“阿部仁知” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '24 | フジロック会場から最新レポートをお届け https://fujirockexpress.net/24 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Tue, 13 Aug 2024 04:03:22 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.6 あれもない、これもないフジロック https://fujirockexpress.net/24/p_7583.html Fri, 09 Aug 2024 07:18:03 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=7583 「おかえり!」と声をかけると「ただいま!」と応えてくれる……。前夜祭のレッド・マーキーにやって来てくれたみなさんと、そんな挨拶を交わして集合写真を撮影し始めたのは、2007年ではなかったか。初めてやったときには、オーディエンスがどう応えてくれるか、全くわからなくて、はらはら、ドキドキだったんだが、ものの見事にほぼ全員から「ただいま!」と返ってきたときにはめちゃくちゃ嬉しかった。フジロックが、あるいは、苗場が、年に一度、帰省するふるさとのようになっているのを実感したのは、この頃からだったかもしれない。

あれからすでに17年、相も変わらずそんなことを続けている。なにはともあれ、みんなの幸せな顔を見るのが嬉しいからだ。苗場音頭での盆踊りが一段落して、花火が上がったあと、レッド・マーキーの入口のテープがカットされると、この1年間、フジロックを待ちわびていた人達が、文字通り、堰を切ったように雪崩れ込んでくる。そして、DJ MAMEZUKAの絶妙な選曲で回されるレコードからあふれ出る音の洪水をかぶる彼らの幸せな表情ったら……ありゃあしない。それに魅入られた関係者や噂を聞きつけた出演者までもが、ステージからその光景を記録しようとカメラを構えている。どうやら、運営本部でもその様子が映像で確認されているようなのだが、ちっぽけなモニターで見るのと、現場にいるのとでは大違い。実際にそれを目の当たりにしてほしいと呼び出したのが、昨年までグリーン・ステージを担当していた、主催者スマッシュの新社長、佐潟氏。それに応えてわざわざやって来てくれた彼が「確かに、そうだね。実際に見ると……」と、口にしてくれたのが嬉しかった。

加えて、今年はステージ袖に腰をかけて、最初のバンド、USを待ちわびていたのが、フジロックを生み出した日高大将。言うまでもなく、彼の写真をフィーチャーして2021年に制作した「Wanted(指名手配)」Tシャツには「彼が最前線に戻ってほしい」という願いが込められていた。かつてfujirockers.orgが作ったTシャツで、これが桁違いのセールスを記録したのはなぜか? 多くのフジロッカーがそんな思いを共有していたからに違いない。嬉しいことに、昨年はクリスタル・パレスやどん吉パークに彼が出没。体調がすぐれないと耳にしていたにもかかわらず、今年はレッド・マーキーからグリーン・ステージにも姿を見せている。しかも、彼が惚れ込んだというUSのライヴを楽しんでいる姿を目撃したのは少なくとも2回。ひょっとしたら、それ以上足を運んでいたのかもしれない。

コロナ禍以降、なかなか本来のフジロックが戻ってこないことに苛立っているフジロッカーが多いことは百も承知だ。それでも、ここにいるだけで幸せを感じていた。奥地のカフェ・ドゥ・パリもストーンド・サークルもない。ジム・ウェストを中心に集まってきたDJたちがお気に入りの音楽を楽しむブルー・ギャラクシーは復活したものの、あの周りにあったワールド・レストランは見る影もない。昔からのフジロックを知っている人間にとってみると、かなり寂しい景色にも映る。それでも、「なにやら幸せ」な自分がいるのだ。どこかで読んだ記事に「フジロックで飲むビールがめちゃ旨い」というのがあったんだが、実にその通り。なにを食っても、なにを飲んでも、ここにいることでその全てが格別なものになっているのに気付くのだ。

何度もやってきている常連にとって、フジロックは盆と正月が一緒になった、里帰りのようなもの。懐かしい友や仲間に再会できる場所でもある。年に一度、ここでしか再会しない友人だって珍しくもない。それでも、どこかで同じような世界を引きずりながら生きていることを互いに確認したり、旧交を温めることになる。しかも、初めて出会っても、どこかで繋がっているような感覚に陥ることも珍しくはない。そして、この1年を振り返りながら、あ〜でもない、こ〜でもないと会話が続いていくのだ。

この1年でフジロックに馴染みのある人たちもこの世を去っている。そんな仲間やアーティストのことが頭をかすめるのも仕方がないだろう。そんなひとりがチバユウスケ。今年、1998年の「地面が揺れた」伝説のフジロックから、スタッフが記録し続けた彼の写真をフジロッカーズ・ラウンジで展示したのは、そんな勇姿が我々に焼き付いていたからだろう。土曜日にクラフトワークが、昨年亡くなった坂本龍一への敬意を示すように「戦場のメリー・クリスマス」を奏でて、「Radioactivity」への導入部のように使ったのが話題になっているが、彼も苗場に姿を見せたアーティストのひとりだった。

Photo by MITCH IKEDA

フジロック・エキスプレスの更新作業に使う本部テントの準備と取材活動のために、精鋭スタッフと共に苗場入りした火曜日、新たな訃報が飛び込んでいた。作業を終えた夕方、UKロックの源流と言っていいだろう、ジョン・メイオールが亡くなったことを知る。ご存知の方も多いだろう。彼の次男が、フジロックの第1回目から最重要スタッフとして行動を共にしてきたスマッシュUKのジェイソンであり、幾度となくDJとして、あるいは、ザ・トロージャンズというバンドを率いて出演してきたギャズは長男。いわば、ふたりともフジロックを語るときに欠かすことができない人物となっている。彼らにどんな言葉をかければいいのか……、かなり戸惑っていた。実の父親が他界したのだ。彼らが現場を離れても誰も文句は言えないだろう。が、ジェイソンは黙々とフェスティヴァルの準備に奔走し、少し遅れてやって来たギャズには予定通りにツアー続行することを告げられる。

規模で言えば、比較の対象にはならないことは百も承知なのだが、フジロックを触発することになった英国のグラストンバリー・フェスティヴァルに繋がる不思議な縁がメイオール親子かもしれない。後者の主催者で会場となる農場の主、マイケル・イーヴィスが大きな影響を受けたのは1969年に開催されたバース・ブルース・フェスティヴァル。そこで演奏したジョン・メイオールとブルース・ブレイカーズを見て、「自分もフェスティヴァルをやりたい」と思うに至ったと。今ではその中心人物として全てを仕切っている末娘、エミリーが口にしている。しかも、そのライヴのステージ裏にいたのが、まだまだガキンチョだったギャズとジェイソン。ずいぶんと大人になった彼らがフジロックで最もフェスティヴァル的要素を凝縮したパレス・オヴ・ワンダーからブルー・ギャラクシーの顔のような存在となっている。

1970年に始まったグラストンバリーは今年で54年目となり、1997年に始まったフジロックは、ちょうどその半分の27年目。苗場での開催が始まった1999年から25年の節目となることが今年は話題になっているのだが、フジロックのルーツと言ってもいい、アトミック・カフェ・ミュージック・フェスティヴァルが産声を上げたのは1984年と、40年前にさかのぼる。というので、あの時、スタッフとして関わった身として、今年はジプシー・アヴァロンで続けられているアトミック・カフェのステージに立って、当時の話をしている。

あれから、とてつもない時間が過ぎ去ったように思う。その間に多くの友達や仲間に関係者がこの世を去り、フジロックが始まった頃にはまだ40代そこそこだった筆者も、すでに高齢者となっている。今年、グラストンバリーの主催者、マイケルが車いすに乗ってザ・パークと呼ばれるステージに姿を見せている一方で、フジロック生みの親、日高大将は杖を片手に前夜祭のレッド・マーキーやグリーン・ステージに立っている。かつてのようにジープで会場内を走って、動き回っていた彼らを見られないのは残念だが、世界の西と東で目撃したこの光景は彼らの想いがそのままフェスティヴァルとなっているんだろうと思わせていた。

なにやら表向きには順調に復活しているように見えるかもしれないフジロックだが、さて、どうなんだろう。確かに、主催者からは「来年はあります」と耳にしているし、今年も会場を離れるときに見たゲートには、その日程が発表されていた。しかし、その言葉の裏に「再来年はわからない」というニュアンスを感じていた。なにせ、異常とも思える円安のピークが開催期間中。ギャラの支払いはドル建てが原則なので、おそらく、海外からやって来た出演者に支払われる金額が想定よりも遙かに膨らんでいるはずだ。加えて、チケットのセールスも全盛期から比較したら、貧しかったと聞いている。チケットが値上げされているといっても、利益が出ているとは考えられない。

だからなんだろう、どこかで唐突にフジロックがなくなってしまうのではないかという危惧感は拭えない。なんの前触れもなく、消え去ってしまうような怖さも感じているのが正直なところ。でも、もちろん、そうなって欲しくない。なぜなら、想像できないのだ。年に一度帰る故郷がなくなることは。フジロックのおかげで知り合ったり、仲良くなった友人たちと再会できる機会が失われるのには耐えられないように思う。

初めてここに来た人達はどうだった? 同じように感じる? また、来年もやってきたいと思った? もし、そうでなかったら、フジロックの魅力が失せているってことなんだろう。もし、そうだったら、フジロックがこれでも他に類を見ない野外コンサートではなく、フェスティヴァルと呼ぶにふさわしい存在だということを証明してくれているようにも思う。でも、かつてのフジロックを取り戻したいという想いは変わらない。

今回、嬉しかったことのひとつは、会場で、かつてワールド・レストランと呼ばれる場所で中心となって動いてくれていたエチオピア人の仲間、ソロモンを見かけたこと。なんと7年ぶりに来た彼がなにを思ったか? ひょっとして、また、彼を核にワールド・レストランのような趣を復活させてくれないだろうかと期待してしまうのだ。そして、もうひとつ嬉しかったのが、何年ぶりだろう、戻ってきてくれたジーンズのリーバイス(Levi’s)。初期のフジロックでコンスタントにサポートしてくれていた彼らが戻ってきてくれた背景に、昔のスタッフが関わっていることに驚かされていた。

さて、そんな今年の会場内外での顛末を伝えてくれたのは以下のスタッフの数々。会場で一生懸命動いてくれた彼らに感謝して、そして、また、ここに集まってきたみなさんと再会できることを祈って、〆の文章を終えようと思う。ありがとうございました。

■日本語版
森リョータ、阿部光平、丸山亮平、あたそ、阿部仁知、イケダノブユキ、石角友香、梶原綾乃、三浦孝文、若林修平、Asakawa Maho、東いずみ、越川由夏、泉みや、Eriko Kondo、YAMAZAKI YUIKA、渡辺紗礼、こっこ、ヌー子、浅野凜太郎、井上勝也、エモトココロ、堅田ひとみ、粂井健太、古川喜隆、小林弘輔、佐藤哲郎、白井絢香、suguta、髙津大地、HARA MASAMI(HAMA)、平川啓子、前田 俊太郎、松藤 万里子、ミッチ イケダ、宮田遼、安江正実、リン(YLC Photography)

■E-Team
Nina Cataldo、Jonathan Cooper、Park Baker、Sean Scanlan

■フジロッカーズラウンジ
mimi、obacchi、SEKI、yamato

■ウェブサイト制作&更新
平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一、坂上大介

■スペシャルサンクス
三ツ石哲也

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KENYA GRACE https://fujirockexpress.net/24/p_903.html Sun, 28 Jul 2024 22:45:16 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=903 ノエルとグリーンのみんなでドンルクも歌ったし、今年のフジロックもいよいよ最後。もちろんこれから夜に繰り出したいわけではあるけど、最終日のヘッドライナーが終わるとどうしてもしんみりとした気持ちになっちゃうよね。

レッド・マーキー3日目夜の部サンデー・セッションの最初のアクトは、そんな最後の夜のはじまりをつかさどる重要なスロットだと個人的には思っている。昨年のきゃりーぱみゅぱみゅにも元気をもらったわけだが、今年はどんな感じになるだろうか。登場したのは南アフリカ生まれでUKベースのシンガーソングライター兼プロデューサーの、ケニヤ・グレースだ。

そこそこ入っているが、踊るにはちょうどいいゆとりがあるレッドのフロアで、“The After Taste (intro)”からライブがスタート。演奏しているケニヤの映像に続いて、動画でよく見たケニヤの音楽制作/表現の心臓である、Native InstrumentsのMASCHINEの手元が背後のスクリーンに大写しになり、フィンガードラムを披露!これは興奮する演出じゃないか。

そのままシームレスに“Afterparty Lover”で歌声を披露したかと思ったら、またサンプリングトラック+フィンガードラムでつなぎ、次の曲へ。まったくスタイルは違うが昨年ここで観たTSHAなんかも思い出させる、とてもエキサイティングなパフォーマンスにフロアも高揚していることがわかる。

でもただエキサイティングなだけじゃないのが彼女の真価だろう。「インスタに載せるために恋愛してるように見せかけよう」という歌詞が強烈な“Paris”では、MessengerやインスタDMのようなフォーマットで歌詞が矢継ぎ早に表示され、マッチングアプリのようにNope、Nope、Nope…。

SNS社会のインスタントな出会いと別れ、あるいは承認欲求を強烈に皮肉ったパフォーマンスにまあやられてしまうわけだが、フジロックでもう二度と会わないであろう人たちと意気投合して踊った数々の瞬間が重なってきて、なんともしんみりした気持ちが胸を満たしてくる。

ひとときの楽しみを享受している自分もいれば、どうでもいい見栄に振り回されてる自分や、どこか孤独で疎外感を抱えている自分もいる。ついSNS的な振る舞いをしてしまう自分にどこか白けたりもするし、いわゆる陽キャみたいに見える隣の兄さんもきっとそうなんじゃないか。踊っている最中にそんなややこしいことを考えていたわけではないが、ケニヤは誰しもが心のどこかに抱えるそんなもやもやを照らしてくれるから、ここは不思議と居心地がいいのだろう。

ドラムンベースや四つ打ちのビートとメランコリックな音像にみずみずしい歌声が溶け合って、パーティーに渦巻く様々な心象を描き出すケニヤのパフォーマンス。後半では“Meteor”や“Someone Else”を披露し、前に出てきて歌うタイミングでは大歓声。いっそう大きな盛り上がりを見せた大ヒット曲“Stranger”でも、この一瞬の刹那を切なく感じながらもガンガンに踊り倒して、フロアの人々は夜に散っていった。

はちゃめちゃに楽しいけどとても切ない。気持ちがぐちゃぐちゃしてきて、でもなんだかそれさえも心地いい。様々な気持ちが渦巻くフジロック最終日の深夜のはじまりに、ケニヤのパフォーマンスがとてもよく似合っていた。泣いても笑ってもあと数時間。さあ、夜に繰り出そうか。

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RUFUS WAINWRIGHT https://fujirockexpress.net/24/p_855.html Sun, 28 Jul 2024 17:58:03 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=855 最終日の昼過ぎのグリーン・ステージ。前方エリアはまばらなものの、多くの人が椅子を広げて過ごしている。2020年の中止の際にラインナップされていた時から、ずっと待ち望んでいたライブがこれからはじまる。「今年は彼のために来た」という声をちらほら聞いたし、僕もずっとここで観たかった。フジロック初出演のルーファス・ウェインライトの登場だ。

素肌にジャケットという装いであらわれたルーファス。“Agnus Dei”では、細やかなピアノの重厚な音像が荘厳な雰囲気を醸し出し、歌声がグリーンの木々たちにこだまして空に抜けていく。日本語で「みんな元気?」と語り、ピアノのアルペジオがみずみずしい“Montauk”を感じ入るように歌うルーファスに、うっとりと聴き入るオーディエンス。シンプルなピアノの弾き語りで、広いグリーンにこれほどの雰囲気をつくりだせるシンガーもなかなかいないだろう。

アコースティックギターに持ち替えると、“Out of the Game”、“Gay Messiah”を続けて披露。ざっくりとした指弾きのとてもシンプルな弾き語りだが、何一つ余計なものがない甘美なメロディと伸びやかな歌声の説得力が沁みてくる。ピアノに戻った“The Art Teacher”でも、息を呑むような情感が今にも降り出しそうな空模様のグリーンを包み込む。

日本語で「一緒に落ち込もう」とルーファス。一瞬どよめいたが、ストレートにそう言えるのがあなたらしい。不穏なスローナンバー“Early Morning Madness”でどんよりとした雰囲気に浸ると、「ロンドンのミュージカルで大成功して、この頃はかなり忙しかったんだよ。採算的には完全に失敗だったけど」と冗談のようにさらっと語り、またもやどんよりと暗いアコギ弾き語りの”Ready for Battle”。こんなにもの悲しさが滲むグリーンのライブなんてこれまであったんだろうか。

レナード・コーエンのカバー”So Long, Marianne”をシンプルなコード弾きで歌う姿は、どこか古き良き牧歌的なあたたかさがあったが、今は失われたものというニュアンスをそこはかとなく漂わせている。ピアノに戻った“Poses”では手を振り上げ揺れる人もいたが、なんだか気分は晴れない。この辺で雨が降ってきてレインコートを着る人がちらほらいたが、なんだか僕はもう一緒に濡れていたい気分だった。

そして日本語で「一緒にハッピーになろう」とルーファス。どうやら日本語MCのメモを用意しているらしく、こういう姿も健気というかなんというか。かわいらしいピアノが映える“Cigarettes and Chocolate Milk”でも、力なく笑うようなもの悲しさはかえって際立って感じられたし、「カモン、カマラ・ハリス!」と語り披露した“Going to a Town”で、もうこらえられなくなってしまった。「I’m so tired of you, America」と歌うあなたの、祖国アメリカへの憂いが痛いほど伝わってくる。雨は少し強くなってきたが、もう意地でも濡れていたかった。

最後に「素晴らしいあなた方にこの曲を残すよ。聴いたことがあると思うよ」と語り、レナード・コーエンのカバー“Hallelujah”。なんて清廉で穢れのない弾き語りなんだろうと感じれば感じるほど、あなたの悲しみが滲んできてもう涙が止まらなかった。

こんな風にストレートに悲しみを共有できるシンガーがどれほどいるというのか。でも何度も日本語で「一緒に」と言ったあなたとそんな気持ちを分かち合えたことがなによりの幸福に感じるし、そこには不思議と希望が灯っている。僕はすごくあたたかいものを感じながら、心からの拍手で彼を見送った。フジロックに来てくれてありがとう、ルーファス・ウェインライト。

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ALI https://fujirockexpress.net/24/p_923.html Sun, 28 Jul 2024 16:47:54 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=923 「昨日のクリスタレス・パレス・テントで観た人いる?」とステージMCが聞くと、前方のたくさんの人が手を挙げている。僕はそのライブは観ていないが、もうこの反応だけで期待ができる。インドネシアのジャカルタから、アリがフィールド・オブ・ヘヴンに登場だ。

ジョン・ポール(Dr)、アルスワンダル(Ba / Vo) 、ムハマッド・アブサー(Gt)の3人に、アイラ・アジ(Per)のパーカッションを加えた4人編成のアリ。イントロセッションに続いてはじまった“Dance, Habibi”で、ヘヴンに集った人々はさっそく手を振り上げて踊り始める。一発で楽しいやつだってわかる、あの感じだ。全編アラビア語というボーカルも、歌というより踊りを生み出す合図のように機能しているように思える。リフのメロディをそのまま歌うシンプルなもので、僕らも思わず歌って楽しくなってくるわけだ。

インドネシアに根付く中東の文化をサウンドに取り入れ、自ら「南東のひねりを入れた中東のビート」と称するというアリのサウンド。2019年にここで観たクルアンビンなどを連想させるサイケサウンドながら、踊っている感触は全然違うからおもしろい。コンガやシェイカーも刺激的なグルーヴに一味添えているが、“Malaka”なんかは祭囃子のようなどんちゃんしたフィーリングがあって、苗場の森にもよく似合っている。様々な異国情緒を感じながらも、根っこの踊りたい気持ちでつながってる感じがなんだかいいよね。

「インドネシアのジャカルタから来ました。初めての日本がとても楽しい!レッツ・ゲット・ファンキー!」とアルスワンダルが投げかけ、期待感がさらに高まるヘヴン。リズム隊が延々同じフレーズを続ける中、時にユニゾンしながらギターが移り変わっていくところもアリのサウンドの特徴で、ある種テクノのような陶酔感と戯れるひと時もまた格別だ。ガンガン踊りながらシャボン玉を飛ばす人や、ゆらゆら揺れながらインドネシアの国旗を振り回す人もいて、なんとも味わい深い雰囲気になってきた。

途中からは少し雨も降ってきて、レインコートを着る人もちらほら。ここ数年のフジロックはほとんど雨が降らなかったし、こういう感じもなんだか懐かしい。でも雨でさらに踊りたい気持ちも増してきたりするから、いい自然のスパイスなんだよな。

バンドの4人が「そろそろいくよ?」みたいな感じでジリジリと近づいていって期待を煽り、次の展開で爆発みたいな流れは、やっぱりダンス・ミュージックのようなニュアンスを感じさせる。それを人力のバンドサウンドで浴びせられるんだから、もう解放感に身を任せるのみなんです。

MCでは富士山が美しいと言っていて思わず笑ってしまったが(まあ少しややこしい名前なのはそうだが)、大自然のライブを楽しんでいるのは演奏や表情からもよく伝わってきた。ちなみにアルスワンダルはグラフィック・デザイナーでもあるようで、火曜日から東京の日本橋で個展もするそう。よかったらぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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ずっと真夜中でいいのに。 https://fujirockexpress.net/24/p_852.html Sun, 28 Jul 2024 16:04:22 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=852 そろそろ日も暮れてきそうな、フジロック最終日のグリーン・ステージ。後方ではたくさんの人たちが椅子に座って過ごしていて、疲れで少し気だるそうにしながらも、今日までのフジロックの思い出を居合わせた人と楽しそうに話したりしている。いつものグリーン最終盤の光景だ。

残すところあと2組。「ああ、今年もあっという間だったなあ」なんて思いながら歩いていくと、前方の柵のエリアはほぼ埋まっているようで、しゃもじをもったちびっ子を何人も見かけた。写真撮影禁止のマークが大写しにされたスクリーンは、単に注意喚起である以上に、これから始まるライブへの期待感を膨らましてくれる演出のようにも見える。2019年のレッド・マーキー2022年のホワイト・ステージのトリ前の出演に続いて、ついにずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)がグリーン・ステージのトリ前に登場だ。

Open Reel Ensembleの3人による、オープンリールとTVドラムのセッションからライブはスタート。今回はTVドラムが上段に配置されたセットのようで、「コンバンワー」の声を起点に演奏が広がる様子は、昨日のヘッドライナーのクラフトワークのニュアンスも感じられる。“眩しいDNAだけ”で、「ずっと真夜中でいいのに。です」と投げかけるACAねの声が、なんだかやたら凛々しい感じがする。チェーンソーのようなものを持っているが、ACAねを絶妙に映さないカメラワークでなんだかよくわからない。

続く“お勉強しといてよ”ではキメのフレーズのところでキックを連打したり、ホーンセクションが派手に盛り立てたりと、ライブアレンジが更に際立っているように感じられる。リアルタイムのライブ映像にノイズをコラージュするサイドスクリーンも、まるでコーチェラのヘッドライナーの配信を観ているみたいなスケール感だ。MVを投影した“嘘じゃない”も、物語の中に迷い込んだような情感があって、あらゆる面でグリーンの規模に進化しているバンドの躍動に、はやくもゾクゾクしっぱなしだ。

暗くなってきたグリーン・ステージ。緑と青のライティングが映える“消えてしまいそうです”に続いて、“上辺の私自身なんだよ”ではダウナーなトーンのベースと歪みの効いたギター、そしてACAねの伸びやかな歌声が空に染み渡り、夜のグリーンではお馴染みの森へのレーザーも投影。吹き荒れるスモークと後光のようなライティングの中で歌うACAねの姿は、もうこの光景がそのまま映像作品のようで、思わず息を呑んでしまった。

ACAねが「今日ずっとひきこもってたんですけど、雨降ってなくない?降ってない?よかったです、じゃ、次」とさらっと投げかけたと思ったら、まさかの未発表の新曲!奥地のフィールド・オブ・ヘヴンの夜のようなミラーボールの光がステージに投影される中、ACAねの力強いフロウにグリーンのオーディエンスはどんどん飲み込まれていく。

そして焦らし気味のベースソロから始まった“残機”が圧巻で、カラフルな電流が走るようなエフェクトが映像にコラージュされ、目の前で起こっている現実がどんどん拡張されていく。でもそんな演出や圧巻のバンドセッションが繰り広げられる中でも、ライトセイバーのようなものを少し気だるそうに振りながら歌っている、リアルのACAねに一番目を奪われるのはなんなのか。PA前くらいから遠目に見ていても一番動きが少ないくらいなのに、グリーンの規模でも際立つACAねの存在感には驚くばかりだ。

三味線とオープンリールが躍動する“機械油”で、日本語?中国語?みたいないろんな漢字がフラッシュしたかと思ったら、「歌詞じゃんこれ」って徐々に気づくような表現の塩梅もまたニクい。ヒップホップのようなフロウをちょっと気だるそうに繰り出すACAねもまたニクい。そして、オープンリールもガンガン絡んで賑やかしながら、むしろサビの余白と立体感で魅せるアレンジが光っていた“綺羅キラー”。扇風琴をかき鳴らして、ラップパートではフジロックバージョンのラップを披露。そこからサビに入った時の高揚感といったらもう!

ピアノやホーンがガンガン賑やかす“秒針を噛む”でもオープンリールが暴れ回り、最後のブレイクの弾き語りのところに三味線を混ぜてきたりと、ハッとするアレンジがどんどん冴えてくる。それにしたって“マイノリティ脈絡”の「られんよ」の言い回しは何度聞いてもドキッとするし、他にも無数に出てくるが、こういう微細なニュアンスで僕らをくすぐってくるのがACAねの真骨頂だろう。そして「よかったら一緒に踊ってくれますか」と投げかけ、みんな大好きな“あいつら全員同窓会”でグリーンのたくさんのオーディエンスがジャンプ!グリーン・ステージでこれができるのはなんとも感慨深かった。

僕の見た範囲ではライブ中誰一人撮影していなかったが、そんなことをする暇もないくらい目の前で繰り広げられている光景が凄まじい。僕ももはやTVドラムや扇風琴のものめずらしさに触れている場合ではない。もちろんふと通りかかって見た目の面白さに惹かれる人もたくさんいただろうが、そういった部分がトリッキーな飛び道具などではなく、ずとまよバンドの強度と説得力として馴染んでいるのをまざまざと感じたのだ。

僕は2022年のホワイト・ステージではじめて観て衝撃を受けて、それから単独公演やサマソニとソニマニでも観てきたから少しはずとまよのことがわかった気でいた。でも初めて観た時と同様にまたもやあっさりと想像を超えてくる。展開や演出に唖然としてしまうタイミングが何度もあったし、グリーントリ前の出演もまったく大抜擢などではない、ものすごいスケールのパフォーマンスを心ゆくまで堪能した。でも本当に驚いたのはこの後のACAねのMCだ。完全に正確ではないが、大意を書き起こさせてほしい。

「ちょうど5年前くらい前にはじめてフジロックのレッド・マーキーでやらせてもらって、それまでライブってほとんどやったことなくて、ライブをすることが全然好きになれなくて、でも出演した時本当にライブが楽しいと思えて。今日こうしてグリーン・ステージでできてることが、本当に本当に嬉しいです。フジロックにいつも来てる方は、ずとまよがグリーン・ステージなんてまだまだ早いと思っている方もいるかもしれません」

「そんなことないよー!」と前方のオーディエンス。当たり前だ。こんな凄まじいライブ体験をさせてくれて何を言うんだACAね。でも何か思うところがあったのだろう。

「来てくれた人、たまたま見かけてくれた人、ありがとうございます。昨日くるりの岸田さんが話してたことを聞いて考えさせられて、私は引きこもり体質なんですけど、私にとって音楽って、どうしようもなくて起き上がれない、近づいたり遠のいたりしながらもそばにいてくれるもの。こうやって音楽、バンド最高だなって思えたのはフジロックのおかげです。必死にひたむきにやろうと思います。それしかないです。ありがとうございました。この後のノエルさん、私も楽しみ。じゃあ最後です」

もう本当にグッときてしまった。特にフェス出演のMCではほとんど本心のようなものは見えなかったACAねが、ここまで赤裸々に音楽やバンド、フジロックへの想いを吐露してくれるなんて。僕はACAねのことを何もわかってなかったのかもしれない。国内有数のプレイヤーが揃ったバンドとACAねの絆が改めて感じられた気がしたし、そんなACAねの気持ちが滲んだ“暗く黒く”がどれだけ染みたことか。

後半のメンバー紹介のパートで僕の頭の中に今日のライブが走馬灯のようにフラッシュして、その意味がすべて塗り替えられたような気持ちになった。最後には大量のスモークがばーっとあがって、晴れてきたら「ずっと真夜中でいいのに。」のロゴがあらわれる。とても晴れやかな気持ちだ。

2022年に観た時ははじめての体験の興奮から僕は「ACAねのことが気になって仕方がない」と書いた。でも今回のフジロックを通して改めて感じたのだ。やっぱり僕はACAねのことが気になって仕方がない。

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菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール https://fujirockexpress.net/24/p_925.html Sun, 28 Jul 2024 08:32:04 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=925 いよいよ最終日を迎えた今年のフジロック。奥地のフィールド・オブ・ヘヴンに到着すると、疲れを感じさせながらもたくさんの人々が晴れやかな表情で次のアーティストを待っている様子だ。11人編成の菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールが大歓声に迎えられながら登場した。

一曲目は”キリングタイム”。4人のストリングスがうみだす不穏な空気に、ベースやピアノもどんどん合流。そして満を辞してサックスを吹き鳴らす菊地成孔(Sax / Vo / Cond)の佇まいにさらに惹き込まれる。菊地がカウベルを叩いてパーカッションとセッションする場面など、演奏が移り変わるたびに歓声をあげるヘヴンの聴衆。優雅だけどどこか心地よい緊張感があって、ロックバンドともまた違うエキサイティングさを持ったオルケスタの演奏にはやくもヘヴンは魅せられている。

“嵐が丘”でもスキャットやヴァイオリンの形態模写、拍子木を叩いたりもする菊地とともに、バンドネオンやストリングス、ハープやピアノが映画のような芳醇な情感を描き出し、ヘヴンの聴衆は思い思いに揺られている。この感慨を正確に描写しきれないことを悔しくも感じるくらい、重厚で贅沢な音楽体験。こういう体験ができるのもフジロックの醍醐味だろう。

「ビタ一文ロックでないのに、フジロックに呼んでいただいて光栄です。ハープが山を越えるだけで赤字です。昼から出るのははじめてなので吐きそうです」と語る菊地。僕はというと、ドラマ『岸辺露伴は動かない』の音楽から本格的に興味を引かれて今回はじめて生の彼に触れたわけだが、菊地成孔といえば夜のクリスタル・パレス・テントやGAN-BAN SQUAREの印象が強くあったので昼のヘヴンで繰り広げられる光景にはなんだか妙なギャップを感じたりもする。長年親しんできた聴衆や彼自身にとってはなおのことなのだろう。

「こんな雰囲気なのでチルアウトな曲をやります。隣の人とカップルにでもなって、いやそんなことしないかフジロック。そんな気分で、ダンスホールのように」と語り、“京マチ子の夜”。とろけるようにムーディーな調べを味わい、堪能し、身を任せるこのひとときがなんともたまらない。

僕からすれば菊地成孔の音楽は少し高尚なものなのではないかと身構えていたところがあったし、実際最初の方はただ立っているだけでも醸し出される異様な存在感にやられていたが、そんなことを考える必要はまったくないのだろうと思う。そう思うと僕もリラックスした気持ちになって、ただ演奏に身を任せるだけだ。“色悪”では菊地がヴォーカルパートを歌い、具体的な夜の情景をイメージさせる話し言葉のような歌が、シネマティックな情感をさらに深くしていく。ダイナミックなユニゾンが印象的だった“ルペ・ペレスの葬儀”で通り過ぎていった一瞬の雨も、まるでそういう演出かのようにこの優雅な光景に色を添えていた。ああ、たまんないな。

最後には丁寧にメンバー全員を紹介し、「昼間なんで調子狂いましたが、夜また会いましょう」と語る菊地。彼曰く水曜に新宿歌舞伎町のダンスフロアで行われる、フル尺の夜の公演が本領だそうだ。僕にはなにが狂っていたのかまったくわからなかったが、野外フェスティバルで繰り広げられた優雅で妖艶な夜の情感を心ゆくまで楽しむことができた。

「ハープを山に運ぶこと、パーカッションを山に運ぶこと、悲願でした。悲願がかないました」と話した菊池成孔。彼もこのフジロックでしかできないスペシャルなひとときを満喫したことだろう。それでは、夜また会いましょう。

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大変なことも含めて全部楽しいフジロック https://fujirockexpress.net/24/p_5108.html Sat, 27 Jul 2024 20:58:05 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=5108

ずっとライブレポートを書いてたら、おはようの時間になってしまった。まあ最低限の進捗はいけてるかなってことで、ちょっとだけ仮眠。

楽ではないけどこういうのも含めて楽しんでる自分がいるし、フジロックがもたらしてくれるパワーだなってすごく感じます。

いよいよ最終日。あとはもうなるようになるって気持ちで、最後まで楽しんでやっていきましょう。

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THE YUSSEF DAYES EXPERIENCE https://fujirockexpress.net/24/p_914.html Sat, 27 Jul 2024 17:43:45 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=914 グリーン・ステージはクラフトワーク、ホワイト・ステージはサンファからガール・イン・レッド。ここフィールド・オブ・ヘヴンには、サウスロンドンのコンテンポラリー・ジャズ・シーンで目覚ましい活躍を見せる、ユセフ・デイズがフジロック初出演。かなり悩ましい時間帯だが、それでもここを選んでくる人達が、ソワソワした雰囲気で彼らを待っている。ステージ中央にそびえるドラムセットの存在感だけで、これから始まるライブへの期待が高まってくる。21時定刻を10分ほど過ぎた静寂にサックスの音色が飛び込んできたのを合図に、ザ・ユセフ・デイズ・エクスリペリエンスのライブの始まりだ。

とは言ったものの、僕はそれほどジャズ・シーンに詳しいわけではない。トム・ミッシュとのコラボも気になっていたし、隣接するウィンドミル周りのポストパンク・シーンは大好きなので、こういうライブは押さえておいた方がいいなくらいの意識でここに足を運んだ。でも“Black Classical Music”からライブが始まった瞬間、思わず感嘆の声をあげてしまった。近くの兄さんも「これはかっこいい…!」と呟いている。

一般的なセットの3倍くらいの、多種多様な打楽器がセッティングされているユセフのドラム。まずその手数に圧倒されてしまうのだが、打音ごとのきめ細やかなニュアンスが感じられるのもとてもフレッシュ。普段はそれほど意識していなかったが、打音にも音色があることに気づかされる。そんな彼を中心に展開されるエキサイティングな絡み合いがたまらない!

「yo yo、元気ですかフジロック」とユセフ。続く“Tidal Wave”でもユセフの繊細かつパワフルな技巧が目を引くが、音色を使い分けるイライジャ・フォックス(Key)の鍵盤がリラックスしたフィールを持ち込み、グルーヴが複層的になっていくのがおもしろい。盟友ロッコ・パラディーノ(Ba)がジャコ・パストリアスのフレーズを弾いたかと思えば、ムーディーなアレンジが光る“Turquoise Galaxy”ではイライジャの高速ピアノやヴェンナ(Sax)が吹き奏でるメインリフに、恍惚の表情を見せながら踊っているヘヴンのオーディエンス。なんて贅沢な時間なんだろうか。

“For My Ladies”、“Strings Of Light”、“Mystics”と、どんどん表情を変える圧巻のジャズ・セッションはまだまだ続いていく。その時々でメインのプレイヤーを照らすライティングが見た目にも刺激的で、ドラムソロやパーカッションとのセッション、ピアノソロなどかわるがわる見せ場をまわして様々な展開を織り交ぜながら、メインのリフに回帰する瞬間のカタルシスたるや。それはまるで、体験のグレードが一段階上がったような感覚で、それがどんどん積み重なっていくのだ。まさにこれが“ユセフ・デイズという体験”なのだろう。

後半では、奄美大島出身のシンガーソングライターの城南海が登場!彼女とは2月のブルーノート公演の時に知り合ったそうで、奄美三味線の弾き語りを加えた“Fuji”では、迫真の和洋セッションが繰り広げられた。妖艶な歌声と独特のカラッとした音色でヴェンナのサックスと掛け合ったり、最後には高速でかき鳴らしたこの一幕は、今年のフジロックでも屈指のハイライトの一つに違いない。

“Instanbul”のドラムの入りで一度やり直す様子に「あなたもミスったりするんですか!」と逆に驚いたりもしたが、 最後の“The Colour Purple”では「ここまでついてきたならできるだろう!」とばかりにかなり複雑なハンドクラップを求めたりと、最後の最後まで僕らを刺激し続けたザ・ユセフ・デイズ・エクスリペリエンス。感覚をアップデートするような90分をじっくり堪能したヘヴンのみんなには、帰り道の景色も少し違って見えたことだろう。

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KITTY LIV https://fujirockexpress.net/24/p_917.html Sat, 27 Jul 2024 15:14:33 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=917 去年の朝霧JAMでキティ・デイジー&ルイスを観た時、あまりにも晴れやかに鳴らすオールディーズへの憧憬が美しくて僕は泣いてしまった。むしろこれこそが最新鋭だと思った。だから今回のフジロックでは絶対に彼女が観たかった。ちょうどソロデビューアルバム『Easy Tiger』を3日前にリリースした絶好のタイミングということもあり、期待感が渦巻くフィールド・オブ・ヘヴンに、ソロではフジロック初出演のキティ・リヴ(Vo /Gt)の登場だ。

カラッとしたギターを颯爽と弾き鳴らしながら、ブルージーなこぶしの効いた力強い歌声をヘヴンに響かせるキティ。歌の合間に「ヘイ!」とか「カモン!」とか入れてくるのも心地いい。かなり隙間が多いシンプルな演奏だが、その隙間がグルーヴを生み出す懐の深さを感じさせるバンドサウンドだ。

“Lately”では弟のルイス・ダーハム(Ba)とかけ合いながらギターソロを披露し、「とても簡単だから歌ってみてよ」とシンガロング。そして細かいフレージングの指弾きのリフにシビれた“Money”では、セッションに突入し大歓声!サッポロのビールで乾杯と投げかけるキティ!どんどん楽しくなってきた。

ジャック・フラナガン(Dr)が先ほどからやたらといい顔で反応をくれるから、僕らも気分が上がってくる。彼はキティの夫でミステリー・ジェッツのベーシストでもあるそうだが、そんなジャックとルイスがパートチェンジした“The River That Flows”では、シンプルなビートに乗せたインディーフォークのニュアンスがあって、少し違った表情も見えてくる。

後半では陽気なビートのザ・イコールズのカバー“Laurel And Hardy”で和気藹々とした雰囲気が増してきて、さらに盛り上がりを増すヘヴン。最後の「タタン」でスティックあげたジャックの表情がすごくキラキラしていて、キティ・デイジー&ルイスともまた違う、新しい家族の絆が垣間見えた。本当にいいバンドだなあ。

“Keep Your Head Up High”ではキティがハーモニカを持ち出して、圧巻のソロを披露!ハーモニカの魅力はアスのライブでもみんな知ってると思うけど、スローなリズムだからこそ深まるグルーヴと情感を堪能。迫真のセッションの最中、マイクシールドで倒しそうなビールを素早くどかしてくれたスタッフに「ありがとう」と言ったのはなんだか微笑ましかった。

最後はブルースギタリストのエルモア・ジェームスのカバー“Cry For Me Baby”で、怒涛のパートチェンジが繰り広げられる。文字だととてもややこしいのでパートを補足していくが、ジャック(Dr→Ba)とルイス(Ba→Dr)がチェンジしたかと思えば、ルイス(Dr→Gt)とキティ(Gt→Dr)がチェンジして、キティがドラムソロを披露。さらにルイス(Gt→Ba)とジャック(Ba→Gt)、ジャック(Gt→Dr)とキティ(Dr→Gt)がチェンジし、見つめ合いながら夫婦のギターとベースのセッション。アグレッシブなドラムで姉夫婦を盛り立てるルイス。

書いててもわけがわからなくなってきたが、交代中もシンバルのリズムをキープしながら、どんどん流動していくこの一幕は本当に興奮したし、マルチプレイヤー集団のエキサイティングな好奇心にみんな拍手喝采大歓声。とてつもない高揚感が終演後のヘヴンを包み込んでいた。

随所に現代のSSWらしいポップやインディーの風味も感じられたが、蓋を開けてみればさらにどっぷりブルースやロックンロールの深淵に飛び込んでいったキティのライブ。これからもキティはキティの道を往くのだろう。信頼する家族たちとともに。

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el tempo https://fujirockexpress.net/24/p_1002.html Sat, 27 Jul 2024 11:54:07 +0000 https://fujirockexpress.net/24/?p=1002 友人がしきりに勧めているのを見て気になったので、寝ぼけまなこでピラミッド・ガーデンに向かう朝のひと時。夜中に雨が降ったのか少しじめっとした気候だが、今日を始めようとする人々のささやかな活気が心地いい雰囲気にまどろんでいると、目の覚める打音が飛び込んできた。

2021年にはパラリンピックの閉会式にも登場し話題になった、シシド・カフカが主宰するアルゼンチンのブエノスアイレス発の音楽プロジェクトel tempo。ステージにはコンダクターのシシドとフレットレスベースのケイタイモ、その他に7人の打楽器奏者がいて、コンガやボンゴ、シェイカーにジェンベと、知っているものを挙げていけば大体ありそうなくらい、多種多様な打楽器が所狭しと並んでいる。

ゆったりとはじまったライブだが、繊細かつ大胆に繰り出されるシシドのハンドサインによって、徐々にグルーヴが生み出される。ヒップホップのフリースタイルのようなラフさを感じさせつつ、パフォーミングアートのような洗練された雰囲気も感じるシシドの佇まい。ハンドサインは全体の流れを大まかに指揮するものや、即興で微調整するものがある、ように見える。

興が乗ってくると、度々凛とした表情でこちらを向き始めるシシド。身振りや仕草で僕らにも何か伝えようとしているようで、それが正確にわかるわけではないが、応えようとする僕らとel tempoのコミュニケーションが生まれるわけだ。

その意図を読み取って合わせようとするのはそれほど簡単ではなく、苦戦していると(いまいち合わないなあ)みたいな表情。でもバッチリ合うと(その感じいいね!)みたいな表情を見せるシシドの姿に、僕らの気持ちもさらにたかぶっていく。

最初はゆったり座りながら「なにか見事なもの」を観ているようなピラミッドの人々だったが、徐々に立ち上がって踊り出す人も増えてきた。(このフレーズを真似て手拍子してみて)みたいな仕草に応えて手拍子がバシッと合った一瞬の静寂に、「おーすごい!」と感嘆の声をあげるシシド。演者と鑑賞者の垣根が溶け合ってくるこの感じ。こりゃあ楽しいぞ!

こうなってきたらもっともっと踊りたい。「ゆっくりな感じがいいか、あげあげな感じがいいか」と言うシシドに「あげあげー!」と応える僕ら。もうあたりのみんなが奔放に踊っている。「なんかリズムください」とお客さんをつかまえると、即興の手拍子のリズムがシシドの打音も加わったel tempoの演奏によってどんどん発展して、ピラミッド中に伝播していった一幕は、なんとも象徴的で胸にくる体験だった。

歌もなければほとんど言葉も交わさないけど、ハンドサインや仕草をなんとか読み取りながら目と耳と身体だけで感覚を共有して共鳴し合う。それがこんなに楽しいなんて。最後にはみんなほとんど総立ちになって大歓声をあげたけれど、朝イチのピラミッドでこんな光景はなかなか見られないんじゃないだろうか。ここに来て本当によかった。

最後に知らないうちにマイクにとまっていたトンボにも向けて「el tempoでした。ありがとうございました」と語りかけたシシド。君にその言葉は伝わらないかもしれないけど、踊りつくした僕らの興奮と熱気はもしかしたら伝わったかもしれないな。

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