ASH
神セトリでレッドマーキーを圧倒!
こういうのを「神セトリ」と言うのだろう。20年を超えるキャリアの中からエバーグリーンな名曲ばかりを並べたセットリストで、2年ぶりのフジロックに挑んだアッシュ。どの楽曲もイントロから大きな歓声で迎えられ、アッシュとフジロックとの尋常じゃない相思相愛っぷりで満員御礼のレッドマーキーをどこまでも熱狂に包んだ。
何より素晴らしいのが、まさにベスト・オブ・ベストなセットリストの中に8年ぶりのアルバム『KABLAMMO!』のナンバーが違和感なく紛れ込んでいること。”Cocoon”や”Free”はもちろん、”Machinery”や”Let’s Ride”といったニューアルバム収録曲が、初期の名曲たちとも平気な顔をして肩を並べているのは、「ライヴでよく演奏する古い曲に取って代われる曲を新たに作りたい」と意気込んだアルバムだからだろう。引き締まった3ピースのバンドアンサンブルも、ライヴバンドとしてのアッシュの魅力を痛快に響かせていた。
新しいヘアスタイルで大人っぽく見せながら、ご存知のとおり油断するとすぐに激しくギターソロをかき鳴らし始める男、ティム・ウィーラー(G,Vo)は今夜もフライングVでエンジン全開。「ガンバッテ!」とオーディエンスを煽って突入した”Kung Fu”ではレッドマーキー中の大歓声を一身に浴びながら豪快なギタープレイを披露した。マーク・ハミルトン(Ba)もリック・マックマーレイ(Dr)も、贅肉を削ぎ落しきったような引き締まった演奏で、今のバンドの充実ぶりを伝えている。
オーディエンスが大合唱した”Orpheus”、イントロから大歓声とハンドクラップが巻き起こった”Shining Light”と、ライヴはファンの間で語り草になっている2004年のレッドマーキーのステージにすら匹敵するほどの熱狂を呼ぶ。『Twilight Of The Innocents』以後の「アルバム作らない宣言」から第一線からやや距離を置いた音楽活動を続けたことで、ともすれば「消えたバンド」とも思われていたアッシュ。ところがどっこい、無敵のキラー・メロと、熱さと爽快さを併せ持ったバンドサウンド威力は少しも色褪せることなくオーディエンスの胸へ鮮烈に突き刺さっている。
「アー・ユー・レディ?」と何度も煽って突入した”Burn Baby Burn”の盛り上がりは圧巻のひと言。もう15年も前の楽曲なのに、今なお瑞々しい衝動に溢れている。『KABLAMMO!』のナンバーがライヴの定番曲になるのは少し時間がかかりそうだが、アッシュが古いバンドになっているどころか、最前線でカッ飛びまくっていることが超満員のオーディエンスと共に確認できただけでも心が熱くなった。かつての「恐るべき子供たち」は、まだまだ落ち着いた大人になる気はないようだ。3人はライヴが終わっても、名残惜しそうにステージから手を振って歓声に応えていた。