり、凄まじくエネルギッシュなステージングとして魅せていく。ステージ上を縦横無尽に動き回ったり、その場所に止まっていたとて飛んだり跳ねたり踊ったりと、とにかく見ていて楽しい。

そんな彼女だが、最初からポジティブだったわけではない。マリーはレズビアンで精神疾患を患っていることであることを公表している。彼女の中にあり続けた複雑な思いが、どんどん昇華されていくプロセスを表現しているのがこの2枚のアルバムなのだが、そのことをライトに曲で伝えていくこのプロセスが今日のライブには詰まっていた。「誰かと愛し愛されるために、信頼して、心を開き、お互いの壁を壊そう」と明るく歌う“Girls”にはじまり、彼女の中にあるキュートさや愛らしさ、その裏腹に存在している負の感情、それらが心の中でせめぎ合っていることを、不穏な風合いのエコーが鳴り響くビターな曲調で表現した“Ugly Side”。そして混乱状態の自身をコントロールしたいともがく姿を赤裸々に語る歌詞を中毒性のあるビートに乗せてラップした“Serotonin”と、作る楽曲を通してとことん自分と向き合っていく過程を経て、彼女の心のうちは変わっていったのだ。

そのプロセスをひたすらに明るくポップにパフォーマンスしていくマリーは、オーディエンスにハッピーを振りまいていった。そう、セカンドアルバムのタイトル『I’m DOING IT AGAIN BABY! (もう一回やるよ、ベイビー!)』のマインドのように。そしてそんなポジティブなマインドは、80s風のダンサブルなロック・チューン“You Need Me Now?”で大解放される。極め付けは、ラストのマリー’s 片思いソング “i wanna be your girlfriend”だ。マリーの指示で『モーゼの十戒』のようにホワイトのオーディエンスを左右に分け、その中に突入したマリーの号令と共にコーラスパートでマリーも巻き込み大モッシュが発生。これ以上ないであろう、マリーとファンとのコミュニケーションからは、確かな絆や愛を感じたし、かつてSad Girlだったマリー・ウルヴェンと言う名のひとりの女の子が、自らを変えHappy Girlとして、皆にハッピーを届けていた瞬間だった。

<セットリスト>
01. DOING IT AGAIN BABY
02. Bad Idea!
03. Girls
04. I’ll Call You Mine
05. Body And Mind
06. I’m Back
07. Pick Me
08. Ugly Side
09. October Passed Me By
10. We Fell in Love In October
11. Phantom Pain
12. You Stupid Bitch
13. Serotonin
14. Too Much
15. A Night To Remember
16. midnight love
17. Rue
18. dead girl in the pool.
19. You Need Me Now?
20. i wanna be your girlfriend

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CHRISTONE “KINGFISH” INGRAM https://fujirockexpress.net/24/p_915.html Sat, 27 Jul 2024 12:14:56 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=915 クリストーン“キングフィッシュ”イングラム(以下キングフィッシュ)とはどんなアーティストなのか?──それを知った瞬間、今年のフジロックのルーツミュージック枠は安泰だと確信した。それは、彼が第64回のグラミー賞で「最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム賞」を受賞した実績もあるが、それよりも大前提として彼のライブ・パフォーマンスが最高に“ブルース”してるからだ。

ちなみに彼はこのステージの前、初日の深夜のクリスタル・パレス・テントに出演しているのだが、そこに至るまでの彼のタイムスケジュールがまず凄かった。当日日本に到着すると、ホテルにも向かわず会場に直行。会場に到着すると、着の身着のままパレスのステージに上がり、ライブして、パレスに大歓声を生んだという怒涛のスケジュールをこなしていたのだ。そんな話を聞いて期待値が上がらないわけがない!僕は足早にヘブンへと向かった。

前日のパレスと同じく「It’s KINGFISH time!」というMCからイントロBGMがスタートし、フュージョン風のインストをバックにキングフィッシュが登場!その風貌はいわゆるぽっちゃりさん。超太めのUSEDデニムを履き、超オーバーサイズの白いTシャツを着ていた。身長はそんなに大きいという感じではない。故に大きな圧迫感みたいなものは全く感じなかった。むしろ彼の温和な表情も相まって愛らしさすら感じる。

そんな彼の初っ端、1曲めはファンキーなメロディとヴォーカルが印象的な“Midnight Heat”。注目のギターソロに突入すると、目を瞑りながら恍惚の表情を浮かべつつギターを弾くキングフィッシュ!そう!こういうブルースギターが聴きたかったんだ!と思わず歓声を上げてしまった自分。続く“Freak Out”は一転してクラシカルなブルース・ソング。ここではブルージーなヴォーカル回しとギタープレイが決して派手ではないものの、聴いていて逆にそこがタマらなく気持ちいいところだ。

メンバー紹介を挟んだ3曲目“Hard Times”では王道なデルタ・ブルースを披露するのだが、ここでキングフィッシュ以外のメンバーに釘付けになってしまった。それはデショーン・アレクサンダー(2017年に出演したマーカス・キング・バンドのキーボーディストも兼任)のキーボードプレイだ。オルガンソロで鍵盤をまるでスラップ双方のように弾き(!)、さらにキングフィッシュとの掛け合いのパートでは、ステージピアノ(nord stage 2 Ex)に備えられたモジュラーシンセ機能を使い、聴いたことのないブルースサウンドを生み出していた。キングフィッシュのギター、デショーンのシンセと両軸でグルーヴィー!これは最高だ!

彼のライブの曲は大半がオリジナル曲だ。作曲はキングフィッシュが参加していて、シンガーソングライターとしても非常に優れていることがわかる。そんな中で今日カバーされたのが、2000年代に活躍したブルースギタリスト兼シンガーソングライターであるマイケル・バークス(2012年死去/享年54歳)の”Empty Promises”だ。ブルースギタリストでありシンガーソングライターでもある彼との共通点を持つキングフィッシュが歌う”Empty Promises”は、基本オリジナルの風合いを踏襲しつつも、ギターソロパートでは怒涛のようなギタープレイで一気にキングフィッシュ色に染め上げる。そんな共存共栄なアレンジにキングフィッシュのマイケルへのリスペクトを感じた。

そして、ライブは後半に突入し、ここからラストまでオール・クライマックスで駆け抜ける!まず、ハイパーファンキーな”Not Gonna Lie”では、キングフィッシュとデショーンそしてポール・ロジャース(注:バッド・カンパニーのポール・ロジャースではありません)によるジャムセッションが行われ、ここでポールのハード&ヘヴィーなグルーヴを産むベースが炸裂した。曲のアウトロになると、突如キングフィッシュがステージを降り、客席へと突入、セキュリティに守られながらヘブンのど真ん中に到着すると、そこで最後まで弾ききった。キングフィッシュ色に染まりまくっているオーディエンスのど真ん中で、長尺のインストゥルメンタル曲”Mississippi Night”を約10分にわたって弾きまくった。ステージに戻って、ラストは”Long Distance Woman”。ハードロック調なギターから始まったこの曲でヘヴィにギターを鳴らしソウルフルに歌いまくると、ジミヘンの”Purple Haze”のイントロギターフレーズを披露!最後は3人で再びセッションを披露して1時間のステージを終えた。

”ブルースとはなんぞや”的な話になった時、「ブルースはジャンルじゃない、自由に定義できるもの」的な話をよく聞くし、自分もするのだが、キングフィッシュはまさにその道を真っ直ぐに進んでいる存在なんだなと、ライブを観て感じた。それは一般的なブルースのイメージとは少し離れた部分はあるかもしれないけれど、自分のブルースを自由に定義しクリエイトしている彼は間違いなくブルース・ミュージシャンだ。

<セットリスト>
01. Midnight Heat
02. Freak Out
03. Hard Times
04. Empty Promises (Michael Burks cover)
05. Not Gonna Lie
06. Mississippi Night
07. Long Distance Woman

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THE LAST DINNER PARTY https://fujirockexpress.net/24/p_849.html Sat, 27 Jul 2024 08:10:21 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=849 ロンドン出身の5人組フィメール・ロックバンド。ザ・ラスト・ディナー・パーティー(以下TLDP)は、まるで熟成されたワインのようなバンドだ。神秘性や退廃性、ダイナミズムに荘厳さなど、音楽というものが持ちうる全ての要素を持ち合わせている。英BBCが選ぶ、その年で最も注目すべき新人アーティストをピックアップする『BBC Sound Of 2024』やブリット・アワードの『ライジング・スター』など、イギリスの権威あるアワードでも軒並みトップを獲得し、今世界で最も注目されていると言っても過言ではないTLDP。

デビューアルバム『Prelude to Ecstasy』のオープニングを飾る、壮大なシネマティック・インストゥルメンタル “Prelude to Ecstasy” が流れ始めると、メンバーたちが入場、それぞれが定位置に立つと、さらにTLDPの世界観がまずます深まっていった。メンバーはステージ下手から、オーロラ・二シェヴシ(Key/Org/Pi/Syn/Cho)、エミリー・ロバーツ(Gt/Mand/Fl/Cho)、アビゲイル・モリス(Vo)、リジ・メイランド(Gt/Fl)、ジョージア・デイビーズ(B/Cho)のメインメンバーが横並びに並んでいて、後方にはサポートドラマーのキャスパー・マイルズ(Dr/Per)がしっかり支える編成。

グリーンのステージ上はあっという間にTLDPの世界観に染まっていく。オープニングトラックの荘厳なイントロから始まる “Burn Alive” は、彼女たちにとっての最初の声明のような曲である。《あなたの炎の中に付んだままの私を/焼いて生きたまま焼いて》と歌われる一節には、《私の痛みや苦しみを聖火で燃やし尽くして、芸術に昇華する》というバンドの所信表明が込められている。そんなこの曲を堂々とパフォーマンスするメンバーたち。その中でも際立っていたのは、フロントウーマンのアビゲイル・モリスだ。シリアスなオペラとリズミカルなポップ交互に歌われた “Ceasar on a TV Screen”における、彼女の王もしくは女王然とした佇まいと立ち振る舞いは、シンガーとしてはもちろん表現者としても圧倒的な存在感を放っていた。

曲が終わり、シリアスな空気が充満する中、そんな雰囲気を一変させたのが、ベースのジョージアの日本語MCだった。「みなさん、こんにちは!大丈夫ですか?私たちはラスト・ディナー・パーティーです!」と、カタカナ表記にする必要がないぐらい流暢で、その流れのままメンバーを1人ずつ日本語で紹介していった。その後のMCでも、彼女たちが思っていることをちゃんとした日本語で語っていて、ここから感じた驚きは、TLDPのパブリック・イメージをいい意味で更新してくれた気がする。

TLDPのライブはまだまだ始まったばかりだ。ここ10年間のトレンドから逆行するかの如く、とても過剰に装飾的で、且つ歪な美しさを持つ彼女たちのアート・ロック『Prelude to Ecstasy』は、これら要素がリバイバルするキッカケと大いになりうる名盤だ。ここからさらに、本アルバムの世界が次々と披露されていく。母親のことを思い浮かべながら女性性の抑圧を切ないメロディに乗せて歌う “The Feminine Urge” に、ゴスペルチックなコーラスのイントロから始まったローファイなロック “Second Best”。そして、美しくも切ないメロディで歌われる「どうしようもないラヴソング」の “On Your Side”と続き、どっぷりと彼女たちの世界観に浸かり込んでいくオーディエンス。曲中曲外問わず湧き上がるのは簡単な叫びと称賛の声ばかり。

“Sinner” では原曲はニューウェイブ調ながらもライブバージョンはかなりヘヴィーなハード・ロックなアレンジになっていて、ファンの高揚感をさらに煽り上げていった。終盤に入ると、ブロンディの名曲 “Call Me” のカヴァーや、ダークでヘヴィな雰囲気とコーラスパートが壮大が双璧をなす “My Lady of Mercy” と続き、ラストはTLDPのファーストシングルにして最初のアンセム “Nothing Matters”だ。バロック・ポップ、グラム・ロック、ゴス、ポスト・パンクなど──彼女たちの音楽を構成するアート・ロックの要素が全て詰まったこの楽曲のオーディエンスは一斉に《And I will fuck you like nothing matters(何も問題ないみたいに、あなたをファックする)》と大合唱し、歪な多幸感をもたらし、約1時間のステージをやり切った。

このあとメンバーは、息つく暇もなく次のフェスに出演するために苗場を後にしたそうだ。デビュー直後にして最高に注目を浴びている今だからこそ、世界中のステージをさらに経験し、より世界へと羽ばたいてほしいと心からそう思う。

<セットリスト>
01. Burn Alive
02. Caesar on a TV Screen
03. The Feminine Urge
04. Second Best
05. On Your Side
06. Gjuha
07. Sinner
08. Portrait of a Dead Girl
09. Mirror
10. Call Me (cover)
11. Big Dog
12. My Lady of Mercy
13. Nothing Matters

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US (Acoustic Live) https://fujirockexpress.net/24/p_1032.html Sat, 27 Jul 2024 07:39:39 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=1032 USのアコースティックライブを観るため、10分ほど前にGANBAN SQUAREに着いたのだが、その時点でほぼ満杯状態だった。前夜祭昨晩のパレスでのステージが話題になったこともあってか、すでに立って待っているファンも多かった。

GANBAN SQUAREのMCの紹介から、メンバーたちが登場し、それぞれのポジションでセッティングを始めるのだが──「ん?何かが違うぞ?」そう、ハーモニカ担当のヒルヴォネン兄弟の弟、パン・ヒルヴォネンがセンターポジションに立っているではないか!前夜祭及びパレスでのステージではステージに幅があるため、カホン担当のレーヴィ・ヤムサ(バンドセットではドラムス)以外、全員前方ポジションで横並びになって演奏していたが、GANBAN SQUAREは横幅がないため、4人横並びで立てなかったのだ。と、それが理由かどうかはメンバーのみぞ知るところだが、これが結果的に凄まじいパフォーマンスを生むことになる。

パンとレーヴィ以外のメンバーは、それぞれアコースティック・ギターとアコースティック・ベースを手に抱え構えると、ライブは“Black Sheep”からスタートした。初っ端からガツガツにギターをかき鳴らすテオ・ヒルヴォネン(Vo/Gt)とマックス・ソメルヨキ(Gt/Vo)。それはまるで賑やかなパブでお客さんの前で演奏するパブ・ロックのようだ。そんな超アグレッシブなアコースティックセットの主役はなんと言っても、ハーモニカ担当のパンだろう。バンドのセンターポジションに立ち、ブルージーで超アグレッシヴなハーモニカを吹きながら、華麗なステップでお客さんの目を釘付けにする。周りのメンバーの演奏ももちろん超アグレッシヴなモードなのだが、バンのその存在感が凄すぎた。

以前フジロッカーズ・オルグで行ったインタビューでバンはプロパーなハーモニカ担当を務めることに関して、こう語っている。

バン「僕らは50年代から60年代のマディ・ウォーターズのバンドとか、最近のバンドだとアラバマ・スリー(1995年にデビューした大所帯バンドでアシッド・ハウスとアメリカン・フォークを融合したようなサウンドが特徴的)とか、キング・ギザード・アンド・リザード・ウィザード(2019年のフジロックに出演した7人組サイケデリック・ロックバンド)が使われてるハーモニカの演奏がクールで凄く好きなんだ。あとは、ハーモニカのことを『パンク・サックス(Punk Sax)』と呼んでる人なんかもいたりして、これは僕らの音楽にピッタリだなと思ってね」

このことを思い出しながら、センターで壮絶にハーモニカを吹き華麗なステップを踏む彼の姿を見ていると、ますますバンのかっこよさが際立って見えてくる。

約20分という短いステージは本当にあっという間だった。このバンの『パンク・サックス』っぷりを見てしまうと、明日のレッド・マーキーのステージがますます気になって仕方ない。

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