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FUJIROCK EXPRESS 2018

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LIVE REPORTGREEN STAGE7/29 SUN

ANDERSON .PAAK & THE FREE NATIONALS

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© Photo by Yumiya Saiki© Text by 石角友香

Posted on 2018.7.29 17:11

ケンドリック、N.E.R.Dと並ぶ2018年フジロックの象徴

ケンドリック・ラマーとN.E.R.Dが3日のうち2日のヘッドライナーであることは今年のフジロックを象徴する出来事だが、彼、アンダーソン・パークがグリーンステージに登場したことも並列して語るべき今年らしいイシューだろう。前述の2組に比肩する今年のアメリカ音楽シーンにおける最重要アーティストであり、もちろんその核はヒップホップである。実際、ケンドリックに請われて映画『ブラックパンサー』のサントラにも参加している。
定刻にフリーナショナルズのメンバーが登場し、キーボーディストのロンがショーのスタートを告げると、ラスタカラーのセットアップに赤いビーニー、ミラーのサングラスのアンダーソンがお立ち台に登り、とびきりの笑顔を見せる。ものこの時点で最高にチャーミングな彼のキャラクターにグリーンステージのオーディエンスはKO。人気、実力を確実なものにしたアルバム『マリブ』から“Come Down”を投下し、圧倒的な身体能力でステージ狭しと踊りながらラップし、煽る。ヒップホップを軸にしながらラガ風のテイストも加えた曲を生バンドで表現するダイナミズム。続いて彼をフックアップしてくれたDr.ドレーにちなんだ“Dr. Dre break”で、さらにブチ上がる。
最近ようやく音源が配信された“Bubblin”では、曲の途中で前方のドラムセットに飛び乗り、待ってました!のラップしながらの超絶ドラミングで、思わず絶叫してしまった。歌いながらドラムを叩くのは別に珍しいことじゃないが、なんだろう?この全身ビートの塊のような表現を生で見る感動は。生バンドでもあり、もはやジャンルはどうでもよくなって来た。
シンセリフとピアノが印象的な“Season / Carry Me”はブレイクの多い曲だが、それがバンドで表現されるスリル。この曲では後半、ドラムを叩きながら、一瞬椅子から立ち上がり一回転してまたドラムを叩くという「え?」と目が点になる場面もあった。彼が敬愛するプリンスが歌いながらギターでそんなことできるの?的な神業に似ているかもしれない。『マリブ』からの曲が続き、ファンキーなギターとベースラインが冴え、ピアノリフが親しみやすい“Put Me Thru”では、ソウルフルなボーカルが堪能できた。ヒップホップ・マナーやリリックの世界観を知らなくても楽しめる、それがアンダーソン・パークの強みだと感じる。
キーボードのロンのソロを挟んで、後半はムーディでダウンテンポな“Room in here”、インディーR&B以降のエレクトロニックな要素とピアノが生きるソウルが融合した“Til It’s Over”と、一つのステージで様々な音楽性を楽しめて、飽きさせることが全くない。
終盤はシュアな4分キックとクセになるコーラスのメロディラインをもつ“Am I Wrong”がスムーズにオーディエンスを踊らせる。ラストはシンセポップ的なニュアンスにタフなビートと重低音が融合した“Lite Weight”。この曲を聴きながら、アンダーソン・パークという人はケンドリック・ラマー、プリンス、ロバート・グラスパーからちょっとダフト・パンク的なところまで、異なる音楽性の接合面なんじゃないかと感じた。もちろん、彼は彼でオリジナルなのは当然なのだが、今やこの複雑で多岐にわたるビートやアンサンブルも、アンダーソンというアーティストのセンスとスキルとキャラクターにかかれば、何も難しいことはない。最高に楽しめるエンタテイメント・ショーだった。ああ、単独公演も観たくなって来た!

[写真:全9枚]

#TAGS : 7/29 SUNGREEN STAGE