Räfven
レーヴェン公式ライヴ3回目@ホワイト・ステージ!
初登場時(2009年)のレーヴェンにとって、最も大きなステージは前夜祭のレッド・マーキーだった。キャパは5000人で、当時のレーヴェンはステージ上から見える光景に驚嘆したという。そして、今年、彼らはフジロックNo.2の規模を誇る、1万5000人収容の ホワイトステージの幕開けを告げる大役を与えられた。
朝イチのホワイトといえば、まだ眠けの残る時間帯ということもあって、PAやや奥まで、かつ踊るに十分なスペースが確保できるくらいの人入りで万々歳だと言われている。だけれども、「にぎやかしバンド」として、フジロックでは十分な知名度を得ていたレーヴェンは、口コミという地道ではあるが最強の宣伝手段によって広く名前を知らしめていたこともあり、入場規制にリーチをかけるほどの客入りを実現させたのだった。
手を抜くことを知らないレーヴェンは、スタートから一気にテンションをあげて、知っている者はもちろん、たまたま通りすがったいちげんさんをも巻き込んでいく。持ち前のDIY精神で、激しく、にぎやかに音を放出する彼らに一切の迷いはない。ステージが小さかろうが大きかろうが、やることは同じ。与えられた舞台をダイナミックに動き回って、表情豊かに遊び倒す。かつ、持ちえるすべての技と体力を注ぎ込んで、ライヴという「生き物」をコントロールしていくのだ。
ステージの上で肩を組みラインダンスを行えば、つられたオーディエンスが直系30メートルはあろうかというほどの円をつくり、ラインダンスを始めた。もちろん、振り上げられる足の動きと、満面の笑みがセットとなっている。オーディエンスは、レーヴェンの一挙手一投足に笑って、騒いで、ステージ上の動きを真似をすることで一体となり、フジロックというフェスの醍醐味をひときわ強く感じたはずだ。サックスのマーティンは、ついにサーカス仕込み(彼はレーヴェン結成当初まで、サーカス団のパフォーマーだった)のフラフープとジャグリングをここで初めて行った。ひとつの音楽体験には収まりきらない、「一大エンターテインメント」を創りあげたのだった。
曲が進むにつれてひとり、またひとりと半裸となっていくレーヴェン。理由を訊けば、「アツくてしかたがない」という。それが「暑い」なのか、それとも「熱い」なのかは細かく確かめていないけれども(きっと両方なのだろう)、彼ら自身のアツさ、そして興奮は、ダイレクトにオーディエンスに伝わる。それこそが、ファンをまるごとコミュニティとして取り込んでしまうレーヴェンの強さだ。
前日のフィールド・オブ・ヘブン(チャラン・ポ・ランタンのステージ)でアナウンスされた通りに、チャランポの二人がステージに登場すれば、またひとつ興奮のギアはあがる。小春はアコーディオンでバトルし、ももは肩車をされて声高らかに歌い上げる。が、サプライズはそれだけではなかった。「お登紀さん」こと、加藤登紀子が飛び入りでスキャットを披露し、フェスのトップバッターでは異例のアンコールに突入したりと、文字通り、「どエラい」状況が生まれていた。お登紀さんの登場はオーディエンスのみならず、スタッフにとっても寝耳に水の出来事だった。
止まない拍手と歓声にメンバーは笑い、そのうちフィドルのロークを筆頭とした数人は涙ぐみ、つられてオーディエンスももらい泣き。見た者にとっては一生ものの記憶となったことだろう。そしてまた口コミが生まれ、バンドをより大きな存在へと押しあげていくに違いない。
レーヴェンは、世界中のいたるところでライヴをしている。地球上であれば、どこであっても彼らの庭だ。その中でもフジロッカーは、レーヴェンの成長を最も身近で見ている存在と言ってもいい。楽しさと笑いと、感動を与えてくれたレーヴェンに、いま一度、「Skål!(スコール)=乾杯」を!