レベル(反逆)のスピン
ソウル・フラワー・ユニオンにも、ビッグ・オーディオ・ダイナマイトにも、エイジアン・ダヴ・ファウンデーションでも、ステンシルでデザインされた旗が振られていたことを覚えている方は多いと思う。
今まで何度も、ジョー・ストラマーの旗をフジに持ち込んで来たのが彼だ。今年は、原子力エネルギーからのシフト、民衆は力(声、拳)を持っているなどなど複数の旗を持ち込んでいた。
そんな彼は、ザ・クラッシュからさかのぼり、レゲエやスカといったレベル(反逆)をスピンするDJだ。ターンテーブル上に乗るのは、老舗クラブイベント『ロンドンナイト』で何度もかけられたキラーチューン。パレス・オブ・ワンダーにたむろす人間には、このイベントを経験してきた者が非常に多く、アナログ(レコード)志向のスピンに、ニヤリ、としてしまう。
彼の「ロック」とは、権力にもの申す手段だ。ドクター・イハラこそ、ジャンルを飛び越えた、数少ない『レベルDJ』と言い切って良いかもしれない。
文・西野太生輝
写真:中島たくみ