大比良瑞希
動じない芯のある歌
2014年夏に休止したヘウレーカというバンドをご存知だろうか。そのフロントマンであるのが、大比良瑞希。現在は、ソロのシンガーとして、再始動中である(1st EP『LIP NOISE』は、自身がほぼすべての楽器演奏およびサウンド・メイクをおこなった)。ここジプシー・アバロンには彼女のプロデューサーであるチェロ奏者の伊藤修平と、ファンクやジャズなど幅広いジャンルの分野で活躍するドラマーのショウジ アキヒサをサポートに迎え、3人編成でのライヴをおこなう。
フジロックに出ると知ってから、初めて耳にした彼女の楽曲、その時に思ったのが、シンプルながらどこか動じない芯の強さがある、ということ。そんな手応えを感じながらこの日を迎え、実際に“Back Mirror”、“つまさき”を聴いた時、その思いがとても強くなった。ステージ立ちギターをかき鳴らす彼女は、まさに真っ直ぐで、何かを取り繕うこともなく、シンプルそのものだけど、やはりそこには歌の強さがあったのだ。
MCに入っても、いたって自然体だ。そして、「フジロックの醍醐味である大自然。それに合うんじゃないかな?と。憧れの人を思って書いた曲です」との説明を加え、“aspiration”へ。比較的、静かに歌われるだけに、ゆったりもできるが、なぜだろうか、彼女から視線を逸らせなくなってしまう。集まった観客も座りながらのんびり聴いている、というより、比較的じっと見つめている、という感じである。それだけ歌に吸引力がある、という証拠だろう。
「フジロックはご飯もおいしいから。みなさん、後で一緒にご飯を食べましょう」。そう話した後は、“Sunday Monday”を披露。爽やかさも兼ね備えた楽曲で、ちょうどゆるやかに吹く風と相まって気持ちいいのなんのその。基本的に彼女の楽曲は、いわゆるポップではある。だけど、少々シティ・ポップ感が出る時もあれば、ソウルフルな時なども…。あぁ、きっと、様々な音楽を通ってきているのだな、と、その遍歴を楽曲からキチンと垣間見られるのがまた良い。「アバロンに集まってくださって、ありがとうございました」と、ラスト曲となるのはカントリー・ポップ”ひつじのうた”。かわいさも残しながら、この日のライヴは締めくくってくれた。さて、再始動は始まったばかり。ここからどう変わっていくのだろうか。今後も見ていきたい限りである。