LIVE REPORTGREEN STAGE7/28 SAT
eastern youth
30周年のグリーステージでも変わらない〝いつも通り〟のかっこよさ
薄っすらとした曇り空で2日目の朝を迎えたグリーンステージ。トップバッターを務めるeastern youthの登場を待つ。
開演前、お客さんの数はステージ前の柵から少し溢れるくらいだったが、それでも外から眺めていて「ステージ遠いな」と思った。そりゃそうか、ここはフジロックのグリーンステージだ。高校生のときからeastern youthを聞き続けてきた筆者にとって、今日が1番大きなステージでのライブ体験となる。
フジロックのテーマソングであり、毎朝グリーンステージのスタートを告げる‟田舎へ行こう!Going Up The Country”が流れ終わると、メンバーがステージに登場。エレキギター/ボイスの吉野寿は笑顔でステージ上に現れたが、ギターストラップを肩にかけた瞬間に表情が一変した。ピックを2度ほど振り下ろすと、絶叫するようにギターが鳴り響く。空間を直接引っ掻くような音は、大自然の中でも健在だ。
ギターの調子を確かめた吉野が、「やるか」とつぶやくと、先ほどとは打って変わって繊細な音が鳴る。嵐の前の静けさを思わせる穏やかな前奏。最新アルバムの1曲目として収録されている‟ソンゲントジユウ”によって、結成30周年を迎えたeastern youthのライブが幕を開けた。
冷静にレポートを書こうと思っていた筆者は、ステージから少し離れた位置をキープしていたが、心も体も全開にしてフジロッカーたちと対峙するバンドを見ていると、もっと近くでライブを体感したいという衝動に駆られた。しばらくは、冷静さを保ってメモなどをとっていたが、「どう転んだって 俺は俺 生まれ持った生存の実感は 誰かの手に委ねちゃいけねえんだ」という歌詞が耳から飛び込んできた瞬間、足が1歩前へ踏み出た。YouTubeで配信されているライブのレポートを書く意味は、自分がライブの中で見て感じたことを書くこと以外にはないと思ったのだ。自分は今、音楽に突き動かされていると強く感じた。
タイムテーブルを見ながら次の予定を相談している人たちをかき分けて、ステージの前方に進む。eastern youthが定期的に開催している『極東最前線』のフロアに比べたら、前方に進むのは朝飯前だった。
ステージ上では、吉野が頭に血管を浮かび上がらせながら絶叫し、ドラムの田森が重厚なリズムを刻み、ベースの村岡が寡黙に弦を弾いている。3人の顔に流れる汗を肉眼で確認できる距離まで来て初めて気がついたが、全員が驚くほどに〝いつも通り〟だった。eastern youthのいつも通りが、いかにかっこいいか、筆者はそれをグリーンステージでのライブを見たことで改めて実感した。これが30年の積み重ねというものなのだろうか。ベースの村岡が加入してからは初めてのフジロックだが、今のeastern youthは「昔の方がよかった」とは言わせないほどの強度を誇っている。
“街の底”、“夜明けの歌”、“荒野に針路を取れ”、“男子畢生危機一髪”とライブではお馴染みの曲が次々と演奏され、ステージ前方の熱がグングンと上がっていくのを全身で感じる。続く、“青すぎる空”のイントロで観客のボルテージは一気に沸点へと達した。
吉野の声は、〝澄んでいる〟と思う。一般的にいえば〝澄んでいる〟と形容される声でないことは重々承知しているが、声が澄んでいるかどうかは、これまでに吐き出してきた言葉に嘘がないかどうかにも左右されるのではないだろうか。20年以上歌い続けられてきた“青すぎる空”の最後を締めくくる「いずれ暮らしの果てに散る」という歌詞には、今なお澄んだままの真実味があった。
「雨止んでよかったよー。でもまぁ、ちょっとの雨なら我慢だぜ。そんでよ、雨がザーッと降ってきたら濡れるしかねぇんだよ」というMCに続いて演奏されたのは、“雨曝しなら濡れるがいいさ”。観客がググッと前方に押し寄せて、人の密度が一気に上がった。四方八方から押し寄せる人の熱と圧を感じながら、まるでライブハウスにいるような気持ちになる。
「こんな大きなステージに立てるような器じゃございません。本当は苗場食堂に出させてくれって言ったんだけど、ダメだって」とおどけた吉野は、最後に「前に、ここに1回出たことがあるんですけど、ステージからは山が見えるんですよ。これは贅沢だなって。いい冥土の土産になりました」と話し、“夏の日の午後”を演奏。それぞれが抱える満たされなさを力強く殴り飛ばすように、ステージ前方では無数の拳が空に突き上げられた。それは、本当に『極東最前線』の会場ではないかと錯覚するような光景だった。
ライブを終えた吉野は、いつも通り「ありがとう、また会う日まで!」という言葉だけを残してステージを去った。結局、彼の口からは最後まで30周年という言葉が語られることはなかった。人の圧から解放され、後ろを振り返ると、そこはまぎれもなくフジロックのグリーンステージだった。
場所や相手に合わせることなく、常に自分たちの音楽を鳴らす。そんなeastern youthの姿を見ていると、表現というのは共感を求める心からは生まれ得ないんだろうなと強く感じる。誰にも媚びず、ブレることもなく、ひたすら自分たちの道を突き進んできたeastern youthだからこそ鳴らせる音楽。彼らにとっては、今日のステージも、30周年の節目も、〝いつも通り〟の延長なのかもしれない。
自分にとっては世界一かっこいいバンドのライブを、筆者はこれからも見続けたいなと思う。
[写真:全10枚]
VOICES
【eastern youth / FUJI ROCK FESTIVAL'18】雨もやんだ、昼に近いアサー!にスタート。午前中から、本当に沢山の方が我々イースタンユースのライブに集まってくれて本当にありがとう!そして、YouTube越しで観てくれた人もサンキューちゃん!。#fujirock pic.twitter.com/5GzKFrTB3K
— eastern youth (@ey_chan) 2018年7月28日eastern youth 夏の日の午後 #fujirock pic.twitter.com/ErKWV9CZUO
— う™🚴🏾🚶🏿♂️🚶🚶🏼♀️🚶🕺 (@ekrjfijtg) 2018年7月28日eastern youth寝坊してもYouTube配信で観れる時代ありがとうございますありがとうございますありがとうございます…そしてやっぱり現地行きたいバカか自分
— 久保ミツロウ (@kubomitsurou) 2018年7月28日eastern youth、朝のグリーンステージ。頭髪の自虐ギャグを放りつつ、フェス向きなセトリで突っ走る。吉野氏の変わらない絶叫にも、アンプの上の中指立てた模型に「SHOW RACISM THE RED CARD」のプラカにも泣かせられる。#fujirockfestival2018 #greenstage #easternyouth #racism
— いのうえしんぢ (@inoueshindi) 2018年7月28日eastern youth。
— 英理佳 (@erika_es335) 2018年7月28日
私、一曲目から泣きながら観てたら、だんな様も気付けば一曲目から号泣してて、2人で最初から最後までタオルで目を拭いながら泣きながら観た。
そんな土曜日のはじまり。
何ヶ月もライブハウスに行けてないけれど、久々に音楽で心が満たされた。
最高過ぎた…。 pic.twitter.com/wJluGh7AaY