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Posted on 2013/08/05 12:54
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みんなの笑顔が未来を作る

みんなの笑顔が未来を作る

『矢でも鉄砲でも持ってきやがれ』と、どこかでそんな気分になっていた。土砂降りの雨が降ったと思ったら、汗が噴き出すほどのかんかん照りになる。一方で、太陽の光がぎらぎらと照り続けるなかで雨に見舞われるという珍事も一度や二度ではなかった。さらには、稲妻がライヴを演出したこともあれば、奥地ではざんざん降りの雨だったというのに、グリーン・ステージでは青空の下でライヴが繰り広げられていたり… フジロッカーズのフェイスブック・ページで時折お知らせしていたピンポイント天気予報も無用の長物だった。フジロックがかつてこれほどまでめまぐるしく変化する天候に見舞われたことはなかったように思える。

そんななか、始まりから終わりまで輝きを失わなかったのは集まった人々の弾けんばかりの笑顔だった。いきなりの大雨に見舞われた前夜祭とて同じこと。皮切りとなる櫓を囲んでの盆踊り大会が一旦は休止され、レッド・マーキーが雨宿りの場所となってしまったがために、オーディエンスが「満を持して会場になだれ込む」光景はなかった。それでも、会場からあふれ出ていたのは、満面に笑みを浮かべた彼らの「早く始めようよ!」という叫び声や手拍子足拍子。しかも、一時は「今年はないかもなぁ…」と不安がよぎった花火も、まるで演出でもされていたかのような「雨上がりの空」に打ち上げられて大歓声がわき起こる。そんなオーディエンスのこれ以上ない幸せな表情は今年もきちんと記録に残すことができた。

フジロックを支えているのはそんなオーディエンス。日本中のみならず世界中からわざわざここまでやってきた彼らこそがフェスティヴァルの主役なんだということを今年も再認識させてくれたように思う。数々のアーティストがフェイスブックやツイッターで発信していた言葉をチェックしてみればいい。Fun.は「最も美しいフェス」という言葉を残し、エイミー・マンも「あなたたちはワンダフル」とつぶやいている。なんと今年は前夜祭の記念撮影に加わったスキニー・リスターも「日本、愛しているよ、びっくりするような始まり」と、その興奮をストレートに言葉にしてくれているのだ。

そんな言葉はアーティストや関係者から幾度となく耳にしていた。すっかり晴れ渡った空の下、愛する日本の苗場に戻ってきてくれたウイルコ・ジョンソンのオーディエンスを見て、目を潤ませていたのはMCのスマイリー原島氏。「泣けてきちゃうよ。みんな、わかってんだよね」と彼らを絶賛し、オレンジコートで演奏したドーベルマンはライヴの直後、「すごいパワーをもらえるんです」という言葉を残していた。思うに、ここで体験する奇跡や衝撃を作り出しているのは、同じ時間と空間を共有している無数の人々のエネルギー。それがこれまでにはなかった世界を生み出していると言えば大げさだろうか。

「フジロックに十万人が集って、人と音楽と大自然がコラボ=拮抗したことは、非日常、超現実ではない」

今年初めて出演したあがた森魚氏が、フェイスブックでそう書き残してくれている。これは「1年のうちわずか3日間だけでもいい『生きている』ってのがどういうことか、感じようよ」とフェスティヴァルのことを語ってくれたジョー・ストラマーに繋がってはいないだろうか。「生きている」ことを謳歌しているとき、誰もが自然や人を気遣い、互いに愛し合い、それぞれの言葉に耳を傾け合おうとする。そうやって求めている「日常」を生み出しているように思えるのだ。いわば、フジロックで生まれているのはそんな未来じゃないだろうか。

もちろん、どれほど幸せな表情をしていても、2年前の311のことを忘れた人はいない。今年も東日本大震災復興支援プロジェクト【Benefit for NIPPON】が繰り広げられ、フジロッカーズ・ラウンジの一角には東北ライブハウス大作戦のブースも作られている。ジプシー・アヴァロンでは今年も原発問題に端を発したアトミック・カフェが開催され、NGOヴィレッジではエネルギー、環境問題のみならずアフリカの民族紛争や政変と日本との関係性なども語られていた。ともすれば閑散としているかもしれないと想像されるだろうが、世代や人種や国境を越えて地球と共に生きる姿勢を打ち出したここも盛況だったのだ。

フジロックが苗場で始まった頃、周辺の教育委員会が「子どもたちを近づけないよう」にお達しをしたという話を聞いたことがある。が、実際にこの祭りを体験し、集まった人々の環境や地元への心遣いに感動したある子どもの母親がこう言ってくれたというのだ。

「フジロックが子どもたちにとってどれほど素晴らしい教育となっているか、あなたたちは何も理解していない」

もう何年も前のこと、この言葉を聞いたとき、どれほど嬉しかったか… おそらく、音楽を愛し、命を謳歌することで、子どもたちののみならず、僕らの未来を作っているのではないか、そして、それを体現しているのがフジロックではないだろうか。

さて、今年のエキスプレス最後を締めくくるのは、そんな未来を生み出すみなさんの笑顔。おそらく、この写真の向こう側からジョン・レノンの名曲「Power To The People」が聞こえてくるはず。その通り、僕らふつうの人々にこそが未来を作っているのです。


なお、早くは火曜日に現地入りし、みなさんが苗場を後にする月曜日まで会場を縦横無尽に走り回って取材を続けてくれた今年のスタッフは以下の通り。

日本語版(http://fujirockexpress.net/13/
写真家:森リョータ、北村勇祐、前田博史、古川喜隆、直田亨、岡村直昭、府川展也、深野輝美、Julen Eesteban-Pretel、近澤幸司、平川けいこ、八尾武志、藤井大輔、宗川真巳、MITCH IKEDA、小西泰央、鈴木悠太郎、宮腰まみこ、佐俣美幸

ライター :本堂清佳、永田夏来、名塚麻貴、丸岡直佳、近藤英梨子、池田信之、西野太生輝、小田葉子、丸山亮平、ryoji、吉川邦子、小川泰明、三浦孝文 、大山貴弘、田中竜一、石角友香、輪千希美、船橋岳大

英語版(http://fujirockexpress.net/13e/
Phil Brasor, Sean Scanlan, Dave Frazier, Shawn Despres, J Muzacz, Ben Olah, Elliott Samuels, Patrick St. Michel, Lisa Wallin, Matt Evans

更新およびフジロッカーズ・ラウンジ
藤原大和、飯森美歌、金甫美、坂上大介、小幡朋子、湯澤厚士、山岡紀子、寺崎壮司、中原愛実、平沼 寛生、宮崎萌香、池之上祥子、関根教史

ウェブデザイン・プログラム開発
三ツ石哲也、坂上大介、中原愛実、宮崎萌香

プロデューサー
花房浩一

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