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FUJIROCK EXPRESS 2018

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LIVE REPORTWHITE STAGE7/27 FRI

エレファントカシマシ

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© Photo by 平川啓子© Text by 石角友香

Posted on 2018.7.28 09:17

渾身という言葉を簡単に使えなくなるライブ

「緊張しています」——いつも以上に鋭い形相で登場した宮本浩次(Vo/Gt)が最初に発した言葉に嘘はなかったのではないか。デビュー30周年を迎えて、過去最大にライブの動員は増え、通算23作目となる新作『Wake Up』は多彩だが、頭の2曲を聴いて、その生身の人間の感覚をモダンなエンジニアリングで仕上げた音像にも、今でもまだ更新されているグルーヴに度肝を抜かれ、その本気度に笑いながら涙が出たほどなのだ。エレカシというか宮本という人はコアで内面に向かうソリッドな作風と、プロデューサーの意見も取り入れ、ポップシーンでの評価にチャレンジするような作品も作ってきたアーティストだ。時々、地上波でも見られるようなピュアすぎて何かのバランスがちょっと変な面白い人なだけではない。

国民的とまでは言わないけれど、紅白に出演できるようなヒット曲もあり、しかしシンプルなロックをやっているというのがポピュラーなイメージだろう。そのエレファントカシマシがフジロックにこれまで出演していないというのは、少々不思議ではあったが、50を過ぎたバンドがキャリア史上さらにアグレッシヴな作品を世に送り出している今のタイミングで正解だったんじゃないだろうか。

緊張しているといいつつ、新作の中からファンクネスも感じられるメロディにも新しさを感じる“Easy Go”をイヤモニの調子が納得いかないのかイライラした調子で、指示を出しながら鬼の形相で歌う宮本。目をひん剥いて「この勝負には負けられねえ」といった熱量で、今度はハンドマイクで“奴隷天国”をステージの左右ギリギリまで歩いていき、なんだかんだ言って何かお前は自分の怒りに対して行動したのか?と問う歌詞は、歌ではあるけれど、今の日本を鑑みるに刺さらない人の方が少ないんじゃないかと思えた。以前ならそれは宮本節であり、笑って見ていられた。でもまだ傍観者なのか?そんな自分の内なる声も重なって感情が揺り動かされる。さらに疾走するビートが瑞々しい“RAINBOW”までの3曲は、どこか宮本の顔つきが恐ろしく若返っていたように思う。絶対勝たなければいけない。そんな表情だ。

突然孤独に落っこちる、それが俺、嘘じゃないという意味の歌詞を受けて、両手を広げ空を仰ぐ宮本は力を集めているようだった。それぐらい切実に見えた。

「憧れのフジロックのステージに立ててありがとう。みんないい顔してるぜ。本当に憧れてたフジロック」と、何度も憧れや光栄という言葉を発していた宮本。しかし最初の3曲の形相は和らぎ、「聴いてください“悲しみの果て”」と歌い出したこの曲では、この場にいる全員がこの曲を深呼吸するように堪能している空気になり、“旅立ちの朝”は初めて聴く人もいるかもしれないが、「知っているいい曲が増えていく」ように、皆いい表情をしている。

再び“ガストロンジャー”で、世の中も自分もどうなんだ?という戦後日本を2018年の夏に再度俯瞰し、自他共に嘘を糾弾していくうちに、それでも大事なのは自分自身なんだとばかりにシャツの胸をはだけ「胸を張れ!」と心臓を叩きながら歌う。激烈だが自然な表現に見える。宮本は「エブリバディ!」と呼びかけるが、それは歌の間のありがちな表現ではない。本心からEverybodyへ歌っているのだ。その流れでの“so many people”、デビュー曲の“ファイティングマン”が持つ、お前のその力が必要なんだというメッセージは、今、この全身全霊、タガが外れたように見える男の本気だ。戦うことの理由は人ぞれぞれだろう。エレファントカシマシというバンドは、そこを限定しない。でも人として当然の本能に燃料をくべるのだ。周囲のファンやオーディエンス以外、スタッフの男性の顔を見ても皆、清々しい表情を浮かべている。栄養というか力がみなぎってきている。

さらに渾身の力を込めて“おはよう こんにちは”を絞り出すように歌い、ラストは夕焼けが西の空を真っ赤に染める中、まっすぐにニュートラルな調子で“今宵の月のように”で、そこここで歌声が上がるなか、今、見せ得るフジロックでの50分をやり遂げて見せた。フジロック仕様だという石森敏行(Gt)はランニングに革の短パンにビーチサンダルというある種、宮本以上の存在感を衣装で表していたが、ランニングを宮本にズダズタにされたりして、相変わらずこの相棒は最高に愛されている。

積年の思いを果たした宮本。光栄だというフジロックに対してじゃないと思うのだが、観客に向かって最後「お尻出してプッ!」と言い放って去って行った。楽しかったということなのか、やっぱり彼の真意はわからない。でも最高に愛すべきバンドだ。こういう言い方は他のバンドにはしたくないし、好きでもないが「日本にエレファントカシマシあり」、そこは他国の音楽好きにもアピールしたい。エレファントカシマシというバンドはとてもオリジナルだから。確実に苗場20回目のフジロックに深い痕跡を残したことは間違いないだろう。

[写真:全7枚]

#TAGS : 7/27 FRIWHITE STAGE

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