Caravan
ホームへ、ようこそ。
日差しは弱まり、少し涼しい風が吹き始めた夕刻のフィールド・オブ・ヘブン。やっぱりキャラバンにはここが似合うな、と思った。というよりはここが彼のホームのように思もえてならない。2011年ぶりの出演で決して常連というわけではないのにそう感じさせるのは、あまりにも彼の音楽がこのロケーションにハマっているからなのか。いや、そんな単純なことではなく、MCで語られていたように彼自身のこのステージに対する特別な思い入れが、彼をここにいるべくしている人、に見せているのかもしれない。
リラックスしたムードのリハーサルの流れそのまま、ライブ本編へと続いた。ベース、ドラム、キーボード、トランペット/フルート、ギターにキャラバン。ゆったりとした心地良いグルーヴを生む一曲目の“Free Bird”から早速コール・アンド・レスポンスが促される。瞬時にお互いを受け入れるように声を交わし合うそのさまは、早くもそこに確かな信頼感が出来ているような雰囲気だ。ステージの上と下に何の隔たりも感じないほどに近しく温かな距離感がある。なんだかライブというより、ホームパーティーみたいな感じだな、と不思議な感覚に陥った。ここに流れる時間を共に楽しみ、ここにいる喜びを共有するためにみんながキャラバンの家に集まってきたような。彼の歌に吸い寄せられてフワフワと前方に歩み寄ってくる人たちが、「こんにちはー」とか「おひさしぶりー」とか「毎度ー」とかそんなワードと共に彼の家に遊びに来たようなそんなリラックスしたムードがある。遊びに来たお客さんたちをキャラバンは、いつも通りの優しい歌声と美しく強い言葉で出迎えてくれるのだ。続く”Trippin’ Life”の軽快なメロディがあたりを包むと、みんなゆらゆらと気持ち良く体を揺らしていてハッピーな宴の輪はさらに広がりを増していった。
「みんな、一年いろいろあっても頑張って、またここに戻って来てるんでしょ?俺もそうだし。楽しんで、ひらいて帰ってください。」飾らない言葉の中で「ひらいて」という表現がいかにも彼らしい。ここは彼にとってもお客さんにとっても「ひらく」ことの出来る場所なのだ。”ハミングバード“を、一緒にただ口ずさみながらぼーっと森の奥に浮かんでいくシャボン玉を眺めているとき、驚くほど脳みそがクリアになっている自分に気付いた。日々のいろんな嫌なことも、受け入れがたい面倒なこともスッと溶けていくような。あ、これが「ひらいていく」ってことか。いろんな感情が解放されていく。
その後は、“アイトウレイ””光の舟に乗って“”その瞬間“と強いメッセージを持つ曲が続いた。すっかりひらかれた状態で、いつまでもこんなホームがあっていてほしい、ずっと決まった場所にあってくれなくても、ふと行き詰ったときにふらっと訪れていけるような場所であってほしい、と思った。そんな中終盤に披露された“Back To Roots Again”でキャラバンはこんな風に歌った。「10年たって20年たって変わり果てた世界でも”ただいま“そこに帰るよ。”おかえり“ドアが開くよ。」。うん、こちらが何を言うまでもなくキャラバンはずっと私たちにとってそんな存在の”キャラバンち(家)“を守り続けてくれるのだろう。ギターの弾き語りと抑えめに響くアコーディオンのイントロで始まる”サンディアゴの道“でラストを迎えると、この大きなおうちのホストは、今まで以上にお客さんひとりひとりの目を見て語り掛けるように歌った。そして「まだまだ引き続き長い旅を続けますんでまたどこかで。」と言って晴れやかな笑顔を見せた。キャラバンはその名の通り、旅の途中の大事な瞬間に現れてくれる。彼にもらったたくさんの大事な気持ちのお返しになるような素敵なお土産を用意して、またこのホームに遊びに行けるときを楽しみに待ちたい。
-Setlist-
Free Bird
Trippin’ Life
ハミングバード
アイトウレイ
光の舟に乗って
その瞬間
Back To Roots Again
サンディアゴの道