ワルノリ満載フジロック ~スティーブが俺に輝けと叫んでいる~
「結婚」が人によってゴールだったり墓場だったりするように、言葉の解釈は人によって異なるものが多々ある。「フジ」という言葉は人によって苗場を連想するかお台場を連想するかで異なり、「楽しませる」という言葉についても、どのようなアプローチを取るかなんて人それぞれである、本当にそうだ。
深夜レッドマーキーの中でも名前ともども強烈な個性を放つスティーブ青木。父は鉄板焼チェーンを広げることでアメリカンドリームを成し、姉妹のデヴォン青木はスーパーモデル。そしてスティーブ自身もあらゆるパーティに引っ張りだこのDJで…と、セレブリティなイメージがまず先行する彼だが、実際にはどうだろうか。そんな気持ちでレッドマーキーへ向かった。
例によって満員で迎えられているこの時間帯。実際に目にしたその光景は…カオス!!!そこにはDJセットとその身一つというシンプルなセットとは裏腹に、そこいらのロックバンドよりも何倍もステージを走りまわり雄叫びを上げるロン毛のヒゲ男性の姿があった。サウンドはイケイケのエレクトロで、ギュワンギュワンとシンセサイザーがレッドマーキーを震わせている。本来それだけでも夜には十分なエッセンスとして響くようなもんだが、スピーカーだけに盛り上がりを任せていられるかと言った具合に、彼はフロアに向かって煽りまくり、それに応えるかのようにオーディエンスの咆哮が上がり、縦揺れのダンスフロアが形成されていく。本人がフィーチャーされているThe Bloody Beetrootsの”WARP”なんかをスピンしながら、2009年出演の作曲者以上に彼だけでテンションの振れ幅を超えていた。ていうかスティーブ先輩、DJブースの前にあんまりいないじゃないすか…(笑)!
いやはや「DJ」もひとそれぞれ、その「盛り上げ方」も人それぞれである。この場においてのそれらの意味は、まるで大学のサークル打ち上げの如き下世話なアッパー感で溢れており、ビートのブレイクに合わせてシャンパンシャワーをブッかけられた人のように一部ではしかめっ面されかねない乱暴な大興奮の宴だ。それを振り返って言おうじゃないか、「楽しかった」って!
写真:中島たくみ
文:RJ