毎年”にぎやかし”と称して3日間さまざまなステージでライブを行うアーティストがいる。そんなアーティストたちを排出しているアンクルオーウェンから、今年はバーバレラス・バン・バン（以下B・B・B）がフジロックに出演する。前夜祭の時、場外にて突如現れゲリラライブを敢行したB・B・B。本日は正規のステージだ。その一発目は木道亭からスタートするのである。

うだるような暑さの中、会場へと向かう。途中のボードウォークは日陰が気持ちよく、心地よい風が感じられ、暑さを和らげてくれる。木道亭に着いたのは、15時を少し回ったところ。開始30分前だと言うのに、既にステージ前は満員で、B・B・Bのリハを興味深そうに見学する観客で埋まっていた。本日ダブルベースのダンがお休み（土曜日入りのアナウンス有）で、その代わりに浅草ジンタのオショウが入る。ほぼリハーサル無しで本日を迎えているらしいが、リハーサルで演奏されていたジプシー・アイでは、ぴったりと息のあったアンサンブルだった。

「元気ですか？　こんにちは！」とボーカルのバーバラがオンタイムで出てきた。その頃には、後ろのボードウォークすら埋め尽くす観客たち。にぎやかしの期待値が高いことがわかる。出てくると観客から「かわいい！」との声に対して「アリガト」とはにかみながら返すバーバラが印象的だった。そして始まった一曲目では、バーバラはボーカルでは無く、カズーを奏でる。カズーとは声を発して鳴らす楽器なのだが、その音色からもバーバラの美しく妖しい歌声が聞こえてくるようだった。また演奏中バーバラは少しも笑うことが無い。完全に曲に入りきっているかのような表情で一曲を歌い上げていく。演奏される曲は、劇場音楽、人形劇のように一曲一曲のストーリーがあり、それを歌と踊りで表現するバーバラは、とても艶美でしなやかだった。

一曲目、二曲目とアップテンポの曲が続き、ジプシー・パンク特有の踊らせる雰囲気とリズムで、フジロッカーたちの心を鷲掴み、続く四曲目。ジミ・ヘンドリクスの”ジプシー・アイ”が演奏される。原曲の雰囲気を良い意味で壊し、完全にB・B・Bの曲として、ダンサブルに演奏されていた。

しかしここは座れる場所の多い木道亭。涼みにきたフジロッカーも多いのだろう。少し元気の無い観客が目立っていた。そこにオショウのMCが入る。「踊って良いんですよ？」その声に応えるようにちらほら立ち始める観客たち。そして「一緒に歌って！　チョコラータ！！」とバーバラのMCと同時に” Cioccolata”が始まる。少しの観客が踊りだせば、その楽しさは伝播し、どんどん自由に踊る観客が増えていった。少し緊張気味だったサポートのオショウも、ライブ終盤になるとMCを入れたり、手拍子を求めたりとB・B・Bになじんでいくのがわかった。そこはさすが浅草ジンタ。だてにグラストンバリーを経験しているわけではない。高速スラップもまだまだ健在だ。

マリオネットのように踊るバーバラ、そして力強いカホンを叩くレオ、心地よいリズムギターのアルマンズに、目の覚めるような早弾きを見せるアウリマス。ここに本日はオショウがサポートに入っているわけだが、ほぼ初対面とは思えないほどのアンサンブルで、観客たちを踊らせていた。今回は木道亭であったが、個人的には、パレス・オブ・ワンダーがとても合うと思う。そして本日の深夜にはパレス・オブ・ワンダーで、ライブがあるのだ。明日にはベースのダンが入り、正規メンバーでのB・B・Bがお披露目される。今後のB・B・Bの行く末を見逃す手はない。