LIVE REPORTRED MARQUEE7/27 FRI
TUNE-YARDS
容赦なく降りかかる摩訶不思議サウンドに、踊り尽くしたレッド・マーキー!
人で埋め尽くされたレッドマーキー。ステージ背後の液晶に映されたのは、2018年1月にリリースされた3年半ぶりの最新作、『I can feel you creep into my private life』のジャケット。白髪ショートヘアにワンピースを身にまとったメリル・ガーバスが登場した途端、フジロック初登場にも関わらず、観客からは大きな歓声が上がる。この大きな歓声を聞いた瞬間、「ああ。このライブは、きっと特別なものになるんだろうな」と確信に似た感覚を覚える。もちろん、その通りになるのだけれど。
TUNE-YARDSの実験的なサウンドに野性的なメリルの声から成り立つダンスミュージックに、すでにテンションの出来上がっている観客たち。それから、昼夜問わずに思いっきり照明を活かすことのできるレッド・マーキー。そんなパーフェクトな要素が揃った状態で、盛り上がらないはずがない。
最初に演奏されたのは、最新アルバムから“HANDS”。正確なリズムを鳴らし続ける生のドラムとベースにループしていく打ち込みのサウンド。メリルの乾いたようなしゃがれ声。長年の制作パートナーであるネイト・ブレナーが加わり、デュオ編成になってからは初の来日になるのだが、音源で聞くよりもアッパーであり、迫力のありすぎるサウンドであることにド肝を抜かれた人も多いのではないだろうか。
すでに冒頭からフルスロットル。メリルが手を天に向かって目いっぱい上げ、“ABC 123”、“Water Fountain”と一秒たりとも休む暇なく曲が続けられる。忙しく働き続ける照明が、またこのステージにはよく似合い、華を添えるかのよう。
TUNE-YARDSといえば、ループマシーンを駆使し、繰り返されるサウンドとメリルの声。そのため、曲によってははじまる前に準備が必要になるのだけれど、その時間も鳴りやまないドラム。このわずかな時間ですらも、ステージを最大限に盛り上げるための要素だったように思う。
“COAST TO COAST”や“Es-So”などのスローテンポな曲でありながらの心地よく聴こえる不協和音の数々。ウクレレを持ちながら自らの声をループさせていて、TUNE-YARDSからすれば、メリルの声も楽器のひとつととらえているようだった。そのまま続けられた“GANGSTA”では、ステージからも観客からもサイレンのような大合唱が巻き起こる。ほとんど休まずに駆け抜けるような演奏に、踊らずにはいられないし、声もあがるあがる。しかし、まだ不満があるのか、客をあおるメリルはクラップ&ヘンズを要求する。こんなことされちゃ、応えないわけにはいかない。観客たちは更にハイテンション。飛んだり跳ねたり、身体を揺らしながら各々が楽しんでるよう。
キーボードからスタートした“HEART ATTACK”でもうこれ以上ないんじゃない?というくらいの盛り上がりを見せ、そしてジャムセッションから最後の曲である“FREE”と続いていく。曲の途中ではレッド・マーキーの観客サイドが眩しいくらいに明るく照らされ田メリルは、「I’m Free」と歌っている。そうだ、ここはフジロック。こんな大自然の中で、TUNE-YARDSのようなローファイでありつつオーガニックな音楽を奏で、大胆なパフォーマンスを見せつけられたステージ。まだ1日目の中盤で、始まったばかりではあるけれど、ステージ上で気ままに振舞うメリルのように「もっと自由に楽しむしかないじゃないか!」なんて、思わされる。
MCはほとんどなし。攻めの姿勢を一切崩すことなく、容赦なく降りかかる摩訶不思議すぎるサウンドの数々に、惚れ惚れと聴き入ってしまった。ステージを去る3人には、これ以上にないほどの歓声と大きな拍手が送られていたのだった。
[写真:全10枚]