LIVE REPORTWHITE STAGE7/27 FRI
POST MALONE
© Photo by MASAHIRO SAITO© Text by 若林修平
Posted on 2018.7.28 08:45
既成概念をぶち破った新世代ロック・スター
そこにあったのはマイク・スタンド一本のみ。他には照明以外、何もないホワイト・ステージ。
ポスト・マローンことオースティン・リチャード・ポストは、つい3年半前までDTMソフトを使ってトラック作りをするイチ青年だった。そんな青年が、2015年にsoundcloudにアップした”White Iverson”が瞬く間に100万回以上の再生回数を叩き出した。そしてリリースされたデビュー・アルバム『Stoney』は2016年ビルボードの音楽チャートでヒップホップ・アルバム・トップ3で3位を獲得(1位はケンドリック・ラマーの『DAMN.』)。さらに今年リリースされたセカンド・アルバム『Beerbongs & Bentleys』も、配信開始からわずか1週間で4億3130万ストリーミング再生を稼ぎ出し、一躍時の人となった。そんな彼が、初来日ライブをフジロックのホワイト・ステージで飾る。しかも、ステージ・ヘッドラインでだ。
ホワイト・ステージには、彼のステージを見るために多くの人が集まっていた。ステージの作業用ライトが落ちると、白いストロボライトが炊かれ、イントロ・トラックが重低音で鳴り響く。そんな中、黒のシャツと黒のパンツを着たポスト・マローンがステージに登場。シャツの背中には夜叉と「JAPAN」の文字が刺繍されていて、膝には日の丸のパッチワークがなされている。初めて生で彼を見るが、いでたちだけに収まらない存在感が既にあった。
「オープニングはどの曲をやるんだ?」そんなドキドキ感の中で鳴り響いたのは、デビュー・アルバムに収録されている”Too Young”。イントロのワンフレーズが入った瞬間、期待感は弾け、ホワイト・ステージに叫び声にも似た大歓声が上がった。ポスト・マローンは右手にVサイン(Two)を掲げ、オーディエンスにジャンプを促し、それに応えるオーディエンス。最高にアッパーなイントロダクションだ。続いて、不穏なイントロから始まるモダンR&Bライクな”Takin’ Shots”、彼の過去のガール・フレンドとの苦い経験がベースになっている切なげなメロディラインのポップ・ソング”Better Now”と新作からの曲が続き、今現在も大ヒット中の”Psycho feat. Ty Dolla $ign”ではシンガロングも巻き起こった。
これら大ヒットソングは、いずれも流行りのR&Bとヒップホップなサウンドになっているが、彼には「モダンR&Bもヒップホップもやる今風なラッパー」とは言い切れないものがある。その部分が分かりやすい形で表現されたのが、中盤のアコースティック・セクションだ。前の曲を歌い終え、ポスト・マローンがアコースティック・ギターを持ち、椅子に座る。この時点で「ヒップホップ・アーティストなのに、アコギ!?しかも生で弾き語るの!?」とビックリして当然な話だが、彼にしてみたら普通なことなのだ。それはおそらく、彼が少年時代から触れてきた多岐にわたる音楽ジャンル、メタルやヒップホップ、さらには90年代のオルタナティヴ・ロックやパンク・ロックまで、それらを並列に愛してきたからこそ、このことが「普通」と思えるのではないだろうか。このセクションでプレイされた”Feeling Whitney”も”Stay”も、最高にいい曲だ。ロックリスナーもヒップホップリスナーも、R&Bリスナーも皆揃えて「いい曲」と思える普遍的な名曲たちだ。故に、彼の曲にはジャンルの壁を超えた”説得力”がある。
そんな説得力を問答無用に感じさせるラストへの流れは圧巻の一言だった。流行りのトラップ・ビートをベースにした、セレブリティなパーティ・ライフを謳歌する歌”rockstar(ft. 21 Savage)”では、これまでで一番大きなシンガロングが巻き起こり、彼が表舞台に上がるキッカケとなった”White Iverson”では、歌とライムの間の微妙なラインを行き来する”メロディライン”にそこにいた多くの人たちが気持ち良さそうに体を揺らしていた。そして、最後のMCからの”Congratulations feat.Quavo”には誰もがシビれずにはいられなかったんじゃないだろうか。
「怖がらないで。自分にも、昔は誰にも信じてもらえない時代があった。でも、今は日本に来て数万人の前でパフォーマンスしてる。自分でいることを恐れなかったから。ストリートで、今でも人々が俺のところにやって来てこう言うんだ、”congratulations”ってね。」
正味1時間の短いステージだったが、”凄いものを観た”感は半端なく大きかった。
<セットリスト>
Intro
Too Young
Talking Shot
Better Now
Suger Wraith
Psycho ft. Ty Dolla $ign
Candy Paint
Paranoid
I Fall Apart
Feeling Whitney
Stay
Go Flex
rockstar ft. 21 Savages
White Iverson
Congratulations ft. Quavo
[写真:全10枚]
VOICES
ラッパーのPost Maloneさんと乾杯しました!😎🥂 pic.twitter.com/kDgvb2CqFL
— HIKAKIN😎ヒカキン (@hikakin) 2018年7月26日ポストマローン、観客のスニーカーに酒入れて飲むのクレイジーが過ぎる😅#フジロック #PostMalone pic.twitter.com/0q4SMaMUbm
— Shi (@3467Laplace) 2018年7月27日N.E.R.DにしてもPOST MALONEにしても、この2アクトを観るだけでいかに日本でHip-HopやDance&VocalとかR&Bがまだちゃんとマスに拡まりきっていないのかが可視化されちゃったな。アクト自体は最高だけどお客さんの全体的ノリと配信のコメント欄に見られるジャンルへの理解がまだまだかと。#FujiRock
— レディオ体操 (@TaisohRadio) 2018年7月27日POST MALONE、今日のラインナップでいちばん"今"だった。1時間バンドやDJも従えず一人で、トラップ8割アコギ弾き語り2割。そのアコギは叩き壊し、靴からお酒を飲む…
— 三原勇希 (@yuki_mihara) 2018年7月27日
クレイジーなようで、深いお辞儀やソウルフルなパフォーマンス、服には上下に🇯🇵モチーフと愛すべきrockstar⚡️psycho聴けた😭Post Maloneは当たり前だけどヒット曲満載で凄かったな😆
— Mizuho (@Mizuho0605330) 2018年7月27日
完全なヒップホップでもなくポップでもないこの感じが何だか心地良い😊 pic.twitter.com/CWItaGmXO7Post Malone見れて感動したー、新しい音楽の現場に立ち会えた感。暴力的なまでの低音の出も幸せだった!最後◯uck'in racismの言葉きた。やっぱりさ、そういうの外せないんだよ。リアルを音にすれば。
— RuikoKozuka/DJ更年期 (@ruikozuka) 2018年7月27日