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FUJIROCK EXPRESS 2018

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LIVE REPORTRED MARQUEE7/28 SAT

小袋 成彬

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© Photo by MASAHIRO SAITO© Text by あたそ

Posted on 2018.7.28 17:45

儚く終わりに向かっていく、苗場の夏の夢

2016年に発売された、宇多田ヒカルの『Fantôme』に無名のままゲストボーカルとして参加し、駆け上がるように世に名前を知らしめた小袋成彬。今年の4月に満を持してリリースしたデビューアルバム『分離派の夏』での歌唱力や才能に慄いた方も多いだろう。

今年のフジロックは、少し毛色が異なっている。ヘッドライナーにバンドスタイルで演奏するアーティストが一組もいないし、世界で注目を浴びているHIPHOPやR&B、ブラックミュージックなどのアーティストが例年よりも多く集められている。
日本の音楽シーンも黙ってるはずもなく、そんな中で発表された小袋成彬の出演。一目見ようと、レッド・マーキーには人が押し寄せるように集まってくる。苗場の天気は心変わりが激しい。先ほどまで雨が降り、湿度の高くなった屋内のステージは、背中に汗が伝うほどの暑さだった。

時刻ちょうどの午後2時。近所のコンビニに向かうかの如く、小袋成彬がふらっとひとりでステージ上に現れる。「恋に落ちれば負けちゃうゲーム」と、片手をポケットに突っ込みながら、力強く歌う小袋。“Game”だ。美しいファルセットに、どこか切なく悲しい声。恋ではないのは確かだけれど、落ちるように一瞬で心を掴まれてしまった。

”茗荷谷にて”から”Lonely One feat.宇多田ヒカル”のイントロが流れると、観客からは声があがった。低音が響き、宇多田ヒカルのパートすらも己の高い声で歌い上げ、その圧倒的すぎる歌唱力には、更なる観客からの声。場の空気がだんだんと温まっていくのがわかる。

“Summer Reminds Me”の後半部分でサポートメンバーの小島裕規と畠山健嗣が登場するまで、ひとりでステージに立っていた小袋。左右にゆっくりと動きながら、観客側を見ることがほとんどない。どこか、別のところを見つめているような気がした。彼にしてみたら、どれくらいステージが大きいのか、そしてどのくらいの人が自分の目の前に集まっているのかは、関係ないのかもしれない。

”夏の夢”が終わると、畠山のゆったりとしたギターが心地よく響く。次は、何の曲だろう。聴いたことがない。そんなことを考えていると、「真夏のピークが去った」という、聴き馴染みのあるフレーズを歌ってくれている。フジファブリックの『若者のすべて』をワンコーラス歌うという、素晴らしいサプライズプレゼントを用意してくれたのだった。そこからの”門出”の流れも素晴らしく、ステージで淡々と歌う小袋を目で追いながら聴き入ってしまう。

本編も終盤に差し掛かり、”Selfish”では、音源とは異なるアレンジ。シンプルな曲に、芯を持ちつつもどこまでも伸びるような繊細な声は、まるで青春映画のワンシーンを見ているかのようで、思わず鳥肌も立つ。最後の“愛の斬進”が終了したあと、颯爽とステージを去っていき、50分のステージが終了していった。

MCは一切なし。淡々と曲をこなしていくステージには、純粋に小袋成彬の音楽があった。音源も、もちろん素晴らしい。彼の生み出した芸術作品のひとつと言ってもいいだろう。しかし、ライブで、しかも場の空気を感じながら見る小袋成彬のステージは、歌い方やメロディーに少しずつアレンジを加えてくれ、また音源とは違った印象を持つことができた。恐らく、こんな風に儚く、一瞬で終わっていってしまうライブはもう2度と見ることができないのだろうと思う。

[写真:全6枚]

#TAGS : 7/28 SATRED MARQUEE

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