LIVE REPORTFIELD OF HEAVEN7/27 FRI
GOMA & The Jungle Rhythm Section
復帰後2度目のヘヴン、今再びの「おかえりなさい!」
彼らの音楽が始まるとき、体の奥からワーッと何かがこみ上げてきて、涙がこぼれそうになる。それは、2009年にGOMAが事故で活動を休止してからの道のりを思ってなのか、それとも音楽が素晴らしくてなのか、それはきっと両方だと思う。もっと言うならば、彼らの音楽が体のなかに響いて共鳴して、涙を起こさせるくらいすごい力を持っているからなんだと思う。
2011年にフジロックでステージに復帰した彼は、2013年、復帰後2度目、レッドマーキーにも登場。「we are the future」という文字が投影されたスクリーンを見つめていたのも、つい最近のように思い出すことができる。それから5年。彼らが戻ってきた場所はなんと、2011年と同じフィールド・オブ・ヘブンであった。ステージに入場した椎野恭一(Dr)、田鹿健太(per)、辻コースケ(per)が前奏を始めると、赤いパーカーを着たGOMA (didgeridoo)が現れた。胸元に2つ、点描で描かれた円があしらわれたパーカー、それは彼が事故後に始めた画家としての活動を象徴するものでもある。空を仰ぎ、天に祈るようにしてからディジュリドゥに息を吹き込み、“OMOTINO”が鳴り始めたとき、会場は一気に盛り上がりを見せた。祭囃子で使う「かね」のような音と、独特のリズムが踊りを誘う“Awamori”、手持ちの黒いディジュリドゥに持ち変えての“Heian Magic“では、上下するようなディジュリドゥの音と頭の動きをシンクロさせる。深く鈍く、独特の低音を鳴るディジュリドゥと、そこに挟み込むGOMAの掛け声、動物のような叫び声。このバンドではその全てがリズムを作って、オーディエンスを踊らせまくるのだった。
MCでは「ただいまフジロック!」というGOMAの声に、多くのオーディエンスが「おかえりー!」と大声で答える。「このステージがあったから、またこうして活動ができています」と、感極まった様子で話していた。今年は約9年ぶりにアルバムが完成したこと、GOMAとしての活動が20周年であることなど、アニバーサリーイヤーであることも教えてくれた。事故による高次脳機能障害で、記憶することが難しいなか、約9年かけて曲をマスターしたのだから、とんでもない努力を重ねてきたに違いない。
後半は定番曲“ONE GROOVE”で、会場がハンドクラップで一体になる。ドラムソロが始まり、GOMAは両手を横に広げ、次第に空へ空へと伸ばしカウントダウンしていく。手の位置が真っ直ぐ上になったとき、会場はリミッターが外れたかのような盛り上がりを見せる。GOMAのマネをして手をひらつかせる人もいれば、沖縄のカチャーシーのように踊ったり、ステップを踏んでみたりと皆思い思いのダンスを繰り広げる。ここは、踊れや騒げやのお祭り騒ぎ。笑顔と幸せ、そしてちょっと泣きそうになるレイヴステージがここにあった。
2011年の「おかえり」が、復帰のことだとしたら、2018年の「おかえり!」は、再びの音楽キャリアとして帰る場所に戻ってきたというか、凱旋公演のような気持ちの「おかえり」なんだと思う。これから彼らは、自身の歴史を乗り越えてさらに新しいものを作っていくのだろう。次の「おかえり」は、どんな時だろうか。
[写真:全10枚]