MUSE
グリーンを飲み込む異次元のパフォーマンス!
定刻の21時30分、ステージに大きく映し出されたのは、最新作『Drones』で主人公へ激しい罵声を浴びせるあの鬼軍曹だ。”[Drill Sergeant]”をSEにミューズの3人が登場し、そのまま”Psycho”へ雪崩れ込むと、グリーン・ステージを埋め尽くしたオーディエンスは大歓声とハンドクラップで応える。『Drones』は社会批判的メッセージを帯びたシリアスな作品だが、ライヴでは重厚な世界観を再現しつつも辛気臭さはなく、凄惨な未来像を突き付けてくるサウンドの攻撃性はポジティブなパワーとしてオーディエンスに響いている。
イントロからフィールドが大歓声に包まれた”Supermassive Black Hole”に続いては、悪魔によって人形たちが操られる姿を写し出した”The Handler”へ。さらにマシュー・ベラミー(Vo/G/Keys)がギターでオーディエンスと掛け合いを延々と繰り広げてから、鮮烈なギターリフとドラマチックなサウンドを持った”Plug In Baby”へ突入すると、グリーン・ステージは早くも最高潮の盛り上がりに。オーディエンスから大きなハンドクラップが起こる中、マシューはお馴染みのギターの背面弾きを披露。本当にこの人は涼しい顔をして次から次へと超絶テクニックを軽々やってみせるから見ているだけで楽しい。
「日本に来れて最高!」とマシューが早口な日本語でMCして演奏したのは、グラムロック調のナンバー”Dead Inside”。続く”Uprising”では「カモン、フジ!」とマシューが煽りグリーン・ステージに大合唱が巻き起こった。ステージ上を右に左に歩き回りながら壮絶なギタープレイを披露しつつ、甲高い高音ファルセットを撒き散らすマシューにばかりについ目がいってしまうが、”Hysteria”はクリス・ウォルステンホルム(B)のターン! 重厚なベースが16ビートでうねりを上げ、フィールドに心地良いグルーヴを響かせる。マシューは僕も負けじとギターを大きく振りながら演奏した。
今度はドミニク・ハワード(Dr)がドラムソロを叩きはじめ、そこにクリフがベースラインを重ねていくというリズム隊による豪快なジャムセッション”Munich Jam”へ。さらに”Apocalypse Please”ではマシューがピアノを弾き、ピアノトリオ編成でプレイする。しかし何をやらせてもため息が出そうなほど演奏に華がある人たちだ。”Starlight”ではグリーン・ステージが手拍子と大合唱に包まれ、”Time Is Running Out”ではステージに曲の終わりまでの残り時間が刻々と表示される中、サビをオーディエンスがジャンプしながら熱唱。本編ラストの”Reapers”ではドローンに見立てた真っ黒いバルーンがオーディエンスの上を転がり、硬質なビートがフィールドを歓喜に染め上げた。
アンコールでは「愛してます、ニホン!」とマシューのシャウトから”Madness”。クリスがご自慢のカオスパッド仕様のベースをブリブリと響かせ、フィールドに熱狂を振りまいていく。”Mercy”では大量の花吹雪が降り注ぐ下、オーディエンスがハンドクラップして壮観な盛り上がりに。空前のスケール感をグリーン・ステージで堂々響かせるミューズのステージは、クリスのブルース・ハープから静かに始まる”Knights Of Cydonia”でフィナーレ。イントロからものすごい大合唱が巻き起こり、勇壮なサウンドにフィールド中から拳が上がる。グリーン・ステージを丸ごと異次元に連れ去ったような、壮大で、大仰で、この上なくドラマチックなミューズのパフォーマンスに、ライヴが終わってもオーディエンスはしばらく放心状態だった。