Räfven
レーヴェン公式ライヴ5回目@ジプシー・アヴァロン!
フジロックの3日間を、水浴び、チャラン・ポ・ランタンとの4年越しのコラボなど、様々な話題とともに駆け抜けてきたレーヴェンだが、ここで触れるジプシー・アヴァロンが最後の公式ステージとなる。ホワイトステージで紛失した旗も、無事にカフェ・ド・パリにて返還されており(届けてくれた方にはレーベルからささやかなプレゼントが贈られた)、旗をかかげながら意気揚々とバックステージに到着。連日連夜のライヴに加え、朝まで飲んでいたというのに、まったく疲れた様子を感じさせない。
ホワイトとヘブンを繋ぐ導線上にあるアヴァロンは、通りすがりを巻き込むにはうってつけのステージだ。今まで、レーヴェンをはじめとしたアンクルオーウェンのアーティストは、ライヴが始まってから、どんどん人を取り込んでいったのだが、今年のアヴァロンは、スタンバイの時点から人で溢れかえっていた。
レーヴェンのステージは、ファンキーな男による開演のMCから始まった。彼、実は、レーヴェンを担当していたコーディネーター(通訳)で、本来はステージに立つような人間ではなく、バックステージで役目を伝えられた時には、「マジかよ!?」と絶叫していた。だけれども、いつでも、どこでも人を巻き込むレーヴェンと、そのレーベル、アンクルオーウェンにとっては当たり前のこと。結果として、ハードコアパンクのヴォーカルのようなシャウトをかまして、ライヴのスタートダッシュに弾みをつけてくれた。
レーヴェンは疲れも見せず、勢い良く飛び出してきた。オーディエンスとふれ合い、耳にも、見た目にも激しく振る舞い、こちらの体に蓄積した疲れさえをも忘れさせてくれる。お立ち台までもが用意されたアヴァロンは、入れ替わり立ち代わり、メンバーそれぞれの見せ場が回ってくるライヴで、バランスだけで言えば、5回の公式ステージの中でもベストなものだったのではないだろうか。
ホワイトのような大きなステージでのレーヴェンもオツだが、実は、ステージ前との垣根のないアヴァロンこそ、「にぎやかしバンド」が最も輝く場所。日没後ならなおさらだ。後方まで傾斜が続き、アーティストとオーディエンスのお互いが広く見渡せる環境は、激しい音が放たれると、すべてが一体となっていくような感覚を与えてくれる。
とんでもない盛り上がりを受けて、前方はモッシュどころではないすし詰め状態。脇からスタッフがオーディエンスを静止しにくるギリギリのステージで、盛り上がりの波が、第一波、第二波と次々押し寄せてくる。レーヴェンの面々も、熱くてしかたがないといった感じで、上半身を露わにしつ、表情をクルクルと変えながら、熱量を振りまいていく。
良いライヴは、人それぞれだろう。だけれども、楽しいライヴは何か? となれば、確実にレーヴェンのステージが候補に挙がるはずだ。あの曲が聴きたい、この曲が聴けたらいい、そんな「お目当て」がなく、同じ場を共有することに意義があるアーティストがレーヴェンだった。誰よりもフジロックを楽しみ、充実した4日間を過ごしたのが彼らだった。
新作アルバム、『よみがえれ!キツネザウルス〜Bring Back The Dinos』の最後を飾る”Hej Helle”という曲がある。祭りの終わりを感じさせるような、哀愁漂うメロディーに、インストバンドのレーヴェンには珍しい、「コーラス」がフィーチャーされた楽曲なのだが、これが大きなドラマを生んだ。怒濤のライヴだけなく、フジロッカーとの乾杯など、同じ目線でフジロックを楽しんだレーヴェンに対する賞賛が、オーディエンスのコーラスに集約され、いつまでたっても歌声が止まないのだ。丘の上から、ステージへと歌声がどんどん集まってくる状況に、ひときわ体の大きなフィドルのロークをはじめ、メンバーは大泣きしたのだった。