GREEN STAGE, | 2012/07/27 22:25 UP

JAMES BLAKE

独特な揺らめきのある楽曲が持つ深遠さを感じる

ただただ音楽を聴くという単純な行為だとしても、ジェイムス・ブレイクの楽曲はより深いところを楽しみたいと掻き立たせるようなユニークさがある。洋楽に馴染みがなくとも聴きやすいだろうし、だからこそ、ザ・ストーン・ローゼズと同時間帯であろうとも、ちょっと目を疑いたくなるくらいホワイトステージに人が押し寄せていたのだと思う。

この日は、上手に彼本人の電子ピアノとアナログシンセ、そして、中央にドラム、その隣には腰を降ろして佇んでいる、ギター&サンプラーというバンドでのセット。彼はTシャツにジーパン、長袖のジャケットという出で立ちで、かなりシンプルである…。が、クラスに必ず1人はいる…後ろの端っこの席に座り、クールで大人しいのに、儚げで何をしなくても神秘的な要素があるというタイプで、音の鳴る前から吸い込まれそうになってしまう。しかも、深遠な目というのも、ズルいというかなんというか。

ライヴは、自らの名を冠したアルバム『ジェイムス・ブレイク』を中心としたセット。前半は“アイ・ネヴァー・ラーント・トゥ・シェア”など、攻撃的なのだけど、なぜか無音にも感じるほどの圧迫感と沈黙も感じられる。それはもう意識が遠のく感覚に近いものがあるかもしれない。そして、ダブステップの新鋭と語られることが多い彼だが、なんだか聴いていると、ジャンルなんてどうでもよくなるほど独特な揺らめきというか、ループ感も。声をサンプリングして重ねられるたびに、その感覚が増していくのだが、次第に、周りのメンバーのサウンドも含めて、すべて感情の一種として染み入っていくのがわかる。とあるインタビューで、「音楽理論や楽譜はあまり重要じゃない。大切にしているのは、純粋な感情だ」と本人も言っていたけれど、やっとその意味がわかったような気がした。彼が言うように、計算されつくした分析型に見えて、やはり、本能にアプローチして作られているから、だろう。

また、途中のMCで「ありがとう、最高の場所です」と、彼が日本語で声を掛けると、大歓声の中に女性の「ギャー!!」と悲鳴にも似た声が。先にも述べたが、ずっと眺めていなくなるほど、ステージに立つ彼が美しく魅力的なだけあって、これはもう女性ならば、納得せざるをえない瞬間だろう(もちろん、言うまでもなく、彼の才能、そして音楽も素晴らしい)。

後半の…“リミット・トゥ・ユア・ラヴ”あたりからは、ファルセット・ヴォーカルとピアノを中心にした「歌」ものが続く。元々はロンドンのクラブ・シーンに身を置いていた彼なのに、なぜかこういうシンガー・ソングライターとしての側面が強いのも面白いところ。真っ暗な暗い場所で微かな光を見つけるような…深い海底にいながら地上の光を探すような…そういう妙な空気で頭がいっぱいになってくる。オーディエンスも同じく、ステージをずっと見つめるというより、目を閉じてうつむき、誰にも邪魔されないよう深く深く音楽の心地よさと、張り詰めた時間を楽しんでいるようだ。

「ありがとう、ありがとう、ありがとう」というループが入った後に、ラストのMCへ。そこからMCが終わるまで、拍手がやむことがないという異様な現象も。みんな、それほど楽曲の中に入り込んでいたのではないだろうか。彼の音を組み立てるプロダクションは実に秀逸であるのだ。そして、ラストは、“ザ・ウィルヘルム・スクリーム”で締めくくった。


写真:深野輝美 文:松坂 愛
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