Chthonic
平和へと掲げられたフラッグ
台風の予報なんて嘘のように日の光が照り付ける、お昼のフィールド・オブ・ヘブン。定刻通りにソニックとサポートメンバーを含む、8人が登場すると、待ってました!とばかりに「閃靈!(台湾語でソニックという意味。)」コール。後姿だけではわからなかったが、やはり台湾やアジアからのお客さんが多いように見受けられた。元々はブラック・メタルバンドとして国外問わず活躍している彼らだが、今回はアコースティックでの出演。それに合わせられた恰好も、普段ブラック・メタルを演奏しているとは思えないほど素朴。
穏やかな雰囲気で演奏が始まった”Rage of My Sword”では、時に拳を掲げながら歌うフレディ(Vo)の姿が印象的であった。二胡のメロディが特徴的でアコースティックな楽曲の中に盛り込まれた、貫録のあるシャウトは流石ブラック・メタルバンド。観客からも思わず声があがる。
「今年は特別な年なんだ。1945年に戦争が終わってから、ちょうど70周年。台湾と日本に特別な繋がりができた年だ。」というMCの後に演奏されるのは、神風特攻隊についてを歌った”Broken Jude”。ジェシー(Gt)のソロと二胡という台湾の伝統楽器の音色が印象強く残る中、「臺灣獨立」と書かれたフラッグを掲げた人の姿も見られた。”supreme Pain for the Tyrant”では、それに反応を示すかのように、フレディが観客から「臺灣魂」と書かれたフラッグを受け取り、ステージ上で掲げるシーンには、多くの拍手が巻き起こった。
「ではゲストを紹介します。」という声と共にステージに招かれたのは、元ちとせ。噛みしめるように、丁寧に歌われる”ワダツミの木”はまさに息を飲む数分間であった。彼女がステージを舞いながら声を発する度、心が震え、会場の空気が今までと一変したのがよく分かる。
最後は、再び元ちとせが登場し、彼女がゲストボーカルを務める”Defenders of Bu-Tik Palace”。歌詞が全て台湾語であるにも関わらず、きれいな発音で歌を紡ぐ元ちとせ。繊細で味のあるフレディの歌声と、それに引けを取らない力強い元ちとせの歌声。曲中に、彼らが生まれ育った土地の要素が色濃く出ながらも、両者の声が絶妙に絡み合うようで、美しい。
サポートを含む計10人、横に並んで挨拶をし、「ありがとう!今度はメタルセットでフジロックに出たいな!」というフレディの言葉で締めくくられた。