“森リョータ” の検索結果 – FUJIROCK EXPRESS '25 | フジロック会場から最新レポートをお届け https://fujirockexpress.net/25 FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)を開催地苗場からリアルタイムでライブレポート・会場レポートをお届け! Fri, 10 Oct 2025 14:26:10 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.2 「もうええやろ。そろそろ辞めようか…」と考えたことが幾度かあった。でも、辞めなくてよかったね。やっと、「いつものフジロック」が戻ってきた…かも。 https://fujirockexpress.net/25/p_9083.html Sat, 09 Aug 2025 02:09:19 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=9083 我々が愛情と尊敬の念を持って大将と呼ぶのが、フジロックを創造したプロデューサー、日高正博。その彼に「俺がやりたいことを一番わかってるのがお前だ。手伝ってくれ」と言われて、黎明期のインターネットを核に情報発信を始めたのは第1回が開催された1997年が開けた頃だった。それからすでに28年が過ぎている。あの年、台風の影響で生まれた混乱や2日目のキャンセルで荒れまくったのが公式サイトの掲示板。それを公式から切り離し、コミュニティ・サイトとして、その年の暮れか翌年にfujirockers.orgを立ち上げている。それは大将と相談の上で生まれた、いわば、裏公式サイト。フジロッカーという言葉を生み出したのもこの時だ。個人として積極的に発言できる場として彼は幾度となく、ここを通じてメッセージを発信。直接、オフ会に顔を出すことさえもあった。ところが、コロナ禍で参加者が抗原検査を余儀なくされ、全面禁酒に加えて小規模開催しかできなかった21年を境に彼の言葉がほとんど聞こえなくなっていった。我々が彼の「指名手配」写真をパロディ化したTシャツを制作したのは、それを受けていた。なによりも大将が描いたフェスティヴァルを楽しみにしているのがフジロッカー。それほどまでに彼は求められている(「Wanted」)という意味をここに込めていた。このTシャツが最も参加者数が少なかったフジロックで、fujirockers.org史上最高の売り上げ枚数を記録。それはフジロッカーと大将が強い絆で結ばれている証のようにも思えていた。

その大将が「もうどうでもいい。放っとけ」と口にしたのは22年か。彼の体調が悪くなったのは、フジロックがただの野外コンサートにしか見えなかったあの頃からではなかったか? 人気エリア、カフェ・ドゥ・パリ周辺がフード・コードになり、パレス・オヴ・ワンダーにいたってはその片鱗さえなかった。主催者には苦渋の決断だったかもしれないが、あれを「フェスティヴァル」と呼ぶには無理がある。それにも関わらず、「いつものフジロック」を謳っていることに大きな失望を感じていた。もう辞めようか… fujirockers.orgも解散してしまおうかという思いが脳裏をよぎっていた。それでも自分をつなぎ止めたのはスタッフを含め、フジロックの存続を支えようとしていたフジロッカーたち。あの時、「フジロックがない人生なんて考えられない」という声を耳にしていた。そんな彼らがこのままじゃ終われないという気持ちにしてくれたように思う。もちろん、あの流れに抗い、フェスティヴァル復活を目指して必死に動き続けていた裏方がたくさんいたことも忘れてはいけない。

そのフジロックを触発した英国のグラストンバリー・フェスティヴァルを初体験したのは1982年にさかのぼる。当時、まだ20代だった自分はすでに高齢者と呼ばれる年齢になっている。あの時とは比べることができないほど巨大化したこれを取材し続ける意味はあるのか? ここ10数年悩み続けていた。そろそろ潮時かもしれないと思ったことが何度もあった。メディアが求めるのはステージに姿を見せるアーティストのことばかり。でも、それは、おそらく会場の20%にも満たないスペースで繰り広げられている一部分にしか過ぎない。だからこそ、ラインナップがほとんどわからない時点でも、20万枚以上のチケットが20~30分で完売となる。あのフェスティヴァルの魅力はメディアがほとんど取り上げない、その他にあるのだ。が、それを伝えるメディアはほとんど消え失せている。加えて、毎回同じことを書くわけにもいかないと、ここ数年はグラストンバリー未体験の若手ライターや写真家を同伴。彼らの新鮮な視点で伝えられる記事を楽しむようになっていた。開催時期に入院していた1995年を除いて、欠かさず通い続けて今年は43年目。もうなにも目新しいものはないと予測するのが普通だろう。が、待っていたのは「伝えなければいけない」という衝動を生む出来事や人との出合い。それが嬉しくて、また語り、書き続けていくことになる。

そのひとつが今年の前夜祭でレッド・マーキーに集まったみなさんの集合写真を撮影する時に語ったことだった。

「The Whole Farm’s the stage and all of you are players」

そんな言葉が書かれたポスターが、取材拠点となるプレス・テントを出た広場の壁に飾られていた。これは会場内で古ぼけた活版印刷の機械を使って毎日新聞を発行している地元のスタッフが作った1枚。それにハッとさせられるのだ。ここに書かれているfarmとは会場となっている農場を示す。簡単に訳せば「会場全てが舞台(ステージ)で、あんたたちみんなが演者(プレイヤー)なんだ」となる。

Photo by 阿部光平

フェスティヴァルの魅力…あるいは、そこで生まれるマジックの所以をこれが見事に語りかけているように思えていた。「自然に囲まれた環境がフジロックの魅力ですよ」としたり顔で語る業界人は多い。でも、それは要素のひとつにしか過ぎない。また、「ユニークなラインナップ」も間違ってはいない。が、フジロックというフェスティヴァルの魅力ってなになんだろうと考えた時、グラストンバリーでみつけたあのフレーズがピンとくる。おそらく、苗場にやって来る人たちの想いがなにやら磁場のようなものを生み出し、それがフェスティヴァルを作り出しているんじゃないだろうか。

フジロックに絡んで始まったのが年に3回ほど開催されている苗場のボードウォーク・セッション。全国からその補修をするために集まってくるヴォランティアのみなさんとはすでに顔なじみで、会場で彼らとよく顔を合わせている。今年は行けなかったが、フジロック直前の7月のセッションの時には会場設営が始まっていたはず。ここに舞台設営にPA関連、テント設営からトイレの準備と、多くの人が加わっていく。そして、前夜祭前日まで、汗まみれで働いているのが、ゴンちゃんの制作チームやパレス・オヴ・ワンダーのスタッフ。と思えば、ボードウォークを歩いていると、様々なオブジェを作っているアーティストたちが目に入る。その誰もが笑顔で輝いている。出店しているブースの飾りやデザイン担当から、その裏で働く人たちやフジロックを支えてくれる地元のみなさんの想いをひしひしと感じるのだ。

そこに雪崩れ込んでくるのが、全国どころか全世界から集まってくるオーディエンス。なかには思い思いのコスチュームに身を固めて遊んでいる人や楽器を持ってきて演奏する人もいる。今年はゲリラDJも出没したんだそうな。彼らから放たれるエネルギーがなにかを揺り動かし、それが共鳴しながら拡散、拡大されていく。ステージに立つミュージシャンの演奏がそこに重なって有機反応を引き起こす。それが奇跡的なパフォーマンスの数々を生み出しているようにも思えるのだ。フジロックでのライヴ体験の素晴らしさの背景にはそれがある。DJブースは、もちろん、カフェやバーに食事を提供するストールでも同じこと。見ず知らずの人にだって、当たり前のように話をすることができて、あっという間につながりができる。そんな空気がここに出来上がっている。

そのフジロック、今年は7月19日に始まっていた。前夜祭は7月24日なのになぜ? と思われるかもしれないが、その前の週末に幕を開けたのがフジロックの一部、ピラミッド・ガーデン。会場の端っこにあるここが「Beyond the Festival」と銘打って単独開催されていた。フジロック独特の磁場がゆるやかに、本番に向かって確実に強くなっていたのを、ここに遊びに来た人たちなら、感じることができただろう。

主催していたのは2010年からこのエリアを任されていたキャンドル・ジュン。彼のフェスティヴァルへの想いがこれを動かしていた。それは大将が抱いていた「想い」にも繋がっている。ずいぶん昔のこと、彼が口にしていたのは「1週間ぐらい開催するってのもいいなぁ」というアイデア。ひょっとすると、そのあたりに伏線があったのかもしれない。大将がなによりも求めていたのは、ラインナップに依存することなく、「フジロックだから」こそ戻ってきたいと思わせるフェスティヴァルを作り上げること。そんな想いをピラミッド・ガーデンに詰め込もうとしたのが今回の試みだったのかもしれない。

ここにいるだけで気持ちよかった。ライヴを追いかけてあくせく歩き回ることもない。タイムテーブルはのんびりと余裕を持って作られているし、ライヴが中心でないのは明らかだ。釣り堀で釣った魚を料理して食したり、サウナで汗を流して冷たい水が流れる川に飛び込む。あるいは、ワークショップを覗き込んだり、日陰で昼寝をしたりと、ゆったりとした時間と空間の中に身を置くことだけで気持ちいい。生きていることのしあわせを充分に感じることができるのだ。

加えて、大将がいつも口にしていたのは「地元の人たちと一緒に作る」という意識だった。都会から地方に来た企業が利益を吸い上げ、地元はおこぼれを授かるだけといったイヴェントのあり方を彼は嫌悪していた。ピラミッド・ガーデンに反映されていたのがそれだった。後援は地元の湯沢町で、一役買っていたのが苗場観光協会。実は、この閉幕からフジロック開催までの間に会場を使って開かれたのが、フジロックに大きな貢献をしている地元若者の結婚式だった。これが今後、どういった展開を見せるか未知数だが、フジロックや苗場を愛する人たちにもそういった場として、この時間と空間を提供していきたいとのこと。興味がある方は観光協会へ問い合わせてみたらどうだろう。

大将から「フジロック前に、みんなに伝えておきたいことがある」と連絡があったのはその取材をしていた時だった。それを受けて、東京のスタッフが彼を訪ねている。話題になったのはクロージング・バンド。その言葉からはこのプロジェクトに対する彼の並々ならぬ想いが伝わっていた。今年はそれだけにとどまらず、様々な指示を出している。ネパールのバンドを招聘したり、どん吉パークのDon’s CafeにDJを入れたいという依頼も届いていた。それを受けてフジロッカーズ・バーの常連DJに協力を依頼。「俺もDJするかも」なんて言われて、リクエストのあった昭和歌謡のシングル盤も用意していた。その1枚がクロージングに出演した尾藤イサオの大ヒット曲『悲しき願い』のオリジナル。もちろん、これはここで使っているし、最後のグリーン・ステージでご本人に見せると大喜びしてくれて、なんとサインもいただいている。

Photo by おみそ

Don’s Cafeは大将の盟友、池畑潤二率いる苗場音楽突撃隊がゲリラ的にライヴをする苗場のホーム。昨年はDJゴンちゃん夫妻がDJをしているし、彼のお気に入りバンド、USも演奏している。今年も同じだがホットハウス・フラワーズのリアムがここに加わり、ゴンちゃん夫妻に代わったのがフジロッカーズ・バーや仲間のDJたち。主要ステージでの演奏が終わる頃ともなると、大将を慕う仲間がここに集まってくる。といっても、実は、フジロック開催を前に「身体が持たないかもしれない」という情報もあって、大将の会場入りが危ぶまれていた。が、前夜祭の朝、東京を離れたという連絡が入ってひと安心したものだ。彼を訪ねると、血色もよくて、去年より元気に見えた。体調もよかったんだろう、毎晩、ここに顔を出して仲間と一緒に楽しんでいた。

そして、最終日、いきなり大将から呼び出しだ。DJの仲間とセッティングをしていたどん吉パークからとぼとぼ歩いて本部の隣を訪ねると、「フジロッカーになにかプレゼントしたいんだ」という。「じゃぁ、今年のポスターにサインしてよ」とお願いして、その様子を撮影。それを3枚受け取っている。さて、このプレゼント、どうしようか。大将へのメッセージを書いてもらうのを要件として、応募してくれた人から抽選するのがベストだろうと思う。もちろん、そのメッセージは彼に手渡すことにしよう。詳しくはこちらで確認していただけると幸い。

Photo by おみそ

クロージング・バンドが演奏する前に大将と一緒にグリーン・ステージ脇に移動。初めて顔を合わせる尾藤イサオと彼が談笑している姿がほほえましい。耳をそばだてているとエルヴィス・プレスリーがどうしたこうしたとロック談義が続いているのがわかる。このライヴに出演するみなさんと挨拶を交わしつつ、「お客さん、残ってくれてるかなぁ」と心配顔だった大将。でも、残って楽しんでいる人たちを見ると実に嬉しそうだ。そして、1943年生まれで御年82歳だというのに、とてつもなくソウルフルな尾藤イサオに大喜びしながら、『悲しき願い』を声を出して一緒に歌っているのだ。

「みんな、若いから知らないかもなぁ。でも、これは、俺からみんなへのギフトなんだ」

彼が愛して止まないロックンロールの名曲の数々を、日本の伝説的ロッカーに歌ってもらい、オーティス・レディングの名曲『ドック・オヴ・ザ・ベイ』をリアムにまかせる。そして、チェ・ゲバラと並んで彼のヒーローだというジョン・レノンの『イマジン』を加藤登紀子に託して幕を閉じる。そこには彼の想いがあった。

さて、今年のフジロックはどうだったか? なによりも嬉しかったのは愛知県豊田市で続けられている、おそらく、国内で最も素晴らしいと感じた『祭り』、橋の下世界音楽祭の仲間がフジロックの奥地を復活させたことかもしれない。印象的なステージを苗場に持ち込んで作り上げたのがオレンジ・エコー。これで明らかに観客の流れが変わっていた。彼ら独特の色を持つラインナップも興味津々で、あの世界がまだまだ広がっていくことを予感させる。地元新潟から三国トンネルを越えた群馬あたりの伝統工芸から民謡や芸能までがここに紛れ込んできたら… なんて夢みるのは、それこそ彼らが橋の下でやっていることだから。さて、来年はどうなるだろう。

また、子供の頃から、あるいは、生まれた頃からフジロックと共に育ってきた地元、苗場の若者たちがDJブース、Roots Grooveを動かし始めたのも特筆に値する。かつてワールド・レストランがあったエリアにGonchan Barを誕生させたのもそんなひとり。これで彼らもフジロックを作る一部となった。さて、これから彼らがなにをどうする? ボードウォークでのパーティは、もちろん、まだまだできることはあるはずだ。彼らからどんなアイデアが出してきて、どう発展させていくのか、それが楽しみでならない。

3年を費やして徐々に復活したパレス・オヴ・ワンダーとブルー・ギャラクシーがフジロックには「なくてはならない存在」だということを見事に証明していたのが今年。「ラインナップでしかチケットは売れない」ってのが、業界では常識らしいが、さて、どうなんだろう。圧倒的な人気を持つスターが演奏している時だって、ちっぽけなステージやDJがいるところには人が集まっていた。その全てがフジロックの魅力。だから、ここに来るのだ。

結局、今年も、雑務に追われて、ほとんどライヴを見ることはできなかった。6月にローマにまで出かけていって、魅力を伝えようとしたフェルミン・ムグルサもクリスタル・パレスでチラ見しただけ。楽しみにしていたホワイト・ステージにはたどり着けなかった。春ねむりを見ようとアヴァロンに向かうと、NGOヴィレッジで難民問題をアピールするブースで昔からの友人と遭遇して長話。結局、わずかな時間しかライヴには接することができなかったが、インパクトは強力で濃密だった。ちなみに、かつてワールド・レストランでフィッシュ&チップスを売っていたのが遭遇したイギリス人。映画にもなったワイト島ミュージック・フェスティヴァルを10代の頃に体験していて、東京でやったフジロッカーズ・バーに来てもらって当時の体験談を聞かせてもらったことがある。

多くの人がそうだったように山下達郎のライヴはなんとしても見たかった。が、あまりの人の多さに恐怖を感じてステージが見えるところまで出かけてはいない。簡単には帰ってこられないと思って、フジロック・エキスプレスの本部裏で音を聞いてたにすぎない。

「仕事がどうなるかわからないんですけど、見に行きたいですよ。竹内まりやが出てきたら… もう、奇跡ですもの」

と、語っていたのは苗場プリンスで働いているスタッフの方。さて、彼はその奇跡を体験できただろうか。あの時の騒ぎや興奮は本部裏にも伝わっていた。実際に見に行った仲間からは、目の前で泣きそうになっていたのは日本人じゃなくて、アジアのどこかから来た人だったとか、海外からのお客さんがやたら多かったなんて話しも伝わっている。

山下達郎の方針としてライヴは放送させないんだとか。でも、それでいい。スクリーンを通じて伝わるのはその一部。Be there or be squareとはよく言ったもので、そこにいなけりゃわからない。うだるような暑さに襲われていたあの日、ひどい雨にやられてしばらくの後に始まったあの時の空気や臭い… そのなかで待ちわびた人たちが最初の音を聞いた時の興奮がどれほどのものだったか。ステージから放たれる音楽が空気を揺らして、それを全身で浴びる感覚はお茶の間ではわからない。さらに、フジロックそのものの魅力は伝わりようがないだろう。

あのステージに近づけなかったおかげで、苗場食堂で目撃することになったのがクリス・ペプラーのバンドだった。

「J-Waveで番組をやっているんですけど、そこで言ってたんですよね。今年のフジロックの一押しは、間違いなく山下達郎だよねって。そしたら、真裏で演奏ですからね」

と苦笑いしながら続けたライヴ。素晴らしかった。スライ&ザ・ファミリーストーンの『Thank you』をカバーしたのは、スライ・ストーンへのトリビュートなんだろう。そこにはブラック・サバスのフレーズも飛び出していた。言うまでもなくオジー・オズボーンへの感謝の気持。めちゃくちゃ嬉しかった。

始まるまではずいぶん長い時間を待たされるように感じるけど、動き出すと一瞬のうちに終わってしまうのがフェスティヴァル。どこかでメンバーには出会えてもライヴを見ることができなかった友人のバンドは数え切れない。出店している仲間たちにもわずかに挨拶できたに過ぎない。会場内外を歩きながら、できるだけ多くの仲間たちと言葉を交わそうと思うけど、なかなかうまくはいかない。そして、気が付くと最終日。いつものように夜明けを迎えるパレス・オヴ・ワンダーあたりに顔を出すのだ。そこで体験できるのが至福の時。会場から流れ出てくる人たちの表情が素晴らしい。若干の疲れを見せながらも、誰もがニコニコ、ニヤニヤと笑顔を見せている。それだけで「楽しかったよ」と語りかけてくれているように見える。名残惜しそうな表情を浮かべながら、たむろしている人も多い。クリスタル・パレスから音が消えて、バーのテントも最後の曲を流している。ザ・ハイロウズの『日曜日よりの使者』。それを大声で歌っている人たちに感動しながら、撤収作業に向かう。ありがとう。今年もフジロックに来てくれて。きっと、来年も、また会えるよね? 心の中で彼らにそう語りかけながら、今年の幕が下りていった。

さて、自分が体験できたフジロックはほんのわずかな部分でしかない。でも、全国から駆けつけてくれたボランティア・スタッフが、馬車馬のように働きながら続けてくれたこのがフジロック・エキスプレス。ここにもっともっとたくさんの「しあわせ」の瞬間 が刻まれているはず。これを書き上げて一段落したら、また、ジックリと拝見しようと思う。ありがとう。みなさんは、私の宝物です。

なお、今年動いてくれたのは以下のスタッフとなります。

■日本語版
HARA MASAMI(HAMA)、安江正実、堅田ひとみ、リン(YLC Photography)、森リョータ、みやちとーる、古川喜隆、おみそ、平川啓子、佐藤哲郎、©2025MITCH IKEDA、前田俊太郎、井上勝也、suguta、粂井健太、エモトココロ、Miyaryo
東いずみ、渡辺紗礼、YAMAZAKI YUIKA、越川由夏、浅野凜太郎、こっこ、Izumi、Eriko Kondo、阿部光平、丸山亮平、梶原綾乃、阿部仁知、イケダノブユキ、三浦孝文、石角友香、あたそ、西野タイキ

■E-Team
Jonathan Ruggles、Sean Scanlan

■フジロッカーズラウンジ
mimi、obacchi、SEKI、yamato

■ウェブサイト制作&更新
平沼寛生(プログラム開発)、迫勇一、坂上大介

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EZRA COLLECTIVE https://fujirockexpress.net/25/p_1088.html Thu, 31 Jul 2025 17:57:56 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1088 冒頭、「周りを気にせずずっとダンスしましょう」的なアナウンスが日本語で流れる。そしてメンバーが登場して“Shaking Body”をぶちかましてからずっと楽しい時間しかなかった。全身でドラムを叩きリズムを生み出すFemi Koleoso、正確無比なグルーヴを作るベースのTJ Koleosoが核となり、キーボードのJoe Armon-Jones、トランペットのJames Mollison、サックスのIfe Ogunjobiの5人組が各自ソロを回しつつ、ずっと踊らせ続ける。

フェミはドラムセットの外にでてきてシンバルを連打したり、何度もステージ前方にでてきてスタッフの女性を通訳にして「踊る準備ができている人~!」「若くして楽器を持つを夢を叶えます、フジロックで演奏する夢です」「ロンドンではみんなフジロックを知っています」「喜びの気持ちをセレブレイトします」「世界一のダンスフロアにします」とか何度も通訳を呼び込んでお客さんに語り掛ける。通訳を務めた女性もフェミに肩を組まれて困惑した感じだったけど、後半では慣れてきたのか意訳したりしてさらに盛り上げる言葉を投げかけていった。

このように観客とのコミュニケーションをこれでもか、というくらい取っていて、ブラスが演奏したフレーズを歌わせて「ガンバレ、ガンバレ」と煽ったり、手拍子させたり、サークルを作らせたり、スマートフォンのライトを点灯させたり、座らせてからのジャンプなど、できることは何でもやった感じ。“Body Language”のように本来ヴォーカルが入っている曲でも物足りなさを感じずにひたすら踊っていたのだった。

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今年も激写、水中ゴンちゃん https://fujirockexpress.net/25/p_8918.html Thu, 31 Jul 2025 13:52:27 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=8918 水中のゴンちゃんの表情に目が行きがちですが、陸上の景色とのコントラストも楽しんでほしい。水面が激しく動く中、どちらもがベストな瞬間を求めて1236枚シャッターを押したうちの3枚なのです。ゴンちゃんは動かずとも、川の流れはコンマ1秒の世界。

今年は橋にかかったタルチョーと呼ばれる祈願旗もあざやかですね。

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LITTLE SIMZ https://fujirockexpress.net/25/p_1031.html Tue, 29 Jul 2025 13:13:34 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1031 SEはなし、背後が見えなくなるほどのスモークが焚かれ、ブラックの衣装をまとったバックバンドのメンバー3人が事前の告知通り登場する。ドラムは元Black midiのMorgan Simpson(先に言ってよ!)。爆音の演奏が始まると、Little Simzが登場する。バックには「simz」と書かれたサッカー日本代表のユニフォーム、レッドのキャップ、オーバーサイズめのハーフパンツにコンバースのスニーカーと、ボーイッシュなスタイリングがすっごくかわいくておしゃれ!!!!!これは絶対に真似したい!(笑)

まずは6月にリリースされたばかりの『Lotus』から“Thief”、“Flood”が披露される。いろいろなライブを見ていると、演奏が始まった瞬間に「あ、もうこれは絶対にいいライブになるな」と確信できるときがある。この日のGREEN STAGEは、まさにそうだった。場の空気がぎゅっと締まり、雰囲気がガラッと変わる。バンドサウンドだからこそ、音は厚みを増し、立体感を伴いながら、ダイレクトに身体に響く。シムズは殺傷力すら覚えるビートにラップを矢継ぎ早に重ね、観客たちだって手を挙げ「Thief!」と一緒になって歌う。曲中に聴こえる狼の雄たけびだって一緒になって叫ぶ。この曲の肝であると言ってもいい“Flood”のタムも、音のいいステージだとこんなに躍動感溢れ、聴いている者をこんなにも高揚させるのか……アフロービート全開の、ゴリッゴリなベースも身体に染み渡る。
“Two Worlds Apart”、“I Love You, I Hate You”と2021年リリースの『Sometimes I Might Be Introvert』の曲が続く。バックバンド3人と音数も少ないのに、繰り返されるビートのなかに時折織り交ぜられるフィルインがあまりにも心地よい。この人、HIP HOPも叩けるのか、なんでもできんじゃん……と思いながら、ドラムが加わるだけで音の印象ってこんなにガラッと変わるのか、と改めて実感する。ピンクのスポットライトが美しく輝く“Young”では、ステージを歩き回り、手でハートマークを作りながらフロウを刻む。3年前のODD BRICKでは、たったひとりマイク一本で圧巻のライブを披露し、そのときだって呆気に取られた。けれど、この日はお客さんの反応を見ながら、さまざまな方法で返事をしているのがわかる。彼女のなかで変化があったのかなと思った瞬間でもあった。

サポートメンバーがいなくなり、荘厳なイントロにシムズの高速ラップは“Venom”だ。モッシュを煽ったかと思えば、まさかのウォール・オブ・デスのリクエスト!そこに応える観客たちもステージ中央に空間を作り出し、思いっきりモッシュをする。こんなにビートの重いHIP HOPでこんなこと起こるんだ!あまりの出来事に、おかしくって笑ってしまう。その様子を眺めるシムズもうれしそう。夕方に差し掛かり、ほんの少し涼しさを取り戻した苗場が、どんどんヒートアップしていく。
シムズがダイナミックなリズムの合わせて踊りまくる“Mood Swings”と“SOS”は、『Drop7』から。最新作に偏らず、新旧さまざまな曲をセットリストに組んでくれるのもうれしい。“SOS”で踊りながらサポートメンバーが戻ってくれば、レガシーなピアノとCleo Solの浮遊感のある歌声が気持ちのいい“Selfish”。語りかけるようなシムズの歌に「I‘m so selfish」のシンガロングも起こり、“Only”では歌詞の一部を「Japan」に変えてくれるというサービスのよさ!でも彼女のほころんだ笑顔を見ていると、きっと今この場で一番楽しんでいるのはシムズ本人なのだと感じる。こんな風に、誰がどう見ても楽しそうな姿でフジロックのステージに立ってくれることが誇らしい。それは、次の“Lion”の自身を喪失したからこそ出来上がった自ら鼓舞し、自信を取り戻すようなリリックからも、彼女自身の心境の変化がうかがえる。いろんなものを乗り越えたからこそ、こんな風な穏やかな表情を見せてくれたのかもしれない。

繰り返されるアフリカンなグルーヴにサポートメンバーそれぞれの腕が光りまくる“Point and Kill”、場をグッと落ち着かせた“Free”は、やっぱり息をするのも許さぬほどのライムなのにどこか余裕すら感じる。爽やかなサウンドに手を左右に揺らし、「Japan!love you!」という一言が聞けた“Woman”に、最後は“Gorilla”!イントロから神々しく、縦に揺れるしかないグルーヴたっぷりの重いサウンドは、まさに今日にライブにぴったり。圧巻でありながら、キュートに笑う姿だけじゃなくて自分に向かってくる虫に「Shit!」と言いながら驚く様子とか、もう本当に非の打ちどころのない完璧なステージングを見せつけられた。

MCで、「私の音楽を聴いてくれてありがとう!人生、変わったよ!」という言葉が強く記憶に残っている。「Louder!」と言い、観客が更に大きな声を上げれば、噛み締めるように見渡して頷く姿も。私だって、人生変わったよ!こうしてライブをするために遠い日本で今日みたいな凄まじいライブをしてくれて、あの場にいる人の人生を変えてしまったと確信できる時間だった。

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まらしぃ https://fujirockexpress.net/25/p_1079.html Tue, 29 Jul 2025 05:23:16 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1079 ボカロ、アニソン、ニコ動、そしていわゆる「弾いてみた」などなど。あまりにもフジロックとイメージが結びつかないので、ラインナップ発表の際、熱心なファンとよく知らない人の両者から「!?」という反応をされた、今年のフジロックで最も異色の存在と言える、名古屋在住のピアニストまらしぃ。僕は後者なのだが、周りに熱心なファンもちらほらいるし、名古屋の取材スタッフの先輩方はみんな彼が好きなようなので、楽しみにしていたライブのひとつだ。

ピアニストといえば2022年のかてぃんこと角野隼斗も異色ではあったが、ヘヴンでクラシックを演奏するのとではその異色度合いもわけが違う。そもそもどんなライブをするの?顔出しNGはどうなるの?ボカロも入れたりするの?などなど、色々想像できないので、逆に楽しみになってきた。

開演前には持参したサルのぬいぐるみ(さるしぃというらしい)にステージ中央に置かれたグランドピアノを入れて撮影するファンの姿も見られ、すでにいつもと違う雰囲気を醸し出しているレッド・マーキー。登場したまらしぃはダボっとした黒Tシャツとハーフパンツ、レギンスにスニーカーというフジロッカーっぽい服装だが、頭は鹿か何かのツノがついた黒い兜にゴーグルという組み合わせで、なんかすごい見た目のバランスだ…。

期待感はさらに高まる中、最も有名なボカロ由来の曲のひとつであろう“千本桜”を披露。大きな手拍子で迎えるレッドのオーディエンスに応えながら、コミカルな動きを交えどんどん加速するまらしぃの指先。おお、めちゃくちゃエキサイティングだ。

「フジロックこんにちはー!インターネットでピアノを弾いていただけの人なんですけど、超楽しみにしてました!」と出演の喜びを語り、フジロックに向けた特別な選曲を考えてきたと話すまらしぃ。説明不要の“残酷な天使のテーゼ”はおしゃれなリズムのアレンジが冴え渡り、Bメロの手拍子などそのまんまYOASOBIのライブみたいな雰囲気の“アイドル”は、ラップパートの質感も完璧に再現され、まるでikuraが歌っているような幻聴が聞こえてくるほどだった(実際にフロアの誰かが歌ってたのかもしれない)。

続いてシューベルトの“魔王”をアレンジしたという“ちょっとつよい魔王”は、緩急の表現がえげつない。レッドでクラシックを楽譜通りに弾いてもおそらくあまり合わないだろうが、まらしぃのコントラストが強調されたプレイは白熱のライブやDJアクトが中心のレッド・マーキーでも抜群に映えている。

「どうもありがとう!楽しいっすね!」と話し、丁寧に演奏した曲と次に演奏する曲を説明する姿は、隣のオアシスなどでパフォーマンスをする大道芸人みたいでもある。それゆえに初日にSummer Eyeがそんな感じで曲の予告をしていたのはおもしろかったが、ライブアクトとしてはなかなか見たことのないスタイルだ。

お次はオリジナル楽曲のまらしぃタイム。細やかな音の粒が小気味よく踊るよう“新人類”に、吹き抜けるような爽やかで優雅な“88★彡”は繊細なタッチと力強いピアノ捌きが強調されてて、まさにコンサートではなくライブ仕様という感じの仕上がりに。速弾きに圧倒される“Love Piano”も、単にテクいだけじゃなくて感情がのった指先がドラマチックな午後のひとときを演出。カラフルにミラーボールが照らされるライティングもばっちりだ。

「音楽をやっている人間からしたら夢のような話で、本当に胸がいっぱい」とフジロックへの憧れを語ると、このステージでぜひ弾きたかったというポケモンと初音ミクのコラボ楽曲“むげんのチケット”を披露。予習のためにボカロverを聞いていた僕だが、声色の違うパートも繊細に表現する演奏に触れると、やっぱり歌っているような錯覚に陥る(実際にフロアの誰かが歌ってたのかもしれない)。

それにしても、曲間や静かなパートでは後ろのブルー・ギャラクシーのビートが混ざってくるのがなんともおもしろい。コンサートならたまったもんじゃないし嫌って人もいるだろうけど、これもまた野外フェスティバルのライブの醍醐味だろう。ボカロデビュー曲の“夢、時々…”は、リズムもたゆたうように甘く甘美でとろけるようだった。

MCではアンパンピアノ?という小さなピアノをちょこんと置き、“アンパンマンのマーチ”をかわいい感じで披露。「どうも、アンパンピアニストでした」とまらしぃ。僕は思わずキョトンとしてしまったが、こういった小遊びも彼の魅力の一つなのだろう。お次はシューティングゲームの東方Projectから“ネイティブフェイス”。僕はそのゲームをあまりよく知らないけど、君の気持ちは本当によく伝わってくる。素直に喜びを表現しながら僕らと楽しむまらしぃの誠実な姿勢に、いつの間にか惹かれている僕がいる。

「この曲をここでできて本当に嬉しい。僕の人生を変えてくれた曲だったので」と“ネイティブフェイス”を演奏できた喜びを感慨深そうに話すと、フロアから「俺も嬉しいぞー!」と飛び出すあたたかい一幕も。「次の曲が最後の曲です!」「えー!」のフロアの声量が、フジロックでよく見るようなノリじゃなさすぎておもしろかったが、熱心なファンも彼をよく知らないフジロッカーもこのひと時を一緒に楽しんでいる。

そして最後はメドレーの“ナイト・オブ・ナイツ”。リズムが際立つテトリスの曲“コロブチカ”や、やたら音数の多いアレンジのパッヘルベルの“カノン”などを織り交ぜ、縦横無尽に展開するメドレーを堪能し、大喝采の中まらしぃのフジロック初ライブは終演を迎えた。

やろうと思えばボカロ音源を入れたりもできただろうが、ピアノ一つでここまで多種多様な表現をするまらしぃにはシビれてしまったし、例えば“Seven Nation Army”なんかをカバーすればもっとわかりやすく盛り上がったかもしれないが、極端にフジロックに寄せるのではなく普段のファンへの姿勢がベースにあったことも彼の人柄を感じさせた。熱心なファンだと話していた友人をライブ中見かけたが、とてもうっとりしている様子だったので話しかけるのはやめておいた。門外漢だった僕もめちゃくちゃ楽しかったので、よかったら後で話しましょうね。


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THE HIVES https://fujirockexpress.net/25/p_1076.html Tue, 29 Jul 2025 00:19:11 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1076 定刻5分前くらいにレッド・マーキー後方から入ってみると、すでに屋根のエリアになんとか入れるかくらいの人が溢れていて、登場の気配だけで歓声が飛び交う異様な熱気を放っている。SEが止まった時の大歓声に早速圧倒され、クリックに合わせてカウントダウンのように加速する手拍子の熱量にも圧倒され、ライブがはじまる直前の前方につまるやつ(なんか名前ないのかこの現象)も、今まで感じたことのない勢いがあった。始まる前でこれってなんなんだ。これからなにがはじまるんだ。

“Bogus Operandi”、“Main Offender”と繰り出し、最初からもうトップギアの熱狂を見せている2005年以来のハイヴスとレッドのオーディエンス。隣のブルー・ギャラクシーやGAN-BAN SQUAREから苦情がくるんじゃないかってくらい爆音のバンドサウンド。そして、挙動ひとつひとつがフロアの熱気のためにあるかのようなハウリン・ペレ・アームクヴィスト(Vo)の目が離せない立ち振る舞い。もう知ってる曲かどうかとか関係なく、わけがわからず巻き込まれてしまう。BBCが「自然の力」とか評したのはこういうことか。こりゃあ体感しないとわからない。

“Rigor Mortis Radio”でも凄まじい手拍子が巻き起こり、全部聞き取れるわけじゃないが、大袈裟な手振りとテンションでもうなんかアツいペレのMCにも、挙動ひとつひとつに大歓声。一曲一曲これでもかと煽りを入れ、すっげえタイトルだなと思ってた来月リリースの最新作『The Hives Forever Forever The Hives』から収録曲を演奏するたび、タイトルをコールアンドレスポンスする用意周到っぷり。フロアを楽しませようとするホスピタリティが溢れる、極上のロック・エンターテイメント。こんなの他では味わえない!

そんな最新作からの“Paint A Picture”では曲の途中で深々とお辞儀するペレ。なんかアスみたいで清々しいな、いやアスがハイヴスみたいなのか。北欧の先輩の魂を受け継ぎながら我が道を行くんだぞ。とか思っていると、ステージの5人がフリーズ。ペレもお辞儀の姿勢のまままったく動かない。さすがにそろそろだろと思ってもまだ動かない5人の姿にどんどん歓声が大きくなり、満を辞して動くと同時にフロアも大爆発。“Legalize Living”も最高潮に盛り上がり、ハイヴスの5人は単なるレジェンドではなく、現行最前線のライブバンドだということをリアルタイムで更新していく。

「BIG HIT IN FUJIROCK!」と繰り出した“Hate To Say I Told You So”はちょっとディレイする入りにゾクゾクしたし、ハイ・ヴォルテージをさらに大きくする緩急が随所に織り交ぜられた百戦錬磨のライブバンドの貫禄。だからこそ異様に速い“Trapdoor Solutinon”も際立っていて、“Enough Is Enough”、“Come On”などでも、終盤に向かって熱量を膨張させていくレッドのオーディエンスがそこにはいた。僕も汗だくでかなり消耗しているが、音漏れじゃなくて意地でもフロアに食らいついていたいなにかがここにはある。

何度も繰り返して来た「レディース!ジェントルマン!レディース&ジェントルマン!」という煽りも一際歓声があがり、最後は言うまでもなく“Tick Tick Boom”。台に乗って盛り立てたり日本語で「大好きだよ!」と繰り出したり、後半ではかなり長尺のメンバー紹介を織り交ぜたりと、ここでもフロアを高揚させるペレ。右と左に寄って中央を空けてくれという指示にウォール・オブ・デスか!と思っていると、フロアに降りてペレがPA前あたりまで来ているらしい。何が起こってるんだ?そしてペレに言われるがままみんなしゃがんで(とはいえ何が起こってるか気になりすぎるので中腰気味)、ブレイクで一気にステージに向かって駆けていくペレとジャンプするオーディエンス。もうこれには大興奮で、残っているものを全部ぶちまけてハイヴスのライブは終幕を迎えた。

疲れてたしうしろの方でゆっくり観るつもりが、いつの間にかかなり前に来ていた。全部ハイヴスのせいだ。このあと少し休むつもりだったのに、気づいたらこの熱狂を共有した人たちの流れに乗ってグリーン〜ホワイトに向かっていた。全部ハイヴスのせいだ。でもさらに疲れたはずの心と身体に再びギアが入り、消耗感さえ心地いいのは、全部ハイヴスのおかげだ。完全燃焼して再起動というわけのわからんことをやってのけた、ハイヴスとオーディエンス。「地球上で最高のライブバンド」「ロック界最高のフロントマン」は伊達じゃないことが証明された、今年のレッド・マーキー大トリのステージであった。

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VULFPECK https://fujirockexpress.net/25/p_1023.html Sun, 27 Jul 2025 09:07:34 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1023 いろいろあり過ぎて何から書いてよいのやら。いってみれば楽器ができる人たちで集まってパーティをやっている感じ。「今度はお前がドラム叩けよ」とか「この曲はキーボード弾かせて」とかお互いに楽器を交換しながら演奏する。「今日女の子が遊びに来てるから歌ってもらう? ついでにギター貸してあげろよ」みたいな感じを何万人も観ているグリーンステージでやってしまう。その楽しさが何万人にも伝わってしまう。そんな音楽だった。

初見の人は、誰がドラマーなのか、誰がキーボーディストなのか、誰がメインのヴォーカリストなのか、誰がゲストで誰がサポートメンバーなのか……わからなかったかもしれない。でも、それでいいのだ。楽しかったのならそれでいい。

この日、ヴォーカルを取ったのは確か5人。いろんな楽器もやるセオ・カッツマン、サポートで先日のコリー・ウォンでのライヴにも参加したアンワン・スタンリー、サプライズゲストで金曜日のフィールド・オブ・ヘブンに出演したマヤ・デライラ、パーカッションなどもやるサポートのジェイコブ・ジェフリーズ、サックスやキーボードを担当するサポートのジョーイ・ドシック。「ヴルフペックってコーラスグループなの?」というくらいヴォーカルを取れる人が入れ替わり立ち替わり登場した。

“Animal Spirits”から始まったライヴは、ベースのジョー・ダートがクイーンの“Another One Bites the Dust”を弾くの? 弾かないの? というやり取りを続けて結局、弾かな~いとか、キーボードのウッディ・ゴスがカウベルを叩くの? 叩かないの? というやり取りを続けて結局ちょっとだけ叩く~というコントみたいなことをやっていて、そんなことが結果的に大受けするのだからすごい。バンドへの信頼感がないとできないことだろう。基本は超絶テクニックを持つ人たちによるファンキーでポップなショウだった。先月来日公演をおこなったコリー・ウォンは今回はサポートする立場に回った。

先述の通りマヤ・デライラが登場して“Tokyo Night”を歌うだけでなくコリー・ウォンからギターを借りて弾いた。本編は“Back Pocket”で終わり、アンコールを求める拍手とともにみなさんお待ちかねの“Dean Town”のリフをステージ前の人たちは歌いだす。そしてバンドがステージに戻ってきて“Dean Town”。イントロから歓声と例のリフの大合唱、そしてベースラインを歌う人も多数。最高に楽しく終えたのだった。ステージ前方にメンバー全員、マヤ・デライラまで呼び込んで客席に挨拶……と思ったらアンコールを求める声が大きく、再びステージに戻って“Funky Duck”で締めくくったのだった。

Set List

Animal Spirits
Cory Wong
Tesla
Lonely Town
Tender Defender
1612
3 On E
Wait For The Moment
Tokyo Night
Big Dipper
Matter of Time
In Real Life
Running Away
This Is Not The Song I Wrote
How Much Do You Love Me
CLA
New Beastly
Back Pocket

Dean Town
Funky Duck

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YHWH NAILGUN https://fujirockexpress.net/25/p_1067.html Sun, 27 Jul 2025 04:33:40 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1067 始まる前にはWet Legの“catch these fists”が控えめにかかっていた。そして14時にメンバーが登場する。ヴォーカルのZack Borzoneはマイクスタンドのところで変なヨガみたいなポーズをとっている。ステージ下手にギターのSaguiv Rosenstock、中央後方にはドラムのSam Pickard、上手にはシンセサイザーを操作するJack Tobiasがいる。

まずは“Penetrator”から始まる。ザックは無地のTシャツにバケットハットを被り、けいれんしているかのように歌い踊る。この奇妙な音楽性だったら「こうあって欲しい」という変なアクションをみせてくれる。ほどんとMCもなく変な動きをしながら歌うのだけど、唐突に指でハートマークを作って掲げたりして、そうしたことも含めて、変さと可愛さと格好よさはすべて紙一重なんだということがわかる。

ステージをみているとYHWH NAILGUNがどのように音をだしているのかがわかり「あ、この音はギターでだしていたんだ」と、音源を聴くだけではわからなかったけど、その設計図をみているような体験だった。シンセサイザーの音を歪めているのかと思ったら、その音がギターからでてきたとわかったときの答え合わせ感が楽しい。“Castrato Raw(Fullback)”のドドドドド!と鳴る音はさすがにドラムじゃないんだとか。

リズムは変拍子、あまり聴いたことがないギターの音色に、エレクトロな音が混ざり、ポップさには背を向けた音楽――80年代ぽい実験精神があって、彼らがニューヨークが拠点だというのもうなずける。短い時間だったけど強烈なインパクトを残していったのだ。  

Set List

Penetrator
Changer
Castrato Raw(Fullback)
Pain Fountain
Animal Death Already Breathing
Tear Pusher
Sports Center
Вlackout
Hawk Violence
Back Muscle
In cognito
Sickle waik
Ultra Shade
Eve Shivers at Columbine
Venison Mama
Iron Feet
Love at me, In Rainer

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CA7RIEL & PACO AMOROSO https://fujirockexpress.net/25/p_1028.html Sat, 26 Jul 2025 12:33:52 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1028 まず、全力で彼らを呼んでくれてありがとうございます!(叫ぶ)。Tiny Desk Concert史上最多再生回数を叩き出したYouTube動画を機にブレイクスルーを果たし、急激な状況の変化そのものを作品にしたような『PAPOTA』のリリースに伴う2025年のワールドツアーの一環の今でしか味わえないライブが実現した。しかも成功の渦中にありつつ、その捉え方は自嘲を含むウィットに富んだもの。このリアリティはギリギリ今しか味わえない。再びありがとうございます。

グリーンの初っ端からアーティストの顔写真のバックドロップが吊るされるのも珍しければ、朝イチのステージで火柱が上がり、Co2がたかれるのも珍しい。本編ツアー中であると同時にコーチェラにもグラストンバリーにもベルリンとパリのロラパルーザにも出演するという、旬の中の旬。11:00からの出演にも関わらず続々人が押し寄せてくる。モッシュピットにはコアファンが詰めかけ、カメラがPACO AMOROSO(以下、パコ)とおそろいのファーハットを被ったファンを抜く。バンドメンバーもファンを獲得しているキャラの立った面々で、長いサングラスのフィリペ・ブランディ(Ba)、ずいぶん洗練されてきた若き鍵盤マスター、ハビエル・ブリン(P/Key)、パワフルなエドゥアルド・ジャルディーナ(Dr)とマクシ・サジェス(Perc)に加え、ホーン隊という布陣だ。

南米のイージーリスニングっぽい音楽に続き、生演奏が入るとこれがグリーン本日一発目とは思えないテンションに。主役のCA7RIEL(以下カトリエル)とパコが現れると、もう男性も女性もその他の人もみんな2人に恋してしまったような熱狂ぶりだ。カトリエルはオールブラック、パコはピンク基調の空調服。毎回違う衣装で臨む2人が酷暑の苗場仕様をデザイナーとともに考えたのかもしれない。野外の労働に不可欠なこの技術を衣装に用いたアーティストは他にもいるのだろうか。

ラテン/レゲトンな“DUMBAI”からスタートしたが、なんとご丁寧にもダブル・ビジョンに歌詞の翻訳が!これ、彼らを知らない人にもこの後、ストーリーを伝える役割を十二分に果たしていたと思う。着座スタイルなのにめちゃくちゃ湧くのは曲のキャッチーさと2人の頭のてっぺんから爪先までポップな存在感のせいだろう。パコは空中遊泳みたいなアクションを見せ、大いに湧かせる。“BABY GANGSTA”“MI DIOSA”と、ライブで馴染のショートチューンを繰り出し、“AMINO”ではカトリエルのメロディアスなラップの精度にあらためて驚かされる。もう何をやっても人間的・音楽的な筋力が半端ないのだ。

イントロで大歓声が起きた“IMPOSTOR”はビッグディールを交わすチャンスにも、自分がそんな大した人間だと思えないという逡巡が綴られる。成功を俯瞰してすぐ曲に昇華できるクレバーさが、下ネタとラブアフェアだらけの歌詞世界を笑えるものにしてくれる。カトリエルのギタリストとしての腕も素晴らしく、抹茶ミルク色のテレキャスから洒落たフレーズを連発。1曲のあいだに何度かギターを弾くのに、わざわざ手のひらに乗せたり、一度置いたり忙しい。インタビューで「魂と指先が直結してる者がどんな時代でも本物」という意味の発言をしていた彼。その意味を目にしている気分だ。その後も“BAD BITCH”など人気曲をシームレスにグリーンに放流していく。バンドも演奏することが異様に好きな連中だ。

おのおのソロを取る曲も挟みながら、“SHEESH”でいよいよ立ち上がり、しなやかなアクションでちょっと驚くほどのオーラを放つ2人。後半の見ものはカトリエルがポーズをキメつつ空調服の電源をオフにしたのか?空気が抜けたと同時に鍛えられた半裸を見せてパフォームするという流れ。こんなステージパフォーマンス、他で見たことないよ。対照的にパコは空調服の丸いシルエットのままライブを続け、そのシュールさもまたカトパコならではのユーモアに感じる。

2人ともエキサイトしてるのは手に取るようにわかるが、言葉にするのはパコの役目なのか「お前らマジでアツいな!センキュー!センキュー!センキュー!」そして、「また戻って来る」を5回繰り返してオーディエンスは熱狂&爆笑。何もかもがトゥーマッチだけど、それが似合うスター性を前にすると久しぶりに何か濃厚な料理とアルコール度数の高いお酒を食らったように完全降伏してしまう。

人生に起きた突然の成功物語は幼馴染の友情を歌う“DIA DEL AMIGO”で終着点にたどり着くのだが、旅先でたまたま「俺たち同じ女の子と寝てたのか!?」というよくない仲の良さを発揮しつつ、女の子や会社の偉い人なんかに騙されてたまるか、友情の方が大事なんだという結末に至ると不思議と泣けてくる。「君は友達」というシンガロングはオーディエンスを巻き込んでカトパコの凸凹した人生を祝うようだった。それでエンディングかと思いきや、おもむろに再登場。若きテクニカルなキーボーディスト、ハビエル・ブリンのソロも盛り込んだ“EL UNICO”、そしてエンディングへ。最後はキスを交わす2人。もうなんか無敵である。友情も愛情も全部あって、地獄も一緒に過ごせそうな2人のとんでもない人生の苛烈な季節を見せてもらったのだ。

ちなみに秋からはケンドリック・ラマーの南米ツアーに参加するそうである。もうどこまででも行ってくれ、と思う。

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PERFUME GENIUS https://fujirockexpress.net/25/p_1055.html Fri, 25 Jul 2025 13:41:32 +0000 https://fujirockexpress.net/25/?p=1055 背後のスクリーンには一面ブルーが映し出され、サポートメンバーが次々と登場する。バスドラの音に合わせた拍手が起こり、ハンドマイクを持ったPerfume Geniusことマイク・ハドレアスがステージ上に姿を現すと、大きな歓声が起こる。
“In a row”、“It’s a mirror”、“No front teeth”と、今年リリースされた最新アルバム『Glory』からの楽曲が続く。マイクの渇いた歌声と、身体の芯に響くようなドラムとべースの低音が心地よい。ローファイさを覚える楽曲の中でも時に力強く歌いながら、ステージで妖艶にゆったりと踊るマイク。中央に置かれた椅子に座ることもあれば、もたれかかったり持ち上げたりと、さまざまな体制で歌う。まるで“In a row”のMVを再現しているようにも思えたけれど、仰向けだろうが、シールドが引っかかろうが、椅子の背もたれの間を潜り抜けようが、声は揺らがず、一定の声量を保ち続けているのだから流石ではあった。

小さな爆発のようなサウンドで始まった“Slip away”では、リヴァーブのかかったマイクの浮遊感たっぷりの歌声、ゆったりと聞き入った“Left for tomorrow”でも、大きな歓声が上がる。バンドサウンドとして奏でられるPerfume Geniusは、はっきりとした音の輪郭を感じることができ、立体感の伴った音のひとつひとつが混ざり合うようであり、音源とはまた異なった一面を持っているのだと改めて実感する。何より、ステージ上を動き回るマイクが次のどんな行動をとるのか、まったく想像ができなくて、こんなにも自由でいいのか、ということを改めて感じさせる。こういうところもライブならではであるように思える。

クラップ&ハンズではじまった“On the floor”では、コミカルなギターのリフ、遊びのあるドラムが鳴れば、身体を揺らしながら聴きたくなる。そして、ピンク色のスポットライトが相まってきらめくキーボードの音とともにマイクの裏声がドリーミーに響く“Jason”、そしてしっとりと聴かせながらも壮大な雰囲気を持ち出した“Otherside”のあとの“Describe”では、ゆっくりと確かめるような低音、マイクが丁寧に歌う姿には高揚感すら覚える。
“Eye in the wall”では、ステージ上を駆け回りながら、ドラム前に設置されているチュール素材のライトブルーのバカでかいもこもこの布に自ら絡まっていくマイク。いや、なんで?と思わなくはないけれど、どれだけ自分が絡まろうが、マイクスタンドごとめちゃくちゃになろうが、それが当たり前の事象みたいに大真面目に歌うのだからおかしくもあった。
もこもこの布をまるでドレスのように纏う“My body”では、シリアスな低音、緊張感を保ちながらも、全身に浴びるようなサウンドが心地よい。
最後、“Queen”では、印象的なギターの音が鳴らされるなか、マイクスタンドに絡まりまくったライトブルーのもこもこをまるで漁かのごとく引きずりながら、寝そべったりしながら訴えかけるかの如く歌うマイク。それでもステージには他のメンバーを残し、去っていくマイク。バンドサウンドにこだわりを感じながらも、まるで前衛的な現代アートのインスタレーションの一部を見ているような時間でもあった。

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