全くふぬけのようになって一ヶ月が過ぎた。今年も開催前の火曜日から現場に入り、苗場での撤収作業が終わって東京に戻ってきたのはその1週間後。その後もしばらくの間は更新作業が続き、8月の第一週には全ての作業が終わって、この原稿を書かなければいけなかったんだが、とてつもない脱力感に襲われて、なかなか手を付けることができなかったのが申し訳ない。
どこかで、「一年の計はフジロックにあり」といった趣がその理由のひとつかもしれないとも思う。これで全てに一区切りを付けて、また動き出すにはしばらくの休息が必要だったというのが正直な気持ちだ。
数年前に新聞を作ったことがきっかけで、ここ数年、毎年繰り返していることにフジロックに集まってきたみなさんの集合写真の撮影がある。1枚は前夜祭のレッド・マーキーで、もう一枚は全てが終わったときのグリーン・ステージ。今年もそれをやっているんだが、初めてこのステージに立ってみなさんに声をかけたとき、最も嬉しかったのはこんなことかもしれない。
「お帰り!」
と、声をかけると、
「ただいま!」
と返事が返ってくる。この瞬間のみなさんのはじけた笑顔がフジロックの宝物のひとつではないかと思う。おそらく、みなさんにとっても、「一年の計はフジロックにあり」ということではないかと思うんだが、いかがなものだろう。1年の区切りがフジロックで、なにやら盆と正月とクリスマスあたりが一気にやってきた感覚に近いかもしれない。
それでもフジロックが終わって音楽好きの人と話していると、こんなことを耳にすることがあった。
「実は、初めて行ったんですけど、こんなに楽しい思いをするとは思いませんでした」
すでにおなじみとなっている人にとっては「一年の計」なのかもしれないが、音楽好きな人にさえフジロックの実態はまだまだ噂で耳にする「イヴェント」程度のものなんだろう。1日に3〜4万人が集まると言われているフジロックが、実は、まだまだマイナーな存在なでしかないことを実感することになる。
だからこそ、一般のメディアでは伝えられない「そのまんま」をできるだけ早く、正確に伝えなければいけないと思うのだ。いいところもいっぱいあって、まだまだのところもあるだろう。フジロックが完成しているとは全く思えない、その一方で、「フェスティヴァル」と呼ばれているものに足を伸ばしても感じるのはフジロックの素晴らしさだったりもする。フェスティヴァルって何なんだろう? なにが自分たちを魅了しているんだろうという問いかけは、40年も続くグラストンバリーに出かけても同じようにわき起こってくるのだ。わかっているのは、一度、足を踏み込めばなかなか抜け出せない魅力がそこにあるということ。そして、それがいつの間にやら1年の区切りになるような存在になってしまったことではないだろうか。
さて、今年のフジロック・エキスプレスがこだわったのは「なによりも早く」現地からの情報をお伝えすること。姉妹サイト、スマッシング・マグを中心に活動するフリーのライター、写真家を核に、fujirockers.orgのスタッフ、ボランティアなどでメンバーが構成されているのは例年通り。効率化と経費削減を目指してスタッフの数をぎりぎりに抑えると同時に、更新作業を中心として稼働するスタッフに加わってもらった。加えて、英語版は完全に分離させて、今後も増えていくだろう海外からのアクセスに対応できるような体制を取っている。
おかげでレポートがアップされるスピードはかつてなかったほど速かったのではないかと思う。一方で、ネット・ユーザーがかつてないほど増えたからだろう、アクセスへの付加も大きくなり、作業ができなくなることも多かった。こういった問題に対してさらに臨機応変な対応や方法も模索しなければいけないと思っている。
各レポートでの写真の点数が少なかったのは効率を上げるためだったんだが、それが本当によかったのかどうか疑問は残る。また、しばらく後に姉妹サイト、スマッシング・マグで完全版を作ろうというアイデアもあったが、なによりも現場から熱々のままお届けするべきなんだろうと思うし、それをさらにいい形に進化させるべきだろう。いずれにせよ、今年の反省をきっちりとした上で、来年のエキスプレスを目指すことになるはずだ。
同時に、fujirockers.orgもまだまだやらなければいけないことが山積している。新鮮な視点を持った新しいスタッフに加わってもらって、我々を魅了しし続けるフェスティヴァルに迫っていこうと思う。
なお、今年のスタッフは以下の通り。
日本語版
北村勇祐、前田博史、中島たくみ、古川喜隆、直田亨、岡村直昭、熊沢泉、穂谷益代、深野輝美、佐俣美幸、森リョータ、本堂清佳、永田夏来、船橋岳大、輪千希美、名塚麻貴、横山正人、近澤幸司、丸岡直佳、近藤英梨子、岡安いつ美、伊部勝俊、藤原大和、飯森美歌、土井優子、池田信之、西野太生輝、千葉原宏美、吉川邦子、松坂愛、伊藤卓也、小田葉子
英語版
Phil Brasor、Nick Coldicott、Shawn Despres、David Frazier、Jason Jenkins、Joe Kern、Clay Miller、Dom Raos、Jeff Richards、Sean Scanlan
更新およびネットカフェ
大竹恵理子、金甫美、塙卓真、廣瀬圭治、小幡朋子、湯澤厚士、鵜飼睦子、山本毅
ウェッブ・デザイナー&プログラマー
三ツ石哲也
プロデューサー
花房浩一