サニーデイ・サービス
気負うこともなく、飾ることもなく
ホワイト・ステージのセンターに、キュッとこじんまりと組まれたバンド・セッティング。09年のフォールド・オブ・ヘブン、11年のホワイト・ステージと出演してきたサニーデイ・サービスの登場である。あぁ、今回もきっと、奥底にしまった色々な気持ちが引っ張られるんだろうなと想像しながら、今か今かと待ち構えていたところ、ちょうど、定刻の14:40に本当にさりげなくステージ中央に向かって進み始めた彼ら。なんの気負いもなく、また飾ることもなく、ヴォーカル&ギターの曽我部恵一、ベースの田中 貴、ドラムの丸山晴茂が登場した。どんな場所であろうと、変わらない。そう言わんばかりに。
1曲目に演奏されたのは、“Baby Blue”。「さあ出ておいで」と歌がワン・フレーズ響いた瞬間、いや、もう曽我部の声が聴こえた瞬間、ふと涙がぽつりと零れてしまった。たぶん、それは久々のフジロック出演というのもそうだけれど、ステージに立った時、あぁ、フジロックという場所でも、やはりいつものサニーデイ・サービスだよね、と構えていない彼らの姿に安心してしまったから。「いつもの」と思えるって結構大事で、もちろん、何事も変わることも大切なんだけど、変わろうとするがゆえ、つい忘れてしまいそうになることなど、原点に立ち返らせてくれるところがあるのだ。
その後は、定番中の定番とも言える“恋におちたら”、“あじさい”を。彼らの独自のグルーヴ、そして、穏やかな歌に引っ張られるように、誰かを思う愛しい気持ち、優しい気持ちがおのずと溢れ出てくるのがよく分かる。しかも、そこに曽我部が「ありがとう」と満面の笑みを見せるもんだから、人知れず、ギューッと胸が熱くなった次第だった。中盤の“スロウライダー”では、曽我部と田中が気持ち良さそうに向い合わせで演奏し、また“アビーロードごっこ”では爽やかなサウンドと心地よい風が交わり合っていく感覚を味わえたり…。オーディエンスは、口ずさむ人もいれば、音に身を任せてゆったり揺れている人など、比較的、各々の楽しみ方で彼らのライヴを観ていたように思う。
この日、MCはほぼないといっていいほどで、6曲目の“ふたつのハート”の前に「サニーデイ・サービスです、最高です」と、曽我部が言っていたくらい。でも、余計なものは削ぎ落としたシンプルさ、ミニマムさで良かったと思えるのが彼らライヴ。終盤に演奏された“シルバースター”、“胸いっぱい”、“サマーソルジャー”もそうだけど、それぞれの中にあるいろんな思いが次々と繋がっていくような感覚をもらえるから。過去のこともそうだし、今抱える思いにも(何十年経った曲でも、過去の記憶はもちろん、現在にも響くのが不思議でならない)。すっと、どの記憶にも染み入るというか、もうそれだけで幸せだし、贅沢なのだ。しかも、“誰か”を感じさせる楽曲が多いゆえに、どんな時だろうと、必ず大切な“人”に意識が向くような気がする。
そして、最後には、気付けば、観客みんな、手を上げて、彼らのその空気感を名残惜しんでいた。そんな彼らは、全国6ヶ所全7公演となる、再結成後初の全国ホール・ツアー『サニーデイ・サービスTOUR 2015』の開催も決定している。いやはや、またすぐにでも変わらない彼らが観たいものだ。