deadmau5
ネズミDJ、苗場初上陸
星野源についでグリーン・ステージに登場を果たしたのは、deadmau5ことジョエル・トーマス・ジマーマン。ステージに上がる際にはネズミの被り物(mau5head)をするのが定番となっており、それが彼のアイコン・キャラクターになっているため、一部では「ネズミDJ」とも呼ばれている。昨年度の米フォーブス長者番付が発表する高収入DJランキングでは2013年のホワイト・ステージのヘッドライナーを務めたスクリレックスに次ぐ第10位にランクイン。今、最も熱い音楽ジャンルであるEDMを代表するアーティストである。
今日は4年のときを経て実現した来日公演であるため(2011年に予定されていたものが中止となっている)、deadmau5のファンにとってみれば感慨ひとしおのステージである。そういったオーディエンスの熱い気持ちをジマーマンが汲み取ってくれたのかどうなのかは知らないが、なぜか定刻よりも10分早く始まるという嬉しいハプニングで幕を開けた(本来は19:20分スタートだった)。ステージ上にはバカでかい横長のDJ卓が居を構え、背面には6つの長方形のスクリーン、四方八方に向けられた照明機器がたくさん並べられている。海外でのライヴはもっと豪華なステージセットが組まれるのだが、今回は機材移動の問題もあったのかもしれない(今目の前にあるセットで十分にデカイのだが)。
序盤にセレクトされたのは“Some Chords”や“Maths”、“Moar Ghosts ‘N’ Stuff”といったアップ・テンポのナンバーたち。一般的な音楽リスナーからするとEDMナンバーに括ってしまう曲かもしれないが、グリーンステージのサウンドシステムでその音を聴くとただただ盛り上がることだけを追求しているEDMとはひと味もふた味も違うことを感じることができるのだ。PA前の音が一番良いとされるところ付近で聴いていたからかもしれないが、音のレンジの広さや強弱の付け方、テンポを変えるその絶妙な間合いなど、その綿密さがよくわかる。映像に関しても今日のライヴは映像を見させるようなものではなく、曲に合わせて動きがある程度のものであり、曲を集中して聴かせるためにそうしていたのかもしれない。
中盤の流された“My Pet Coelacanth”や“Avaritia”、終盤の“Terros In My Head”や“The Veldt”ではギアを一段階上げ、さきほどまでが嘘だったかのように音圧をぐんぐんと上げていき、頭の上から音が雷のように降ってくるような感覚を覚えさせてくれた。グリーンでこんなに経験をさせてくれるダンスミュージックは2011年のケミカル・ブラザーズのとき以来かもしれない…それほどに、スピーカーから放たれる音が気持ち良かった。
ラストの“Strobe”になるまで被り物を外さず、ストイックな姿勢をつらぬいたジマーマンだけど、90分きっかりでショーをやめるとこまでストイックにならなくても良いのになあ。もっと聴きたい、踊っていたいというオーディエンスがたくさんいたことは間違いないのだから。次はフルステージセット&ロング尺でのカムバックを期待したい。