LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/27 FRI
THE TESKEY BROTHERS
豪州から放たれた黒いグルーヴの一矢
フジロック初日の夕方のフィールド・オブ・ヘブン。ピースフルで自由な空気が漂っていて、いつ来ても心地良い場所だ。
17時10分定刻に、嬉しそうに笑顔で総勢6名のバンドが登場した。昨年デビューしたオーストラリアはメルボルンからやって来たバンド、テスキー・ブラザーズ。「え、オーストラリア?」と聞き返してしまうほど、往年のスタックス・レコーズを感じさせるディープでオーセンティックなメンフィスサウンドで聴かせるバンドだ。音の名刺とも言えそうなヴィンテージで温かみのあるR&B、‟Man of the Universe”からスタート。バンドのフロントマンであるジョシュ・テスキーがオーティス・レディングファンをも唸らせるであろう圧倒的な歌声でソウルフルに歌い上げる。続く‟Crying Shame”でも惜しみなく披露される胸を打つジョシュの声。彼が歌い上げる度に毎回フロアから歓声が上がるのだ。オーディエンスが本当に気持ちよさそうに音に身を任せ、聴き入っている。弟のサム・テスキーがストラトキャスターで奏でるいなたいソロにも大歓声が送られる。これぞ粋な大人の音楽というやつだ。
お次は、ブルーズ天国へと我々を誘う3連打。まずは‟Shiney Moon”だ。それにしても、スライドギターの音って何でこんなにもセクシーでかっこいいんだろう?ブルーズやR&B、ブラックミュージックの旨味を抽出した質の高い音楽を聴けるのもフジロックの醍醐味のひとつだ。お次は更に物悲しく、ディープにブルーズを探求する‟Say You’ll Do”。サムのペンによるものだ。ここぞとばかりに、泣きまくりのフレーズで満ち満ちたギターソロをこれでもかと入れてくる。トランペットとトロンボーンのホーンセクションのブロウが軽快に絡み、渾然一体となった間奏部のグルーヴには、そこに居合わせた誰しもが圧倒さえたことだろう。ラストは、シカゴ・ブルーズのレジェンド、タンパ・レッドのカバー‟I Love A Women”。ただブルーズのマナー通りに歌えば、演奏すればブルーズってもんは表現出来ない。深い愛と苦悩、自分をさらけ出して生きてこそのサウンド。このブルーズ・ハープの鳴り、激しい高揚感とメロウさを伴って投げかけられるギターソロがカッコ良過ぎて悶絶してしまいそうだ。
‟I Get Up”という新曲を披露。ベーシストのブレンドン・ラヴの作曲だそうだ。少し長調を基調とした明るめのR&Bで、ミドルテンポで進行していく。ラストがこれまた最高だった!段々と音が小さくなっていくに従って、ジョシュの声量も下げつつ、後ろに下がってフェードアウトしていく。まるで極上のヴァイナルのエンディングを聴いているかのような唯一無二の体験だった。
‟Reason Why”でサムが弾き倒すギターと、ジョシュのハーモニカの激しい掛け合いにまたしてもブルーズ天国へと連れていかれ、‟Pain & Missery”では、傷ついた心を優しく包んでくれるようなメロディと歌声が控えめにそっと鳴り響く演奏に涙する。トランペットとトロンボーンの悲しげでか細いブロウからムーディーに出発した‟Honey Moon”という列車は、グルーヴィーなギター・ブルーズの駅を通り過ぎ、濃ゆーい怒涛のセッションに行きつき13分を超えるジャーニーに終止符を打った。
ジョシュがオーディエンスに要求した、ハンドクラップが鳴り渡る中、ジョシュのブルーズハープがいなたくも軽快に響き、ドラムが重たく刻まれると、ロックンロールチューン‟Luisa”に雪崩れ込んだ。中盤でドラマーのリアム・ゴウにスポットライトが当たり、ドラムソロをかまず。速さでも重たさでもない、ひたすらグルーヴのキープに注力する匠のビートだった。
日本での初ライヴのお礼を述べ、「またすぐに会いたい!」と熱くステージの幕引きを行った。まだデビューして間もなく、日本での初ライヴにしてこのクオリティである。今後どう化けていくことやら。また、ぜひ苗場の地にブルーズのいなたい雨を降らせに戻ってきてほしい。
[写真:全10枚]