CARIBBEAN DANDY
大暴れの夜明け前
ここ数年、初日の夜を締めくくるのが、カリビアン・ダンディのクルーだ。東京の夜遊びを支えてきた藤井悟が率いるこのDJチームは、ラテンやジプシー系の、一風変わった、激しい音楽を届けてくれる。
といっても、マヌ・チャオにゴーゴル・ボーデロ、チェ・スダカ、オンダ・バガ、タラフ・ドゥ・ハイドゥークス、今年の出演者で言えば、レーヴェンにフェルミン・ムグルザ、チャランゴらが出演しているフジロック。だからこそではあるが、やってくるお客さんも心得たもので、パレス系(はたまた今はなきオレンジ系)の、様々なジャンルがいっしょに煮こまれた音楽への理解度は極めて高い。
いよいよこれから夜が明けるといった時間帯、本来ならば「チルアウト」と呼ばれる、リラックスできる音を流す時間にあって、DJ陣は、「まだ疲れていないんだろう?」と言わんばかりに、ダブルのリズムを持ったけたたましい楽曲たちをかけまくる。MCヒロのハイトーン・ボイスと、ルーデ・ハイファイのドスの効いたトースティングがかわるがわる盛りあげ、オーディエンスに、腰の落ち着きどころを与えてくれないのだ。初日でも、この時間帯は決して疲れていないわけではない。ただ、疲れや筋肉痛がまだ「ツケ」の状態で、気づけていない——後日にまとめて襲ってくるヤバいやつ——だけだ。
終盤、藤井悟と、DJチャコによるバック・2・バック(打ち合わせをせずに交互に選曲すること)までもが披露された。後でそのことについて訊いてみると、「自然とそうなってた。難しいし(バック・2・バックは)めったにやらないんだけど」とのことだった。カリビアン・ダンディとお客さん、それぞれが休むことを知らないまま、タイムリミットを迎えて大団円。それはまるで、電源を落とされることでしか演奏を終えることができないライヴのDJ版、ともいえるステージだった。