AQUALUNG
10年分の思いを噛みしめる幸福なステージ
「アクアラングを休止して、5年間どこにもツアーをしなくなって。唯一ライヴをしたいと思っていたのは、ここなんだ」と照れくさそうに笑ったアクアラングことマット・ヘールズ。今年ニューアルバム『Ten Futures』を5年振りにリリースし、実に10年ぶりのフジロック帰還を果たした男を、オーディエンスはレッドマーキーを埋め尽くして歓迎する。
“Tape2Tape”でライヴをスタートすれば、マットの透明感のあるボーカルに生ドラムが重なり、フロアに爽快な熱気を広げていく。”Easier to Lie”を歌い終えるとマットは「アリガトウ! コンニチハ!」と日本語で挨拶。彼はこの後も歌い終わるたびにオーディエンスに「アリガトウ!」「ミンナ元気?」と日本語で語りかけていた。なんとも律儀なキャラクターと日本愛を感じずにはいられない。
アッパーな打ち込みビートとドラムの”Something To Believe In”でフロアを踊らせ、”New Low”ではオーディエンスとのコール&レスポンスで沸かせる。歌と短いMCだけで、フジロックのステージに帰ってきたマットの喜びや興奮が手に取るように伝わってくるから不思議だ。マットの幸せな気分はオーディエンスにも伝播して、レッドマーキー中から温かい歓声が送られる。
「初めてフジロックに来てから10年。ずっとここが恋しかった。だからラヴソングを歌うよ」と披露したのは、名曲”Brighter Than Sunshine”だ。曲の間にQueenの”Somebody to Love”をはさみ、フロアを沸かせる。オーディエンスの気持ちをちゃんと分かっている感じが嬉しい。彼が日本でこれほどまでに愛される所以かもしれない。
オーディエンスにハンドクラップをさせてから歌った”Be Beautiful”に続き、ラストはマットのキーボードのイントロから大歓声が上がったアクアラング屈指のマスターピース”Strange And Beautiful(I’ll Put A Spell On You)”。レッドマーキー中がマットの歌に心を震わせる、愛に溢れた贅沢なひと時だった。